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【クロマトQ&A】HPLCに用いる有機溶媒の危険性、有害性等や取り扱い法を教えて下さい

本記事は、Analytical Circle No.21(2001年6月号)に掲載されたものです。

HPLCで分析を行っており有機溶媒を取扱うことが多いのですが、取扱い始めて日が浅く、危険性や有害性などについて詳しく理解できていません。有機溶媒の取扱い法について教えて下さい。

HPLCで使用される有機溶媒には、引火性や毒性のあるものが少なくありません。試験研究用として使用される有機溶媒は、工業スケールに比べ使用量も少なく危険有害性についても小さいと思われがちですが、意外に実験中にも事故は発生しています。その中には事前に有機溶媒の性質を知っていたなら防げたと思われるものもあります。有機溶媒を取扱う上で問題となるのはその引火性及び毒性ですが、今回は引火性について具体例を挙げながら取扱い法について紹介したいと思います。

消防法

引火性物質は消防法によりその取り扱いが規制されています。これらは危険物第4類に属し、さらに特殊引火物、アルコール類、第一~第四石油類、動植物油類の7種類に分類されます。HPLCで使用される有機溶媒も多くがこのいずれかに属しています。おのおの指定数量が定められており、指定数量以上使用、在庫する場合は消防長への届け出が必要です。これらの分類の内、特に注意をしなければいけないのは、特殊引火物、アルコール類、第一石油類、第二石油類の4種です。表1にこれら4種に属するHPLCで使用される主な有機溶媒を示します。

表1.HPLCで使用される主な有機溶媒の分類
類別 性質 品名 性質 指定数量 主な溶媒
第4類 引火性液体 特殊引火物 50 L
第一石油類 非水溶性液体 200 L n-ヘプタン, 酢酸エチル, n-ヘキサン, ベンゼン, シクロヘキサン, トルエン, t-ブチルメチルエーテル
水溶性液体 400 L アセトニトリル, 1,4-ジオキサン, アセトン, テトラヒドロフラン
アルコール類 400 L メタノール, 1-プロパノール, エタノール, 2-プロパノール
第二石油類 非水溶性液体 1,000 L 1-ブタノール
水溶性液体 2,000 L N,N-ジメチルホルムアミド

取扱い方法

取扱い時火気は厳禁です。表2に取扱い上の注意事項をまとめました。この内、溶接機、グラインダー、ハンマーの使用など論外ですが、特にHPLC使用時に注意していただきたいのが、静電気による火花の防止です。HPLCでは配管の中を有機溶媒を含む液体が高速で通ることにより、液体と配管内壁がこすれ静電気が生じます。これを防ぐには廃液容器に金属などの導電性のあるものを使用しアースを接続します。冬は空気が乾燥しますので一層の注意が必要です。

表2.引火性溶媒取扱い時の注意事項
火の元に注意
  • 作業場所での禁煙・ライターの持ち込み禁止
  • 湯沸かし器の種火に注意
静電気による火花を防止
  • 機器へのアース接地
  • 作業衣の帯電防止
  • 薬品自体の帯電防止(非帯電性溶媒の選択、激しく振動させない)
電気火花の発生防止
  • 機器へのアース接地
  • 防爆型機器の設置
  • 作業場所でのドライヤー、溶接機、グラインダー、ハンマーなどの使用禁止
引火性蒸気の発散防止
  • 局所排気装置の設置
  • 容器の密栓

保管方法

通風の良い、温度の一定した(冷暗所が良い)、火気(スイッチ、灼熱体、種火)から離れたところに保管します。容器は密栓して蒸気が漏れないようにします。また瓶が転倒落下しないよう保護柵を設置します。消火器、空容器、ウエス、中和剤、保護具などを常備しておきます。

次回は毒性を中心に、有機溶媒の取扱い法について紹介したいと思います。

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