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【テクニカルレポート】 液体クロマトグラフを用いた茶葉に含まれるカテキン類の分析

本記事は、和光純薬時報 Vol.94 No.3(2026年7月号)において、株式会社島津製作所 池田 涼音 様に執筆いただいたものです。

1 はじめに

お茶の主要成分であるカテキン類は、肥満防止や認知機能の改善など、様々な生理作用と関わりがあることが知られている。その機能は多岐にわたり、お茶は最も身近な機能性食品としても注目を集めている。一般的な茶葉や緑茶飲料に加えて、特定保健用食品や機能性表示食品としてカテキン類を添加した商品なども数多く市場に流通している。

カテキン類はポリフェノールの一種であり、フラボノイド系化合物のフラバノール類に分類される。一般的に、茶葉にはエピガロカテキンガレート(EGCG),エピガロカテキン(EGC),エピカテキンガレート(ECG),エピカテキン(EC)の4種のカテキン類が多く含まれている。また、これらカテキン類に加えて、エピガロカテキンガレートやエピカテキンガレートのメチル化体を多く含む茶葉も流通している。このようなカテキン類を分析することは、食品の品質管理や機能性食品の開発において不可欠であり、健康志向が高まる近年の市場動向を踏まえても重要な役割を果たす。一方、これらカテキン類の一斉分析が可能な分析方法は標準化されておらず、各メーカー/機関独自の分析方法が用いられている。

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構と株式会社島津製作所は、食品中機能性成分の解析や社会実装を目的とし、農産物および食品中の機能性成分を簡便、迅速、かつ高精度に分析する方法の開発に取り組んでいる。そのような取り組みの中で液体クロマトグラフを用いたカフェインを含む複数のカテキン類の分析方法を開発し、「カテキン分析キット」として分析のメソッドやノウハウを提供し、さらに、分析方法の標準化を試みている。令和6年度には、JAS等の国際標準化による輸出力強化委託事業の再委託先に採択され、日本農林規格(Japanese Agricultural Standards;JAS)制定を目指した取り組みを行っている。本稿では、その分析方法ならびに分析事例を紹介する。

対象成分と分析方法

「カテキン分析キット」では、カテキン類11種およびカフェインの合計12種の化合物を分析対象としている(Table 1)。

標準溶液には、酸化防止を目的としてアスコルビン酸(1.76 g/L)とEDTA-2Na(1.00 g/L)を添加した。サンプルとして、粉砕した茶葉サンプル250 mgを秤量し、2%りん酸水溶液とエタノールを体積比1:1で混合した抽出溶媒20 mLを用いて抽出した(30℃、60分)。抽出後、抽出液を25 mLに定容し、遠心分離(2,000×g、5分)を行った。得られた上清をフィルトレーション後、超純水で10倍希釈し、分析サンプルとした(Fig. 1)。移動相には0.2%りん酸水溶液および100%メタノールを用い、Shim-packTM GISS C18カラム(150 mm×4.6 mm I.D.,3 μm,P/N:227-30055-06)を装着した高速液体クロマトグラフによりグラジエント分析を行った(Table 2)。

カテキン類およびカフェインの混合標準液のクロマトグラムをFig. 2に示す。溶出の早いガロカテキン(GC)およびエピガロカテキン(EGC)の2成分については、ピーク強度が高い波長242 nmで検出し、それ以外の9成分については波長272 nmで検出した。

Table 1. 対象化合物の一覧
Table 1. 対象化合物の一覧
Table 2. 分析条件
Table 2. 分析条件
Fig. 1. 前処理のフローチャート
Fig. 1. 前処理のフローチャート
Fig. 2. カテキン類11種およびカフェインの混合標準液のクロマトグラム
Fig. 2. カテキン類11種およびカフェインの混合標準液のクロマトグラム

分析事例

本稿では、品種および産地の異なる複数の茶葉をサンプルとし、それぞれの茶葉に含まれるカテキン類11成分とカフェインを定量し、サンプル間で見られたプロファイルの差異について報告する。茶葉サンプルとして、国内で最も生産量が多い"やぶきた"という品種を採用し、京都府産、静岡県産、鹿児島県産の3種を入手した。また、エピガロカテキンガレートのメチル化体を多く含む"べにふうき"を採用し、静岡県産、鹿児島県産の2種を入手した(Table 3)。

産地の異なるやぶきた3種は、いずれの茶葉サンプルでもガロカテキン(GC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキン(C)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECG)の6種のカテキン類が検出された。これらに加え、静岡県産のやぶきたではガロカテキンガレート(GCG)、鹿児島県産のやぶきたではガロカテキンガレート(GCG)およびカテキンガレート(CG)、エピカテキン3-O-(3"-O-メチル)ガレート(ECG3"Me)が検出された。同じ品種の茶葉サンプルであっても、茶葉のカテキン類のプロファイルは異なることがわかった(Fig. 3)。

産地の異なるべにふうき2種は、いずれの茶葉サンプルでもメチル化カテキンを含む多くのカテキン類が検出された。鹿児島県産のべにふうきでは、ガロカテキンガレート(GCG)を除く10種、静岡県産のべにふうきでは分析対象とした全11種のカテキン類が検出された。べにふうきは、他品種に比べてメチル化カテキンを多く含有する品種として知られており、これを裏付ける結果であった(Fig. 4)。

Table 3. 茶葉サンプルの一覧
Table 3. 茶葉サンプルの一覧
Fig. 3. やぶきた(京都府産)の茶葉抽出液のクロマトグラム Fig. 3. やぶきた(静岡県産)の茶葉抽出液のクロマトグラム Fig. 3. やぶきた(鹿児島県産)の茶葉抽出液のクロマトグラム
Fig. 3. やぶきたの茶葉抽出液のクロマトグラム
Fig. 4. べにふうき(静岡県産)の茶葉抽出液のクロマトグラム Fig. 4. べにふうき(鹿児島県産)の茶葉抽出液のクロマトグラム
Fig. 4. べにふうきの茶葉抽出液のクロマトグラム

まとめ

「カテキン分析キット」を用いて、茶葉に含まれるカテキン類11種とカフェインの定量を行った。国内で最も生産量が多いやぶきたは、京都府、静岡県、鹿児島県のいずれの産地でも6種以上のカテキン類が検出された。一方、べにふうきは、静岡県、鹿児島県のいずれの産地でもメチル化カテキンを含む10種以上のカテキン類が検出された。「カテキン分析キット」を用いて、品種や産地間でカテキン類の含有量を比較し、それぞれの茶葉の特長や特性を科学的に明らかにすることができた。

富士フイルム和光純薬株式会社より開発された11種カテキン類混合標準液 (カテキン10種+カフェイン各100μg/mL溶液) は、本稿で紹介した「カテキン分析キット」において分析対象としている10種のカテキン類とカフェインを混合成分している。「カテキン分析キット」と「カテキン類混合標準液」を組み合わせることにより、スムーズなカテキン類の定量が可能になる。
※ 当社製品には、ガロカテキン3-O- (3"-O-メチル) ガレート (GCG3"Me) は含まれておりません。

謝辞

本稿で報告した茶葉サンプルは、共栄製茶株式会社および鹿児島県農業開発総合センターより提供していただきました。厚く感謝を申し上げます。

〔参考文献〕

  1. 日本農林規格べにふうき緑茶中のメチル化カテキンの定量―高速液体クロマトグラフ法(JAS0002)
  2. 山本(前田)万里:「緑茶のカテキン類分析法(異性体カテキン類も含む)」、食品機能性評価マニュアル(Ⅳ)(http://fmric.or.jp/ffd/kinousei-hyoka4.html
  3. 堀江秀樹 他:「茶葉中カテキン類分析のための抽出方法の検討」、茶業研究報告、94、60(2002).

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