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【テクニカルレポート】 RiboNAT™ 迅速無菌試験について

本記事は、和光純薬時報 Vol.94 No.3(2026年7月号)において、富士フイルム和光純薬株式会社 バイオ技術センター 山本 陽太郎 が執筆したものです。

1 はじめに

近年、再生医療等製品やバイオ医薬品の発展に伴い、無菌試験の迅速化と信頼性向上への要求が高まっている。従来の培養法に基づく無菌試験は、結果判定までに14日間を要し、製品供給の遅延や品質管理上の制約となる。一方で、医薬品の無菌性は最終試験の結果のみに依存するものではなく、製造工程全体で構築された無菌保証システムにより担保されるべきものである1GMPPIC/Sにおいても、無菌試験は無菌性を直接証明するものではなく、無菌保証システムの有効性を確認する補完的手段と位置付けられている1。したがって、環境管理、設備適格性評価、工程バリデーションに加え、工程中のモニタリング、すなわちインプロセス試験の重要性が高まっている。特に迅速な微生物検出技術は、工程異常の早期検知および品質リスク低減に寄与する2。さらに近年では、Quality by DesignQbD)の考え方に基づき、工程設計段階から品質を作り込むアプローチが推奨されており3、その延長として工程データに基づき製品品質を保証するReal-Time Release TestingRTRT)の概念を取り入れるように求められている4。これらを実現するためには、工程中における迅速かつ信頼性の高い微生物検出技術が不可欠である。

RiboNAT™ 迅速無菌試験の特徴

核酸増幅法(NAT法)による迅速無菌試験法において、Genome DNA(gDNA)を検出対象としていた従来の取り組みに対してRiboNAT™迅速無菌試験(RiboNAT™)の最大の特徴は、検出対象としてribosomal RNA(rRNA)を採用した点にある。細菌は23S rRNA、真菌/カビは28S rRNAを標的としている。rRNAは生細胞内に豊富に存在し、DNAと比較すると細胞の死後は速やかに分解されるため、生菌の存在を反映した指標として有用であるとされている。この特性により、従来のgDNA検出法で問題となっていた死菌由来gDNAによる偽陽性を低減することが可能となる。

本法は、図1に示したように①微生物の活性化と遊離核酸の不活化、②酵素および界面活性剤を用いた迅速溶菌とRNA抽出、③ワンステップリアルタイムRT-PCRによる検出、という一連の工程から構成される。これにより、従来14日間を要した無菌試験を約7時間~18時間で完結することができる。JP18 4.06 無菌試験法に規定される代表的な試験菌に対しても高い検出感度を示し、低菌数(数CFU/mLレベル)の検出が可能であることが確認されている。また、ヒト細胞や培地成分との交差反応がないことから、再生医療等製品への適用にも適した手法である。RiboNAT性能データに関しては当社のHPで紹介資料があるため、gDNA汚染の影響とサンプル量が多い場合の試験方法について一部紹介する。

図1. RiboNAT™ Assay Flow
図1. RiboNAT™ Assay Flow
図2. 微生物濃縮方法の概要
図2. 微生物濃縮方法の概要

RiboNAT™を用いた数十mLからの検出方法

RiboNAT™ では、標準的な試験方法において好気性・嫌気性ともに1 mL以下のサンプル量を用いて検査を行う。しかし、顧客によってはこの処理量では十分ではない場合があることも認識している。和光純薬時報 Vol.94 No.1(2026年1号)掲載の「【総説】再生医療における迅速無菌試験法 その選択と課題」でも、サンプル中の微生物濃縮技術に課題が残されていると指摘されている5)。本稿では、遠心やフィルターによる微生物濃縮工程の方法と結果の一部を紹介する。10 mL中に各微生物を18 CFU添加し、図2のフローに従って菌の濃縮を行い、RiboNAT™ Assay Flowに従い試験を実施した。

その結果、表1に示すように、6菌種の検出が可能であることを確認した。今後は、フィルターを用いた場合や遠心と上清除去操作のみの場合など、大容量サンプルに対する検査方法についても検討を進めていく予定である。

F表1. 異なる微生物濃縮方法を用いた検出結果
表1. 異なる微生物濃縮方法を用いた検出結果

RiboNAT™におけるgDNA混入の耐性

RiboNAT™ Assay Flowにおいて、gDNAが混入した場合にどの程度、偽陽性の抑制が可能かについて検討した。大腸菌由来のgDNAを30 ng/抽出になるようにLysis工程中に添加し、その後、1st DNase処理および2nd DNase処理の有無によって、Cq値と核酸量の変化を確認した。その結果、図3に示す通り、DNase処理を行うことでΔCq 16程度のCq値の増加が認められた。核酸量の定量結果からは、1st DNase処理だけでも99.992%の減少効果があり、2nd DNase処理においても同レベルの減少が確認された(表2)。このことから、RiboNAT™ Assay Flowはナノグラム量のgDNA混入時にも試験への影響を受けない高い耐性を有することが分かる。

図3. 各試験条件におけるCq値、未処理サンプルとの差分
図3. 各試験条件におけるCq値、未処理サンプルとの差分
表2. 各試験条件における溶出液中のgDNA濃度と減少率
表2. 各試験条件における溶出液中のgDNA濃度と減少率

おわりに

本稿では、RiboNATTMの性能および大容量サンプルを用いた検査方法について紹介した。これらは、さまざまなケースでRiboNATTMが適用可能であることを示している。無菌保証の考え方については前述の通り、規制当局等が発行するドキュメントに記載されている。一方、学術論文でもMontag-Lessing, Tらの報告においてプロセス中の管理の重要性が指摘されている6)。そのため、迅速無菌試験法には核酸増幅法のみならず、さまざまな技術による社会実装への挑戦が進められている5)。核酸増幅に関するトピックとしては、USPにおいて、使用期限が短い製品に対する核酸増幅法のドキュメント開発がUSP chapter 75として進行している。我々も各国のドキュメント開発を支援し、顧客がより使いやすいシステムの提供に取り組む必要がある。その中で、RiboNATTMはrRNAを標的とした核酸増幅法により生菌のみに特異的な検出を迅速に実現する技術であり、従来の出荷試験の代替または補完のみならず、インプロセス試験への適用やRTRTを志向した無菌保証戦略を支える基盤技術として期待される。

※ 図の一部は「BioRender」を使用して作成しています。

〔参考文献〕

  1. Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme. PIC/S guide to good manufacturing practice for medicinal products : Annex 1 - Manufacture of sterile medicinal products. (2022).
  2. Parenteral Drug Association. PDA technical report no. 33 : Evaluation, validation and implementation of alternative and rapid microbiological methods. (2014).
  3. International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use. ICH Q8 (R2). (2009a).
  4. International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use. ICH Q10 : Pharmaceutical quality system. (2009b).
  5. 松山 晃文:和光純薬時報 Vol.94 No.1 (2026).
  6. Montag-Lessing, T. et al. : Bundesgesundheitsblatt, Gesundheitsforschung, Gesundheitsschutz, 53, 45 (2010).

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