凍結融解のポイント
なかむらレディースクリニックの小池浩嗣先生にインタビューし、凍結融解のポイントや弊社の凍結融解培地Vit Kit-NXを使用している理由、培養士として働く上で大切になさっていることをお聞きしました。
培養士として働く上で大切にしていることを教えてください。
生命と真摯に向き合うことと、所作や言動に気を配ることです。若手時代は手技が未熟で、培養以外の仕事もスムーズにいかず苦しい時期がありました。そのことをきっかけに「自分は何がしたいか?」と深く考えた結果、生命と真摯に向き合うという姿勢が現在の自分の軸となりました。やはり「手技が上手くできればそれで良い」という姿勢では向上心や知識に限界がありますし、精神的にもこの仕事にやりがいを持ちにくくなってしまうと思います。
その後は、妊孕性温存を目的とした未受精卵子凍結をされた方の妊娠・出産が自信に繋がり、働くことにやりがいを感じることができるようになりました。自身の経験をもとに、当院では新人培養士向けの教育体制に注力しており、知識/手技の勉強会や、2段階のテストを設けています。誰が行っても同じ手技ができる、つまり技術差が出にくい施設を目指しています。
保険適用開始にあたり感じていることを教えてください。
凍結融解胚移植の成功率を上げることがより重要になったと思います。保険診療では移植回数が6回(40歳以上43歳未満は3回)に制限されるためです。移植回数の範囲で成功するためにはなによりも良好な胚を移植することが大切です。良好胚を移植するという観点から、胚移植の前段階である胚の凍結融解がより重要になったと感じています。
凍結融解のポイント、当社の凍結培地Vit Kit-NXの採用理由を教えてください。
凍結融解のポイントは、胚へのストレスを低減させることです。ストレスの原因は①温度変化、②浸透圧変化、③耐凍剤による毒性、④培地交換による環境変化です。これらのうち、対策を講じることができるのは④培地です。培養液と凍結融解培地のベース成分をなるべく同じにして、胚の環境変化を最小限に抑えることが、ストレス低減に繋がると考えています。
当院ではタイムラプス・インキュベータを使用しており、また安定した培養結果が得られることから、培養液はシングルステップ培地CSCM-NXを採用しています。凍結融解培地Vit Kit-NXは、ベース培地がCSCMのため胚へのストレスを低減でき、安心して使えると考えています。さらに、従来のプロトコルを変える必要がなく、評価結果も良好でしたので、Vit Kit-NXを使い続けています。
また感覚的な部分ではありますが、Vit Kit-NXは各液の置換がしっかりと行われている印象があります。例えば凍結では、ES液からVS液に移動する時、十分にES液の成分がしっかりと排出され、VS液の成分がしっかりと胚に吸入されているというイメージです。そのおかげか、Vit Kit-NXを使用してから融解後の胞胚腔が大きく、また再拡張が早くなり、ハリが出るようになりました。従来以上のHatching(孵化)が期待できると感じています。
Vit Kit-NX評価結果
下記表は、受精卵において、凍結培地として製品AまたはVit Kit-NXを使用した場合の、胚移植時の胚のグレード、Hatching有無別の臨床妊娠率です。融解培地は両群ともに製品A、TS液の温度は37℃、回復培養は3-4時間です。下記のとおりVit Kit-NXは高いグレードの胚が多くなりました。また、Hatching有の場合は、妊娠率が高くなりました。培養液は両群ともにシングルステップ培地CSCM-NXを使用しました。
胚凍結融解用培地
Vit Kit-NX
- 凍結・融解時の胚へのストレスを軽減。
- CSCM (ヒト胚用培養液)、MHM (二重緩衝剤) との併用で更なる負担軽減。
- 代替血清成分に含まれるコレステロール、デキストランにより耐凍効果あり。