アルコールの保護基
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保護基の役割とは?
複数の官能基を持つ化合物を合成するとき、ある官能基のみを選択的に反応させたい、ということがよくあります。例えば、アルコールが複数ある場合は、エーテルやエステルといった不活性な官能基に一時的に変換しておきます。このような目的に使われる、着脱可能な官能基を保護基 (Protecting group) といいます。
保護基の性質
保護基の役割は、特定の化学反応から官能基を保護する (化学安定性を高める) ことです。汎用性があり、目的に応じた安定性を得るため、さまざまな種類の保護基が開発されています。
その他にも、以下のような特性を期待して使うこともあります。
① 溶解性の向上・極性の低減
糖質やアミノ酸を出発物質として利用する場合、化合物の極性が高いため、有機溶媒に溶けにくいことが問題となります。水相に移行したり、分離担体に吸着され、収率の低下を招くこともあります。この極性官能基を保護すると、溶解性の改善が期待できます。
② 結晶性の向上
合成中間体を精製する場合、特に大スケールの場合にはカラムクロマトグラフィーの使用をためらうことが多いです。このような場合は再結晶を考えます。保護基を適切に選択すれば結晶性が向上することがあります。単結晶が得られれば、X線結晶構造解析によって3次元構造も決定できるので、分析的観点からも重要です。この目的には、ブロモ基やニトロ基、芳香環を含む保護基を選択することが多いです。
③ 生物活性の変化
生理活性物質は、極性官能基を介して生体高分子と相互作用することが多いです。ここに保護基を導入して極性官能基を遮蔽すると、一般的に生物活性は低減します。
④ 揮発性の変化
保護基を導入すると分子量が大きくなり、沸点が上昇します。これにより、減圧下での溶媒留去や乾燥が容易になってきます。一方、アルコールをメチルエーテル、トリメチルシリルエーテル等にすると、分子量の増加度の割に極性の低下が大きく、結果として揮発性が増すことが多いです。これにより、質量分析やガスクロマトグラフィなどによる分析が容易になります。
⑤ 構造解析の易化
本来UV吸収をもたない化合物に、強いUV吸収をもつ保護基 (ベンゾイル基など) を導入するなどの手法が一般的です。HPLCでの高感度検出も可能となります。
⑥ 反応性の変化
かさ高い保護基を用いて近傍の反応点を遮蔽したり、配位性保護基を用いて、化学選択性を制御することも可能です。
代表的な保護基
保護基には、保護しやすいだけでなく、脱保護しやすいという性質も求められます。最終目的物には保護基が入っていないことが大半ですので、取り外しが出来なければ意味がありません。目的に応じ多種多様な保護基が開発されていますが、合成を効率的に進めるにはそれぞれの特徴を学び、場合に応じて使い分けることが重要です。
表1に、アルコールの保護に用いられる、代表的な保護基の略称・脱保護の条件などを示します。これ以外の保護基も数多く存在します。
表1:アルコールの代表的な保護基
構造 | 名称 (略称) | 脱保護条件 |
---|---|---|
ベンジル (Bn) |
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p-メトキシフェニルベンジル (PMB or MPM) |
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メトキシメチル (MOM) |
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トリメチルシリル (TMS) |
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トリエチルシリル (TES) | ||
t-ブチルジメチルシリル (TBS) | ||
アセチル (Ac) |
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ベンゾイル (Bz) | ||
トリチル (Tr) |
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活用例
図1のようなジオールの保護の例では、条件の違いでTBS保護のパターンが異なる場合があります。適切な条件によって選択的に保護基を導入できます。
また、図2のように2段階で保護基の位置と種類を変更することも可能です。まず1)ではアセチル基で保護、続いて2)でMEM (2-メトキシエトキシメチル) 基を除去しています。MEM基を脱保護したアルコールのみを光延反応によって反転させる予定で、アセチル保護をしています。
まとめ
保護基は保護・脱保護のプロセスが必要ですので、工程数の増加という本質的な問題点を含んでいます。しかしながら、現代においても有機合成には欠かせない技術です。近年では 保護基に機能を持たせ、従来不可能であった変換を進行させるような研究例も報告されています。
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OR25768 | 塩化4-メトキシベンジル | Apollo Scientific Ltd. | 5 g |
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039-25093 | 100 g | ||
023-01212 | 塩化ベンゾイル | 和光特級 | 25 g |
027-01215 | 500 g | ||
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