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【クロマトQ&A】:カラムを長持ちさせる使用方法

本記事は、Analytical Circle No.76(2015年3月号)に掲載されたものです。

HPLCカラムを長く安定に使用するためにはどんなことに注意すればいいでしょうか?

逆相系カラムの劣化に影響する項目をまとめてみました。

カラムの初期性能をできるだけ維持させて長く安定に使用することは、分析精度の向上、コスト削減のためなどに必要なことです。基本的には各カラムの取扱説明書の記載事項を守ってご使用いただくことですが、分析条件(溶離液・送液流速・注入試料など)の適正化、定期的なカラムの洗浄など、カラムにあったメンテナンスを日頃から実施していただくことが必要になります。

カラムの劣化は、①カラム圧力の上昇、②ピーク形状の変化(理論段数低下、テーリング、リーディングなど)、③保持時間の変化、などの現象で確認されます。これらの現象が顕著になってからの回復は困難な場合が多いため、最も汎用されているODS(C18)などの逆相系カラムの使用に際し、カラムを長持ちさせる使用条件、日頃のメンテナンスについてご紹介します。

溶離液:有機溶媒比率を高く、pHは適正範囲で

逆相系充てん剤は疎水性化合物を吸着します。

水100 %に近い溶離液条件では、カラムに疎水性化合物が蓄積されます。一定のサイクルで有機溶媒を送液してカラムを洗浄するプログラムを組み込むなどの工夫でカラムの劣化を防止する効果が考えられます。

ODS充てん剤に保持され難い化合物を水系のみの移動相で分析するより、イオンペアー試薬を添加することで保持を大きく、有機溶媒を添加した条件で分析することでカラムを安定に使用できる場合があります。

pHは適正範囲で使用することが基本です。通常シリカゲル系カラムではpH2~7程度ですが、耐酸性、耐アルカリ性のカラムもあり、使用したいpH、分離目的に合ったカラムを選択することが重要です。

カラム圧力:低い圧力で使用、圧力の急激な変動を抑える

カラムにあった圧力範囲で使用することが基本ですが、カラム圧力が低い条件で使用する方がカラムにやさしい条件といえます。使用推奨圧力の範囲内でも急激な圧力変化はカラムへのダメージが大きくなります。

メタノールはアセトニトリルに比べて粘度が高く、グラジエント条件でメタノールを使用する際にはカラム圧力の変化が出来るだけ小さくなるよう条件の設定に考慮することも重要です。

カラムを配管から外す際には表示圧力がゼロになってから外してください。

充てんカラムは、振動や圧力変動によって充てん状態が変わり、高理論段数が得られなくなってしまいますので、落としたり衝撃を与えることのないよう充分注意してください。

分析温度:一般的に低い方が劣化への影響は少ない

分析温度を高くするとカラム圧力は低くなります。しかし、温度が高くなるとカラムの劣化は早くなります。

充てん剤のシリカゲルと官能基との結合の強度により温度の影響の受け方は異なります。

注入試料:メンブレンフィルターでろ過、ガードカラム、ガードフィルターを使用

カラムの劣化の指標となるカラム圧力の上昇やピーク割れの発生は、フィルターの目詰まりに起因している場合が最も多いと考えられます。フィルターの目詰まりの原因は、試料の汚れ、塩の析出などが考えられます。試料は分析に使用する溶離液に溶解、希釈し、孔径0.45 µm程度のメンブレンフィルターでろ過してから注入してください。

フィルターの目詰まりは除去することが難しいため、分析カラムの保護には、ガードカラム、ガードフィルターを接続して使用し、早めの交換が分析カラムの劣化防止に効果的です。

カラム洗浄:定期的な洗浄、分析試料、溶離液にあった洗浄液

分析終了時

毎日使用するカラムは分析終了毎に洗浄する必要はありません。ただし、カラム内に緩衝塩・イオンペアー試薬・酸などが残っていると加水分解を促進しますので、数日以上使用しない場合や強酸性、強塩基性、高濃度の緩衝液、イオンペアー試薬を使用された後は、分析終了後必ず洗浄してください。洗浄溶離液としては、緩衝塩・イオンペアー試薬・酸などを含まない同一組成の溶離液が最適です。水100 %での洗浄は、イオンペアー試薬の種類によっては析出が考えられますので注意が必要です。

洗浄はカラム内容積の5倍量を目安にして、圧力に注意しながら行ってください。例えば内径4.6 mmのカラムでは、流速1 mL/min.で20分程度を目安に洗浄します。

長期保管の方法

長期保管の前には必ずカラムを洗浄してください。緩衝塩・イオンペアー試薬・酸などを充分洗い流した後、有機溶媒100 %に置換してカラム栓で密栓し温度変化の少ない場所に保管してください。置換用有機溶媒としてはメタノール、アセトニトリルをおすすめします。置換した溶媒を記載しておくことで次に使用するときに塩の析出などのトラブルの発生防止になります。

カラム圧力の上昇傾向が見られた場合

試料溶液中の不溶物はメンブレンフィルターでろ過することで除去しますが、分析用の溶離液では溶出しない疎水性の高い不純物がカラムに蓄積するとカラム圧力の上昇の原因になります。特に水の比率が高い溶離液を使用される際にはカラム圧力が上昇する前に有機溶媒比率の高い洗浄液を定期的に送液してカラムを洗浄することをおすすめします。入り口側の充てん剤から汚染が進みますが、ガードカラムを使用することで分析カラムの劣化防止になります。

カラムフィルター部分の目詰まりの場合には、逆方向からの送液が効果的です。ただし、劣化の進んだカラムでは逆送液により充てん状態が変化することがあります。その場合はカラムの交換時期と判断します。

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