【テクニカルレポート】シリカゲル 40F254TLC プレート - ワコーの開発と分離精製システムへの応用
本記事は、和光純薬時報 Vol.84 No.4(2016年10月号)において、和光純薬工業 試薬化成品研究所 柴田 剛志が執筆したものです。
現在、分離精製分野で使用されているシリカゲル製品は、一般的に比表面積 400 ~500m2/g、細孔径 6 ~7nmのシリカゲルで構成されています。当社ではより有用な分離材料として、比表面積 700 ~800m2/g、細孔径 3 ~ 4nm の高比表面積シリカゲルに着目し、本シリカゲルが一般シリカゲルと比べて以下の2点において有用であることを見出しました。
- 約 2 倍の分離能を有する(負荷量を 2 倍に上げることができる)
- 難溶性化合物の分離に有効である
上記の結果に基づき、2010 年に高比表面積シリカゲルを担体とした中圧分取用カラム「プレセップ®(ルアーロック)シリカゲル(HC-N)シリーズ」及びバルクシリカゲル「ワコーシル® HC-N」を発売しました。この度、これらと分離相関のあるTLC プレートを「シリカゲル40F254TLC プレート- ワコー」として商品化しました。本品と先行品を併用することにより目的成分の溶出時間を予測することが可能となります。また、近年の自動分取精製装置に備わっているTLC の結果から最適な分取精製条件を出力するシステムへも適用することが可能です。
以下に高比表面積シリカゲルを塗布した本品とその特長についてご紹介します。
1.高比表面積シリカゲルの特長(図1、図2)
本シリカゲルの特長を示すデータとしてプレセップ®( ルアーロック)シリカゲル(HC-N)M タイプの分離例を図1、図2 に示しました。本シリカゲルでは一般シリカゲル品と比べて分離能が約 2 倍向上し(図1)、保持能同一の条件下では酢酸エチルの組成を上げることができるため難溶性化合物の分離に有効であることが示唆されました(図2)。
2.シリカゲル 40F254 TLCプレート - ワコーの特長(図3)
次にシリカゲル40F254TLC プレート - ワコーと一般シリカゲルTLC(細孔径6 〜7nm のシリカゲルを塗布したTLC プレート)との分離比較を図 3 に示しました。本品は一般品と比べてRf 値が低く、1.と同様に難溶性化合物の分離に有効であることが示唆されました。
3.TLCプレートと分取カラムの相関について(図4)
続いてシリカゲル40F254TLC プレート-ワコーとプレセップ®(ルアーロック)シリカゲル(HC-N)の分離相関について検討しました。TLC の Rf 値とカラムでの溶出時間(CV)は一般式Rf 値=1/CV の関係にあり、溶出理論曲線は図 4 の実線グラフで表されます。プレセップ®(ルアーロック)シリカゲル(HC-N)の溶出時間を示すプロットは、溶出理論曲線付近に分布しており、これらの分離相関が高いことが示唆されました。
*一般式の補足としてRf 値と溶出時間(CV)は図 5 で図示した関係にあります。例えばRf 値=1.0 の時は 1CV で溶出し、Rf 値=0.5 の時は 2CV で溶出します。この時の 1CV はカラム 1 本の内部を溶離液で満たした時に必要とする液量(mℓ)を示します。
4.分取精製システムへの応用
最後にTLC のRf 値から分取カラムの溶出条件を予測する機能が搭載された最新の分取精製装置への適用性について検討しました。一般TLC プレートと一般分取カラム、シリカゲル40F254TLC プレート- ワコーとプレセップ®(ルアーロック)シリカゲル(HC-N)カラムの組合せで、溶出条件を 4CV(Rf 値=0.25) に設定したときのクロマトグラムを図 6 に示しました。いずれも設定通りの 4CV で目的成分が溶出されており、装置への適用性について確認しました。
以上、この度開発したシリカゲル40F254TLC プレート- ワコーは高比表面積シリカゲルを充てんしたプレセップ®( ルアーロック)シリカゲル(HC-N)カラム及びバルクゲル ワコーシル® HC-N(35 〜63μm)と分離相関があり、TLC の結果から分取精製への移行がスムーズにできるようになりました。ご研究のスピードアップの一助としましてぜひともご活用下さい。