シュレンクフラスコ(Schlenk flask)
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シュレンクフラスコとは
微量の酸素や水などに対して不安定な化合物を取り扱うために使われるフラスコで、単にシュレンク、シュレンク管とも呼ばれています。これを考案したドイツの化学者ヴィルヘルム・ヨハン・シュレンク(Wilhelm Johann Schlenk)の名前にちなんでいます。シュレンクが考案したのは独特の形状をしているシュレンクコックであり、狭義のシュレンクフラスコは、シュレンクコックが接続されているフラスコといえます。
ただしテフロンコックを接続したフラスコもシュレンクフラスコとして広く呼ばれていて、シュレンクコックと同様に空気に不安定な物質を使えるので広義にはシュレンクフラスコといえます。
シュレンクコックの仕組み
通常のT字型三方コックでフラスコ内を窒素置換する場合、三方コックにポンプと窒素ガスラインを接続してパージと真空排気を交互に行いますが、コック内T字の各流路から逸れたところは、ガスが滞留しやすいです。もちろん、空間的にはつながっていますが、窒素置換の効率を悪くしている原因となります。また、コックの方向を間違えると三方全てが接続してしまいます。
一方、シュレンクコックの場合には二つの独立した流路がコック内に設けられていて、三方が接続することもないですし、ガスが滞留するくぼみもありません。そのため効率よくガス置換ができます。
テフロン付シュレンクコックの仕組み
テフロンコックの場合は、栓の先端がガラスのくぼんだ部分と密着することで閉まります。空いている状態でも、上部にある二つのOリングが内部の気密を保っているため、外から空気が入り込むことはありません。ガラスのコックとは異なり、閉まっていてもコック内部に閉じ込められる部分がなくグリスもいらないので、液体が通る箇所にも多用されています。栓の素材にはガラスのものもあり、Oリングもいくつかの種類があります。扱う化合物によって使い分ける必要があります。
長所と短所
シュレンクコックとテフロンコックの長所と短所をそれぞれ挙げます。基本的には、空気に不安定な物質は危険性も高いので、慎重な実験操作が必要です。
シュレンクコック
- 三方コックとして使えるので窒素置換だけであれば、別途真空ラインは不要
- ガラス以外の素材を使っていないので、溶媒で丸洗い可能
- 栓側か管側が対になっており、破損や紛失で使えなくなる
(互換性があるシュレンクコックを作っているメーカーもあります) - コックが浮いて気密が破れることがある
- グリスをつけすぎると、流路がグリスで汚くなる。カーブした流路は洗いにくい
テフロンコック
- 別途窒素と真空のラインがないと、空気の混入なしで窒素置換できない
- 扱う化合物によっては、テフロンやOリングに影響が出て気密が保てなくなる
- 同じコックのメーカー、サイズであれば、交換可能
- グリスフリーでOリングも二重になっているので長期において信頼性が高い
- ゴミや粒子が付着すると気密が保てなくなる。コックを閉めすぎるとガラスが破損する