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導入事例:胚凍結融解用培地「Vit Kit-NX」

当社の胚凍結融解用培地「Vit Kit-NX」を導入している、山下湘南夢クリニックの河野先生に導入までの経緯や使用感について、お話を伺いました。

Q:Vit Kit-NXを知ったきっかけを教えてください。

A
きっかけは2019年の第37回日本受精着床学会にて、企業ブースに立ち寄った際に営業担当者からご紹介いただいたことです。Vit Kit-NXのコンセプトである胚へのストレス軽減が、当院の妊娠成績の向上につながることを期待し、検討することにしました。

Q:製品検討にあたり、不安な点はありましたか?

A
全ての不妊治療施設に当てはまることだと思いますが、これまで使っていた凍結融解培地の変更が、臨床成績にマイナスの影響を及ぼさないかが不安でした。また、デキストランは粘稠性があることが知られておりますので、液性が胚操作にどのくらい影響するのかがわかりませんでした。

Q:製品採用の決め手を教えてください。

A
Vit Kit-NXに関する論文で、凍結融解にセンシティブなウサギ胚盤胞に対するデキストランの有効性が示されており、患者様の卵子・胚のストレス軽減が期待できると考えました。さらに海外の臨床データに加え、当院で実施したマウス胚での検討試験結果も良好でした。粘稠性についてはほとんど気にならず、通常使用している培地と比較して、操作性は変わりませんでした。Vit Kit-NXを採用して5か月間、臨床成績の推移を追跡し、従来使用していた培地 (製品A) と比較して同等以上の臨床成績が得られました。このことから、当院ではVit Kit-NXを採用することにしました。

製品AおよびVit Kit-NXを使用した凍結融解胚盤胞移植成績

Table 1. C-IVF由来凍結胚盤胞 1胚移植結果
試験区 排卵時平均年齢 移植数 <L βhCG GS(%)
製品A 36.9±0.8 21 6 (28.6) 3 (14.3) 12 (57.1)
Vit Kit-NX 37.2±0.9 14 2 (14.3) 3 (21.4) 9 (64.3)
P = 0.8053 P = 0.5652 P = 0.9271 P = 0.9439
Table 2. C-ICSI由来凍結胚盤胞 1胚移植結果
試験区 排卵時平均年齢 移植数 <L βhCG GS(%)
製品A 37.6±0.6 48 9 (18.8) 17 (35.4) 22 (45.8)
Vit Kit-NX 36.8±0.6 51 12 (23.5) 10 (19.6) 29 (56.9)
P = 0.3086 P = 0.5610 P = 0.0775 P = 0.2725

Statistics: student's t-test, chi-square test

Q:どのような方にVit Kit-NXをおすすめしますか?

A
マウス胚を使用した検討試験では、凍結時の液量を少なくした場合、Vit Kit-NXを使用したほうが細胞の生存率が高いことがわかりました。このことから、minimum volume cooling (MVC) を採用している不妊治療施設では、特にVit Kit-NXは有効ではないかと考えられます。

マウス胚を用いたローディング量検討試験②

Table 3 マウス分割期胚の凍結時ローディング量と生存細胞の割合
試験区 供試胚数 総細胞数 凍結融解後生存細胞数
(/総細胞数)
0.5 µL 製品A 40 110 110 (100)
Vit Kit-NX 56 160 160 (100)
< 0.1 µL 製品A 19 55 35 (63.6)
Vit Kit-NX 24 71 71 (100)
5.0 µL 製品A 20 72 72 (100)
Vit Kit-NX 23 72 72 (100)

胚凍結融解用培地
Vit Kit-NX

  • 凍結・融解時の胚へのストレスを軽減。
  • CSCM (ヒト胚用培養液)、MHM (二重緩衝剤) との併用で更なる負担軽減。

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