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【テクニカルレポート】3 µm ODSシリカゲル充てん剤による医薬部外品配合成分の迅速分析について

本記事は、和光純薬時報 Vol.61 No.1(1993年1月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

医薬部外品は概念的には医薬品と化粧品との中間に位置する製品で、薬事法第2条第2項で定義されており、その種類も決められています。これら医薬部外品の配合成分である殺菌剤や防腐剤などは、その配合量が多量の場合は人体に影響を与え、不足する場合は薬効が損なわれるなどの問題があり、安全性と製品の品質の両面から厳密な品質試験が必要となっています。

この試験方法としては「医薬部外品配合成分の簡易迅速試験法について」が厚生省薬務局監視指導課長名で通知されており、これらの試験項目には高速液体クロマトグラフィーによる定性および定量方法が数多く採用されています。

通常これらの分析には内径 4~6 mm、長さ 150~250 mm のカラムに、平均粒子径 5 µm のODSシリカゲル(5 µm ODS)を充てんしたものが主に用いられていますが、今回、平均粒子径 3 µm のODSシリカゲル(3 µm ODS)を用いた場合の有用性について検討を行いました。

3 µm ODS として Wakosil-Ⅱ 3C18HGを、5 µm ODS として Wakosil-Ⅱ 5C18HG を使用し、分析条件は上記試験法に準じて行いました。

図1. に防腐剤であるp-ヒドロキシ安息香酸エステル類(PHBA-Esters)の分離を例に、カラムサイズと保持時間の関係を示しました。これらのクロマトグラムからもわかるように 3 µm ODS の場合には、カラムサイズを 4.6 * 50 mm まで短くしても定量できる範囲内で短時間分析(分析時間 1/3)が可能となっています。

図1. p-ヒドロキシ安息香酸エステル類の分析

Chromatogram A : 5 µm ODS (4.6 * 150 mm) B : 3 µm ODS (4.6 * 100 mm) C : 3 µm ODS (4.6 * 50 mm)
Peaks 1) PHBA Methyl 2) PHBA Ethyl 3) Benzoic acid 4) PHBA Isopropyl 5) PHBA n-Propyl 6) Salicylic acid
Analytical Conditions
Mobile phase : CH3CN / H2O = 30 / 70 (v/v) Containig 0.1 % Tetra-n-amylammonium Bromide (pH7.0 ← dil. NH4OH)
Flow rate : 1.5 mL / min at 30 ℃
Detection : UV 240 nm (0.16 AUFS)
Injection : 10 µL (Conc. 20 µg / mL Mobile Phase)

そこで 3 µm ODS を使用する場合はカラム長を通常の 5 µm ODS カラムより 100 mm 短くし、各種配合成分の分析に応用してみました。図2~4 にヘアートニック中の酢酸 dl-α-トコフェロールの分析、ニキビ薬中のレゾルシンの分析、化粧水中のイソプロピルメチルフェノールの分析例を示しましたが、いずれの場合にも短時間に十分な分離が達成されています。

図2. 酢酸 dl-α-トコフェロールの分析

Chromatogram A : 5 µm ODS (4.6 * 150 mm), Press. 42 kg/cm2 B : 3 µm ODS (4.6 * 50 mm), Press. 35 kg/cm2
Peaks 1) n-Hexadecanophenone (Internal standard) 2) dl-α-Tocopherol Acetate
Analytical Conditions
Mobile phase : MeOH
Flow rate : 1.0 mL / min at Ambient
Detection : UV 280 nm (0.04 AUFS)
Sample Pretreatment
Weigh sample 1g
 ↓
Add 2.0 mL of n-Hexadecanophenone soln. (1 mg/mL EtOH)
 ↓
Add MeOH → 50 mL
 ↓
Shake vigorously
 ↓
Injection of 20 µL

図3. レゾルシンの分析

Chromatogram A : 5 µm ODS (4.6 * 150 mm), Press. 86 kg/cm2 B : 3 µm ODS (4.6 * 50 mm), Press. 70 kg/cm2
Peaks 1) Resorcinol
Analytical Conditions
Mobile phase : MeOH / H2O = 15 / 85 (v/v)
Flow rate : 1.0 mL / min at Ambient
Detection : UV 280 nm (0.04 AUFS)
Sample Pretreatment
Weigh sample 0.1g
 ↓
Add MeOH
 ↓
Ultrasonication for 5 min
 ↓
Add MeOH → 50 mL
 ↓
Filtration (0.45 µm)
 ↓
Injection of 10 µL

図4. イソプロピルメチルフェノールの分析

Chromatogram A : 5 µm ODS (4.6 * 250 mm), Press. 88 kg/cm2 B : 3 µm ODS (4.6 * 100 mm), Press. 87 kg/cm2
Peaks 1) Isopropylmethylphenol 2) Thymol (Internal standard)
Analytical Conditions
Mobile phase : CH3CN / H2O = 50 / 50 (v/v)
Flow rate : 1.0 mL / min at 40 ℃
Detection : UV 278 nm (0.04 AUFS)
Sample Pretreatment
Weigh sample 1g
 ↓
Add 5.0 mL of Thymol soln. (0.2 mg/mL MeOH)
 ↓
Ultrasonication for 5 min
 ↓
Add MeOH → 100 mL
 ↓
Shake vigorously
 ↓
Filtration (0.45 µm)
 ↓
Injection of 10 µL

以上 3 µm ODS シリカゲルの有用性について検討を行いましたが、検体当りの分析時間の短縮は検体処理能力の改善と溶媒使用量の低減など大きなメリットを生むものと推察されます。

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