Wako LALシステム

測定技術への貢献 -FDA認可取得まで

エンドトキシンは、グラム陰性菌の細胞壁成分に含まれる強力な毒素です。人の血中に入ると発熱や致死性ショックなどをもたらすため、医薬品等では、エンドトキシンが混入していないことを確認する必要があります。富士フイルム和光純薬は、ライセート試薬の製造や測定装置「トキシノメーター」の開発によりエンドトキシン測定技術の進化に努め、過去30年以上に渡って医薬品を後方から支えてきました。

ライセート試薬の輸入販売からエンドトキシン測定装置の開発へ

エンドトキシン測定技術と共に歩む

富士フイルム和光純薬米国工場(場所:バージニア州リッチモンド)

エンドトキシン試験法には当初、ウサギ発熱性試験が用いられていました。試料をウサギに注射し、体温の上昇度合いからエンドトキシン混入量を測定するのです。しかし、この試験法では、結果が出るまでに時間がかかること、動物を使うため信頼性の高い結果を維持できないことなどの難点がありました。

1956年に米国で、F.B.Bangによりカブトガニの血液が、エンドトキシンによってゲル状に固まる現象が発見され、続いてカブトガニの血球抽出物から調製されたエンドトキシン測定試薬(リムルス試薬、後にライセート試薬と改称)と、これを使った「ゲル化法」が開発されました。ゲル化法は1980年には米国薬局方に収載されていますが、これに先立ち富士フイルム和光純薬も試薬の輸入発売を始めています。ただ、ゲル化法では、半定量法であること、判定精度が測定者の熟練度に左右されることなどの課題が残りました。

こうした課題の解消に富士フイルム和光純薬は挑み、1985年に従来とは異なる原理に基づく測定法「比濁時間分析法」と、その測定装置「トキシノメーター®ET-201」を世界で初めて開発、発売するに至りました。同じ時期に米国でもACC社(Associates of Cape Cod,.INC)が、同様の測定原理を用いたシステム「LAL-5000」を開発しています。こうした状況を受けて、比濁時間分析法は、1987年に米国FDAガイドラインに収載されました。

その後も富士フイルム和光純薬は技術開発に努め、1988年に少数検体ユーザー向け「トキシノメーター®ET−208」、1994年に測定データ採取からデータ処理、レポート出力までをこなす第二世代の「トキシノメーター®ET−301」へとバージョンアップを重ね、多くの製薬メーカーに採用いただいています。

2004年に発売された第三世代の「トキシノメーター®ET-5000」を経て、現在は、比濁法、比色法、ゲル化法に対応する第四世代「トキシノメーター®ET-7000」を数多くの試薬とともに提供しています。一方で比色法と比濁法に対応しランニングコストを抑えた「MPRエンドトキシン測定システム」、簡易型エンドトキシン測定システム「トキシノメーター®ET-Mini」なども提供し、エンドトキシン測定のパイオニアとして安全な医薬品製造と品質管理に貢献しています。

エンドトキシン測定技術の普及に力を尽くす

現在、エンドトキシン試験法としては、ゲル化法、比濁法、比色法の3つが薬局方に収載されています。局方以外にもβ−グルカン測定、ペプチドグリカン測定(SLP試薬)など多様な試験法があり、各試験法ごとに実施する際の注意点があります。

例えばエンドトキシン試験では、使用器具、試験用水などにきめ細かな注意が求められます。薬局方に基づく場合には予備試験と定量試験を行うよう定められています。エンドトキシンの添加方法や最大有効希釈倍数の求め方も、初めての方には難しく感じるかもしれません。一方で試料には多種多様なバリエーションがあります。水に難溶/不溶な試料の性質や、あるいは動物血液や培地などの対象に応じて、測定法を適切に調整しなければなりません。また富士フイルム和光純薬では「エンドトキシン試験法」のマニュアルを提供していますが、実際にはマニュアルには記載されていない工夫が必要なケースもあります。

そこで富士フイルム和光純薬では1996年、日本薬局方第13改正に比濁法と比色法が収載されたのを機に、他社に先駆けてセミナー開催をスタートしました。以降、セミナーをほぼ毎年開催し、エンドトキシン測定法に関する情報はもとより、薬局方改正による注意点、国際的な動きなどの情報伝達に努めています。2008年からは、エンドトキシン試験法技術講習会を行い、試験ノウハウの伝達にも力を入れています。

FDA認可工場設立と、世界唯一の
エンドトキシン特異的シングル試薬の開発

世界初のライセート試薬は米国で開発され、富士フイルム和光純薬も当初は米国よりの輸入品だけを取り扱っていました。

しかし「トキシノメーター」発売により市場が拡大し、試薬ニーズも高まってきたため、富士フイルム和光純薬は米国での自社工場設立に踏み切ります。米国で工場設立する理由は、原料のカブトガニが豊富であることに加え、規制の厳しさで知られるFDA認可を得ることで品質を保証するためです。もちろん製造した試薬を米国内外で販売するためにも、FDA認可を取る必要があります。

まず、2003年にセントルイスにあったヘマケム社を買収し、米国進出の足がかりとしました。その後、リッチモンドに新しい工場を建設し、FDA認可を受け、試薬の出荷を始めています。ちなみにエンドトキシン特異試薬でFDA認可を受けているのは、世界でも富士フイルム和光純薬の製品だけです。

また、試験管内に試薬が予め凍結乾燥されていて、試料を入れるだけで測定できる便利なシングルタイプ試薬があります。このカテゴリーでも、エンドトキシン特異的でFDA認可試薬を持つのは、世界でも富士フイルム和光純薬だけです。

このように30年以上も前からエンドトキシン試薬に関わり、測定法の改良と「トキシノメーター」開発に努めてきた富士フイルム和光純薬は、日本におけるエンドトキシン測定のパイオニアの一員として、医薬品業界などの発展に尽力してきたのです。