細胞内代謝測定

解糖系やTCA回路、電子伝達系の解析は、細胞の状態を理解する上で重要です。これら細胞代謝システムは、グルコースや乳酸、NAD(P)/NAD(P)H、グルタミン、グルタミン酸を定量することで評価できます。
当社では、これら代謝産物を定量するWSTキットシリーズを販売しています。

学術コンテンツ

細胞内の代謝システムである、解糖系やTCA回路、電子伝達系の解析は、細胞状態を理解する上で重要であり、グルコースや乳酸、NAD(P)/NAD(P)H、グルタミン、グルタミン酸などのエネルギーおよび代謝産物を指標に評価されています。

各疾患における細胞内代謝の変化

がん

がん細胞は、活発な細胞増殖を維持するため迅速に大量の栄養素を取り込み、代謝することによってタンパク質や核酸の合成、ATPなどのエネルギー産生を行っています。また、細胞にとって不利な環境(低酸素や低栄養)下であっても、がん細胞は代謝系を変化させて生存しています。そのため、近年、がん細胞の代謝系を解明する研究が活発に進められています。

特徴的な代謝として、がん細胞はミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも非効率な解糖系を用いてATPを産生します(ワールブルグ効果)。そのため、がん細胞は糖を大量に取り込みます。また解糖系の亢進によって乳酸を大量に産生します。解糖系を用いたATP産生には酸素は必要ないため、低酸素下でもがん細胞は増殖することができます。

一方、がん細胞のミトコンドリアは、アミノ酸や脂肪を用いてNADH産生を行います。がん細胞のミトコンドリア内NADHはATP産生以外に主にレドックス制御に利用されている、と考えられています。がん細胞のミトコンドリアは異常な機能を有しており、その結果としてミトコンドリア膜電位の上昇(過分極)および過剰な活性酸素の産生を引き起こします。そのため、多くのグルタチオンを産生してレドックスバランスを維持しています。グルタミンやシステインはグルタチオン産生に必須な栄養素となるため、がん細胞ではこれらアミノ酸を過剰に取り込んでいます。また、還元型グルタチオンを維持するためにはNAPDHが必要となるため、解糖系から続くペントースリン酸経路やミトコンドリアのNADHを利用して高いNADPH濃度を維持しています。

(注意)上述の内容は、がん細胞の一般的な代謝特性を示すものであり、がん細胞の種類や環境によって異なります。

糖尿病

高血糖状態では、細胞内グルコース濃度が上昇しポリオール経路の代謝が亢進します。これによりNADPHが過剰に消費され、還元型グルタチオン(GSH)が減少します。この結果、酸化ストレスが増加し細胞損傷が促進します 。

老化

近年、NAD+と老化との関係性が注目を集めています。マウスの個体老化モデルでは肝臓等でNAD+量の減少が認められ、NAD+合成酵素の阻害は老化様の細胞機能低下を惹起することが報告されています。また、NAD+量の減少はミトコンドリア機能低下を招き、一方でミトコンドリア機能の低下はNAD+量の減少、ひいては老化様の細胞機能低下を招くことが示唆されています。
ミトコンドリア機能低下により増加した乳酸は老化関連疾患であるがんや糖尿病の病態進展とも密接に関わっており、老化との関係を紐解くのに、NAD+および乳酸の変化を解析することが重要視され始めています。

本記事は同仁化学研究所 「これからはじめる細胞内代謝」より一部抜粋して掲載しております。