細胞外基質 (再生医療)
細胞培養には、細胞の足場として培養器材が必要となります。多くの場合ポリスチレン製のディスポーザル製品が使用されています。しかし、ポリスチレン表面は疎水性で細胞との親和性が悪いため、表面処理を行い、細胞の接着性を向上させています。さらに細胞の接着性や進展性を向上させるために、細胞と親和性の高い細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)が良く使用されています。細胞外マトリックスは全ての組織、臓器中に存在する非細胞性の構成成分です。ECMは、主に繊維状タンパク質とプロテオグリカンの二種類の高分子で構成されています。ECM中の主な繊維状タンパク質は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニンです。これらは細胞培養において、培養器材のコーティング剤として汎用されます。
コラーゲン
3本のポリペプチド鎖がらせん構造をとる分子で、グリシン残基とプロリン残基を豊富に含んでいます。結合組織と基底膜の主要なタンパク質成分です。細胞の代謝、形態、増殖、分化、移動などのさまざまな活度に影響を与えることが明らかにされています。
ラミニン
ほとんどの組織の基底膜の主成分で、基底膜の構成及び機能を担っています。細胞の接着、移動、増殖および軸索成長や分化促進など多くの生物学的活性があります。培養系においては、主に上皮細胞、神経細胞、幹細胞及び筋細胞の細胞接着を促進します。
フィブロネクチン
糖タンパク質であり、細胞接着分子として細胞の接着、成長、移動、分化を促進します。細胞膜表面の特異的レセプターであるインテグリンを介し、細胞接着のほか、食作用の促進や組織損傷の場においても働いている。主に繊維芽細胞、肝細胞、神経細胞の細胞接着を促進します。
ビトロネクチン
糖タンパク質であり、細胞接着作用や進展作用を持ちます。さらに、補体系や凝固系にも関係しているタンパク質です。
ゼラチン
コラーゲンを熱変性させたものです。培養器材にコーティングすることで高い細胞接着能を持たせることができます。