キミカ 低エンドトキシン アルギン酸ナトリウム
アルギン酸はコンブやワカメなどの海藻に特有の天然多糖類で、 2種類のウロン酸分子「マンヌロン酸(M)」と「グルロン酸(G)」が直鎖上に重合した構造を持っております。本製品は、医療分野での研究開発にも利用できる低エンドトキシンタイプで、細胞包埋やインジェクタブルゲル、3Dバイオプリンタ用インクなど、用途に合わせた最適な物性を選択できるよう、粘度、ゲル強度(M/G比)等、多彩な品質の商品をラインアップしております。
製品概要
製品一覧
グレード名 | 粘度(1.0%水溶液、20℃) | 概算分子量(重量平均分子量) | M/G比* | エンドトキシン含有量 | |
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標準タイプ | AL10 | 5~20 mPa・S | 30万~55万 | 0.8~1.6 | ≦ 50 EU/g |
AL20 | 20~50 mPa・S | 55万~80万 | |||
AL100 | 50~200 mPa・S | 80万~150万 | |||
AL500 | 450~600 mPa・S | 215万~245万 | |||
高ゲル強度タイプ | ALG10 | 5~20 mPa・S | 30万~55万 | <0.8 | |
ALG20 | 20~50 mPa・S | 55万~80万 | |||
ALG100 | 50~200 mPa・S | 80万~150万 | |||
ALG300 | 250~400 mPa・S | 165万~205万 | |||
低ゲル強度タイプ | ALM20 | 20~50 mPa・S | 55万~80万 | >1.6 | |
ALM100 | 50~200 mPa・S | 80万~150万 |
* : アルギン酸の構成糖であるマンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)の比であり、ゲルの強度に影響を与えます。
M/G比が小さい(グルロン酸が多い)ほどゲルは硬くなり、M/G比が大きい(マンヌロン酸)が多いほど柔らかいゲルとなります。
特長
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水溶性で粘稠な溶液となり、Ca2+などの二価カチオンを加えることでゲル化
加熱や冷却をすることなく、イオン交換反応によって速やかに物性を変化させることができます。
固まったアルギン酸のゲルはゼラチンとは違い、加熱を行ったとしても溶けることなくゲルの形を維持します。※見えやすいように青色で着色しております。アルギン酸ナトリウムの水溶液は無色透明です。 -
ゲルの固さ・柔らかさを調節可能
アルギン酸はゲルの固さをコントロールできます。そのため、培養する細胞に適したゲルの固さにすることで、培養環境を任意に調整することが可能です。
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細胞や⽣体と相互作⽤しないため、⽣体内の様々な場所で利⽤可能
アルギン酸ゲルそのものに細胞は付着することができないため、付着性の細胞を培養することができません。しかし、アルギン酸の構造中にはカルボキシル基をもっており、このカルボキシル基の先に様々な化合物やタンパク質等を修飾することで細胞が接着することができる様になったりするなど、各研究者の目的に合致したオリジナルの素材を作るベースとしても有用です。
また、アルギン酸は生体内とは相互作用しないため、液体のまま体内に注入し、その注入後にゲル化するインジェクタブルゲルのような材料として利用ができます。引用元︓Acta Biomaterialia 100 (2019) 184–190
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安定した品質で、実験の再現性が向上
一般グレードのアルギン酸ナトリウムには原料である海藻などに由来するエンドトキシンが多く含まれていますが、キミカはアルギン酸ナトリウムの低エンドトキシン化技術を開発し、50 EU/g以下(1%水溶液で0.5 EU/mL)を安定的に達成する製法を確立しました。
アプリケーションデータ
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムを加えた培養液でマクロファージ様細胞※1を培養した際のTNFα産生量比較
培養液のみでマクロファージ様細胞を培養した条件と、低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムを1%加えた条件で同様にマクロファージ細胞を培養し、TNFα産生量の違いを比較した。
また、LPS(リポ多糖)でどちらの培地にも刺激を加えた際の、TNFα産生量も比較した。
結果
培養液(エンドトキシン含有量:0.04EU/mL)のみで培養した条件と培養液に低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムを1%(w/v)加えた条件ではTNFαの産生量に有意な差は認められなかった。一方、LPS(リポ多糖)で刺激を加えた場合、いずれの条件でもTNFαの産生が確認された。即ち、培養液へ1%の濃度で加えた低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムのエンドトキシンレベルはマクロファージ様細胞に炎症性応答を生じないレベルであることが確認された。
※1:THP-1細胞をPMA(Phorbol Myristate Acetate)を用いて、マクロファージ様に分化させたもの,Park EK, Jung HS, Yang HI, Yoo MC, Kim C, Kim KS. Optimized THP-1 differentiation is required for the detection of responses to weak stimuli. Inflamm Res. 2007;56(1):45-50. doi:10.1007/s00011-007-6115-5
使用方法
水溶液利用
アルギン酸ナトリウムは水溶性の高分子で、水に溶かすと粘りのあるコロイド溶液になります。
増粘剤、ゲル化剤などとしてアルギン酸ナトリウムをご利用いただく上で、まずアルギン酸ナトリウムが十分に溶解し、均一な水溶液になっていることが大切です。
アルギン酸ナトリウムは水和性の高い物質で、本来水に溶けやすい性質を持っています。しかし、水和性が高い分、水中でママコ(ダマ)を作りやすく、場合によっては非常に「溶かしにくい」と評価されてしまう場合があります。
アルギン酸の溶解性
アルギン酸ナトリウムは冷水・熱水によく溶けて、粘ちょうな水溶液となりますが、油脂及び有機溶媒には不溶です。
溶解性 | |||
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水、湯 | 油脂 | 有機溶媒 | |
アルギン酸ナトリウム | 〇溶ける | ✕溶けない | ✕溶けない |
溶解する液体の性質(pH、カチオン濃度など)によって、アルギン酸ナトリウムの溶解性は異なります。
アルギン酸類は、酸性の液体、多価カチオン(Ca2+など)を含む液体には溶かしにくいのでご注意ください(表2)。
溶解性 | |||
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酸性の液体 | アルカリ性の液体 | 多価カチオンを含む液体 | |
アルギン酸ナトリウム | ✕溶けない | 〇溶ける* | ✕溶けない |
※1 強アルカリ中では急激に粘度低下することがあります。
粉末利用
少量のアルギン酸ナトリウム粉末を計り取って、そのまま投入するだけでは、全体へ均一に混ざらないことがあります。
そのため、主原料の一部(10%程度)を取り分け、そこに必要量のアルギン酸ナトリウム粉末を投入して一次混合したのち、全体に混ぜ直すような手順を踏むことで、アルギン酸ナトリウムをより均一に混合することができます。
製品一覧
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標準タイプ(M/G比:0.8~1.6,日本語検査書付)
高ゲル強度タイプ(M/G比:<0.8、日本語検査書付)
低ゲル強度(M/G比:>1.6、日本語検査書付)
標準タイプ(M/G比:0.8~1.6,英語検査書付)
高ゲル強度タイプ(M/G比:<0.8、英語検査書付)
低ゲル強度(M/G比:>1.6、英語検査書付)
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