抗P2RY12, モルモット
Anti P2RY12, Guinea Pig
ドキュメント
製品概要
P2RY12(別名: P2Y12)はADP(またはATP)を受容するGPCRの一種で、Giタンパク質と共役しアデニル酸シクラーゼを抑制します。末梢組織では血小板に発現していますが、中枢神経系では恒常性ミクログリア(Homeostatic Microglia)特異的に発現することが知られています。またマクロファージにはほとんど発現していないことから、脳血管周囲などに存在するマクロファージとミクログリアを区別するために有用なマーカーです1)。なお、ADPは細胞傷害のシグナルとして用いられることから、ミクログリアのP2RY12は神経細胞の傷害などを受容する役割があると考えられています。
「抗P2RY12, モルモット」は、モルモットから得られたP2RY12に対するポリクローナル抗体です。免疫組織染色の多重染色に使用可能です。
抗体情報
抗体種 | ポリクローナル抗体 |
---|---|
抗原 | P2RY12の合成ペプチド (C末端相同配列) |
免疫動物 | モルモット |
組成 | PBS, 0.05% アジ化ナトリウム |
標識 | 未標識 |
交差性 | マウス※ |
アプリケーション | 免疫組織染色(凍結切片) 1:500-2,000 |
プロトコル(例)
- 1.灌流固定
- くえん酸ナトリウム/PBSによる脱血後、4% PFA灌流
- 2.後固定
- 4% PFA (~24時間)
- 3.スクロース置換
- 30% スクロース/PBS (4 ℃, 一晩~約2日程度)
- 4.凍結切片作製
- スクロース除去後、凍結包埋ブロックを作製し、クライオスタットによる30 μm厚スライス作製
- 5.ブロッキング
- 5% 正常ヤギ血清, 0.3% Triton X-100/PBS (4 ℃, 一晩)
- 6.一次抗体
- 抗P2RY12, モルモット(1:1,000), 1% 正常ヤギ血清, 0.3% TritonX-100/PBS (4 ℃, 一晩~2日)
- 7.洗浄
- 0.3% TritonX-100/PBS (5分×3回)
- 8.二次抗体
- Alexa Fluor® 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (1:500) (コードNo. 568-77901), 1% 正常ヤギ血清, 0.3% TritonX-100/PBS (室温, 2時間)
- 9.洗浄
- 0.3% TritonX-100/PBS (5分×3回)
- 10.封入
- マウント剤に封入し、4 ℃, 暗所保存
データ
性能データ
抗Iba1抗体との比較
マウス脳(凍結切片)について、抗P2RY12抗体、抗Iba1抗体を用いて免疫組織染色を行った。
<データ提供>
京都工芸繊維大学 応用生物学系 宮田先生
使用抗体
P2RY12
一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (コードNo. 011-28873, 本製品) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (コードNo. 568-77901)
Iba1
一次抗体: 抗Iba1,ウサギ(免疫細胞化学用) (コードNo. 019-19741) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 594-AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) (コードNo. 566-80511)
[結果]
P2RY12のシグナルとIba1のシグナルの共局在が確認された。
ミクログリアとマクロファージの識別
マウスの大脳皮質および延髄最後野の凍結切片において、抗P2RY12抗体(ミクログリアマーカー)、抗Iba1抗体(ミクログリア/マクロファージマーカー)、抗ラミニン抗体(脳血管 基底膜マーカー)を用いた三重染色を行い、細胞の局在を確認した。
<データ提供>
京都工芸繊維大学 応用生物学系 宮田先生
使用抗体
P2RY12
一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (コードNo. 011-28873, 本製品) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (コードNo. 568-77901)
Iba1
一次抗体: 抗Iba1,ウサギ(免疫細胞化学用) (コードNo. 019-19741) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 594-AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) (コードNo. 566-80511)
ラミニン
一次抗体: 抗ラミニン抗体 (ラット, 宮田先生の研究室にて自製) 1:200
二次抗体: DyLight™ 405-conjugated AffiniPure Goat Anti-Rat IgG (H+L) (メーカーコード 112-475-003)
[結果]
Iba1陽性細胞の内、脳実質に存在する細胞はP2RY12陽性であり、ミクログリアであると考えられる(矢じり)。一方、Iba1陽性/P2RY12陰性の細胞は脳血管 基底膜の周辺に存在しており、これらの細胞はマクロファージであることが推測される(矢印)。
抗Iba1抗体および抗TMEM119抗体との比較
マウス脳・脊髄(凍結切片)について、抗P2RY12抗体、抗Iba1抗体、抗TMEM119抗体を用いて免疫組織染色を行った。
使用抗体
P2RY12
一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (コードNo. 011-28873, 本製品) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 647 AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (コードNo. 566-78421)
Iba1
一次抗体: 抗Iba1, ヤギ (コードNo. 011-27991) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Goat IgG (H+L) (コードNo. 561-78351)
TMEM119
一次抗体: 他社 抗TMEM119抗体 (ウサギ) 1:100
二次抗体: Alexa Fluor® 594-AffiniPure Donkey Anti-Rabbit IgG (H+L) (コードNo. 561-78471)
[結果]
抗TMEM119抗体と比較して、当社の抗P2RY12抗体による染色では微細な突起構造をより明瞭に検出可能であった。
他社製品との比較
マウス脳・脊髄(凍結切片)について、当社および他社の抗P2RY12抗体を用いて免疫組織染色を行った。
使用抗体
本製品
一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (コードNo. 011-28873, 本製品) 1:1,000 (抗体濃度: 0.5 μg/mL)
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (コードNo. 562-78401)
他社製品
一次抗体: 他社 抗P2RY12抗体 (ウサギ) 1:200 (抗体濃度: 0.5 μg/mL)
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Rabbit IgG (H+L) (コードNo. 567-78451)
[結果]
従来品では神経細胞と思われる非特異的なシグナルが観察された(矢じり)。一方、本製品では非特異的なシグナルはほとんど認められなかった。
アプリケーションデータ
免疫組織染色
マウス
部位 海馬 (CA2)
サンプル 凍結切片
希釈率 1:200
備考 青色はDAPI
F大学 I先生
部位 前頭前野
サンプル 凍結切片
希釈率 1:900
備考 青色はDAPI
東北大学 精神神経学分野 兪先生
部位 大脳皮質
サンプル 凍結切片
希釈率 1:10,000
備考 青色はDAPI
九州大学 大学院医学研究院 神経解剖学分野
山田先生
部位 海馬
サンプル 凍結切片
希釈率 1:500
お茶の水女子大学 ヒューマンライフサイエンス研究所
橋本先生
部位 海馬
サンプル 凍結切片
希釈率 1:1,000
備考 賦活化処理 (くえん酸ナトリウムバッファー)
お茶の水女子大学 ヒューマンライフサイエンス研究所
橋本先生
部位 正中隆起
サンプル 凍結切片
希釈率 1:1,000
旭川医科大学 解剖学講座 機能形態学分野
古部先生
部位 脊髄
サンプル 凍結切片
希釈率 1:2,000
九州大学 大学院薬学研究院 薬理学分野
津田先生、河野先生
部位 網膜
サンプル パラフィン切片 (FFPE)
希釈率 1:400
備考 賦活化処理 (TE buffer, pH9.0, 圧力鍋加圧3分)
川崎医科大学 病態代謝学教室
石塚先生
ラット
部位 大脳皮質
サンプル 凍結切片
希釈率 1:500
備考 賦活化処理 (pH6.0 くえん酸バッファー, 75℃, 20分)
青色はDAPI
京都府立医科大学 生体構造科学部門 小泉先生
ご提供いただいたデータに関するご質問はお答えできかねますので、あらかじめご了承ください。
ユーザーボイス
研究者の皆様からご提供いただいた評価アンケートの結果をご報告いたします。
評価コメント(原文)
評価コメントの公表に同意いただいた方全てのコメントを掲載しております。
総合評価 | ご所属 | お名前 | 評価コメント |
---|---|---|---|
満足 | 旭川医科大学 解剖学講座 機能形態学分野 |
古部瑛莉子 先生 | ミクログリアの細かな突起が良く染まり、良い。また、細胞体も染まる。 |
満足 | 川崎医科大学 病態代謝学教室 |
石塚佑太 先生 | マウス網膜のパラフィン包埋切片を抗Iba1抗体(WAKO #019-19741 ウサギ抗体)と共染色したが、どちらもミクログリア特異的な染色が観察された。 |
満足 | 九州大学 大学院医学研究院 神経解剖学分野 |
山田純 先生 | 力価も高く、Iba1やTMEMとの共存が確認できた |
満足 | 京都府立医科大学 生体構造科学部門 |
小泉崇 先生 | ・使用サンプルはラット脳 ・賦活をしないと染まらなかった ・賦活をするとミクログリアは染まるが中枢性マクロファージは染まらなかった。 |
満足 | F大学 | I先生 | 特異的に染色できる印象です。 |
満足 | O大学 | H先生 | 脳の切片を使用した免疫染色に使用させていただきました。 非常に特異性が高く、普段使用している染色プロトコルで綺麗な染色像を得ることができました。 これまで、hostがrabbitかgoatのP2RY12抗体を使用させていただき、rabbit hostのものは特異性が高いものの他の抗体との多重染色をするのにrabbit hostだと組み合わせが難しく、goat hostのものは特異性はあるものの発色や蛍光が薄く顕微鏡撮影時に苦労しており、他のhostで良いP2RY12抗体があればと思っていました。 今回、guinea pig hostということで、他の抗体との多重染色でも組み合わせやすい上に、特異性が高く発色や蛍光もはっきりと出るので、とても使いやすい商品でした。 |
やや満足 | 九州大学 大学院薬学研究院 薬理学分野 |
河野敬太 先生 | 組織染色に使用できるが、従来使用していた他社製品には若干染色性が劣る(高濃度でノンスぺがでる)。 |
やや不満 | 東京大学大学院 薬学系研究科 機能病態学教室 |
高鳥翔 先生 | アルツハイマー病モデルマウス凍結脳切片に対し間接蛍光抗体法により用いたがIBA1抗体染色像と一致する染色が得られなかった。 |
参考文献
- Butovsky, O. et al.: Neurosci., 17(1), 131(2014).
Identification of a unique TGF-β–dependent molecular and functional signature in microglia - Keren-Shaul, H. et al.: Cell, 169(7), 1276(2017).
A unique microglia type associated with restricting development of Alzheimer’s disease - Maeda, J. et al.: Brain Commun., 3(1), fcab011(2021).
Distinct microglial response against Alzheimer's amyloid and tau pathologies characterized by P2Y12 receptor
FAQ
抗体について
- 抗原はどのようなものですか?
- P2RY12の合成ペプチド(C末端配列相同)です。具体的な配列は公開しておりません。
プロトコルについて
- どのような二次抗体を使用すれば良いですか。
- 当社では以下の二次抗体で実績があります。
Alexa Fluor® 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (Jackson ImmunoResearch社, コードNo. 568-77901)
Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (Jackson ImmunoResearch社, コードNo. 562-78401)
Alexa Fluor® 647 AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (Jackson ImmunoResearch社, コードNo. 566-78421)
アプリケーションについて
- どのような動物に使用できますか。
- マウスに対して使用できることを確認しています。また当社では実績がないものの、ラットでの染色実績もございます。詳細は「データ」をご参照ください。その他、動物種については確認しておりません。
- どのような組織で染色できますか。
- 当社では以下の組織・部位で染色した実績がございます。
- 大脳皮質
- 海馬
- 視床下部
- 小脳
- 嗅球
- 脊髄
- 前頭前野 (大脳)
- 延髄最後野
- 正中隆起 (視床下部)
- 網膜
- 恒常性ミクログリア以外のミクログリアは染色可能ですか?
- P2RY12は恒常性ミクログリアのマーカーであり、疾患関連ミクログリア(DAM: Disease-Associated Microglia)やアルツハイマー病モデルマウスではその発現量が低下することが知られています2-3)。これらのミクログリアでは発現量の低下により、染色像が得られない可能性があります。
トラブルシューティングについて
- 免疫組織染色のバックグラウンドが高くなってしまいます。
- バックグラウンドが高くなる場合は、凍結切片作製後にグリシン処理(25 mM グリシン/PBSに約20分浸漬)をお試しください。サンプル中のアルデヒド基を不活化し、バックグランドを抑制できる可能性があります。
概要・使用例
概要 | P2RY12(別名:P2Y12)は主に血小板に発現する adenosine 5′-diphosphate(ADP)受容体であり,プリン作動性G蛋白質共役受容体(G protein-coupled receptor; GPCR)です。 中枢神経系ではミクログリア特異的に発現しており、ミクログリアのマーカーとして使用されます。 本品はモルモットから得られたポリクローナル抗体です。 抗原:P2RY12の合成ペプチド(C末端相同配列) 種交差性:マウス(他動物では未確認) アプリケーション:免疫組織化学(1:500~2,000) |
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使用例 | <マウス脳凍結切片の免疫染色例> 灌流固定 :0.1%クエン酸ナトリウムPBSによる脱血後、4%PFA灌流 後固定 :4%PFA(24時間) スクロース置換:30%スクロースPBS(4 ℃, 一晩~2日程度) 凍結切片作製 :スクロース除去後、凍結包埋ブロックを作製し、クライオスタットによる30 μm厚スライス作製 ブロッキング :5%正常ヤギ血清, 0.3%TritonX-100/PBS(4 ℃, 一晩) 一次抗体 :抗P2RY12, モルモット(1:1,000), 1%正常ヤギ血清, 0.3%TritonX-100/PBS(4 ℃, 一晩~2日) 洗浄 :0.3% TritonX-100/PBS(5分×3回) 二次抗体 :Alexa Fluor (R) 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (1:500), 1%正常ヤギ血清, 0.3%TritonX-100/PBS(室温, 2時間) 洗浄 :0.3% TritonX-100/PBS(5分×3回) 封入 :4 ℃, 暗所保存 |
使用上の注意 | 凍結融解の繰り返しは避けてください。 |
物性情報
外観 | 液体 |
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濃度 | たん白濃度:0.45~0.65 mg/mL |
「物性情報」は参考情報でございます。規格値を除き、この製品の性能を保証するものではございません。
本製品の品質及び性能については、本品の製品規格書をご確認ください。
なお目的のご研究に対しましては、予備検討を行う事をお勧めします。
製造元情報
別名一覧
- 抗P2Y12, モルモット
- 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
- 製品規格・包装規格の改訂が行われた場合、画像と実際の製品の仕様が異なる場合があります。
- 掲載されている製品について
- 【試薬】
- 試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
- 試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
- 【医薬品原料】
- 製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
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