抗P2RY12抗体
P2RY12は主にADPをリガンドとするGタンパク質共役型受容体(GPCR)です。中枢神経系ではミクログリア特異的に発現しており、神経科学分野ではミクログリアのマーカー分子として利用されています。マクロファージにはほとんど発現していないことから、脳血管周囲などに存在するマクロファージとミクログリアを区別する際にも有用なマーカーです。「抗P2RY12, モルモット」はモルモットから得られたP2RY12に対するポリクローナル抗体です。免疫組織染色において抗Iba1抗体などのマーカー抗体と共染色することが可能です。
P2RY12とは?
P2RY12は主にADPをリガンドとするGタンパク質共役型受容体(GPCR)です。ADPが結合するとGiタンパク質と共役して、アデニル酸シクラーゼを抑制します。プリン受容体はアデノシンを受容するP1受容体とP2受容体があり、P2受容体はリガンド依存性イオンチャネルであるP2X受容体と、GPCRであるP2Y受容体に分けられます。さらにP2Y受容体は複数のサブタイプに分類され、P2RY12はそのうちの一つです。なおP2RY12は、P2Y12やP2Y12、P2Y12Rなど表記されることもあります。
P2RY12は、中枢神経系ではミクログリア特異的に発現しており、神経科学分野ではミクログリアのマーカー分子として利用されています。これまでの研究からミクログリアはP2RY12によるADPの受容を通じて、脳神経の損傷を感知しているのではないかと考えられています。なお末梢組織では血小板に発現しており、血小板凝集や血液凝固に関与しています。
前述の通り、P2RY12はミクログリアに発現していますが、マクロファージにはほとんど発現していないことが報告されています1)。そのため、脳血管周囲などに存在するマクロファージとミクログリアを区別する際には、ミクログリアとマクロファージのマーカー抗体である抗Iba1抗体とミクログリア特異的なマーカー抗体である抗P2RY12抗体を用いた共染色が有効です。ただし、P2RY12は恒常性ミクログリア(従来の「静止型ミクログリア」や「Resting microglia」と呼ばれる状態)に発現していますが、疾患関連ミクログリア(DAM: Disease-Associated Microglia)やアルツハイマー病モデルマウスのミクログリアなどでは発現が低下することが報告されています2-3)。
抗P2RY12, モルモット
「抗P2RY12, モルモット」はモルモットから得られたP2RY12に対するポリクローナル抗体です。免疫組織染色の多重染色に使用可能です。
抗体情報
抗体種 | ポリクローナル抗体 |
---|---|
抗原 | P2RY12の合成ペプチド (C末端相同配列) |
免疫動物 | モルモット |
組成 | PBS, 0.05% アジ化ナトリウム |
標識 | 未標識 |
交差性 | マウス※ |
アプリケーション | 免疫組織染色(凍結切片) 1:500-2,000 |
性能データ
抗Iba1抗体との比較
マウス脳(凍結切片)について、抗P2RY12抗体、抗Iba1抗体を用いて免疫組織染色を行った。
<データ提供>
京都工芸繊維大学 応用生物学系 宮田先生
使用抗体
- P2RY12
- 一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (製品コード 011-28873) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (製品コード 568-77901) - Iba1
- 一次抗体: 抗Iba1,ウサギ(免疫細胞化学用) (製品コード 019-19741) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 594-AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) (製品コード 566-80511)
[結果]
P2RY12のシグナルとIba1のシグナルの共局在が確認された。
ミクログリアとマクロファージの識別
マウスの大脳皮質および延髄最後野の凍結切片において、抗P2RY12抗体(ミクログリアマーカー)、抗Iba1抗体(ミクログリア/マクロファージマーカー)、抗ラミニン抗体(脳血管 基底膜マーカー)の三重染色を行い、細胞の局在を確認した。
<データ提供>
京都工芸繊維大学 応用生物学系 宮田先生
使用抗体
- P2RY12
- 一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (製品コード 011-28873) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Goat Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (製品コード 568-77901) - Iba1
- 一次抗体: 抗Iba1,ウサギ(免疫細胞化学用) (製品コード 019-19741) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 594-AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) (製品コード 566-80511) - ラミニン
- 一次抗体: 抗ラミニン抗体 (ラット, 宮田先生の研究室にて自製) 1:200
二次抗体: DyLight™ 405-conjugated AffiniPure Goat Anti-Rat IgG (H+L) (メーカーコード 112-475-003)
[結果]
Iba1陽性細胞の内、脳実質に存在する細胞はP2RY12陽性であり、ミクログリアであると考えられる(矢じり)。一方、Iba1陽性/P2RY12陰性の細胞は脳血管 基底膜の周辺に存在しており、これらの細胞はマクロファージであることが推測される(矢印)。
抗Iba1抗体および抗TMEM119抗体との比較
マウス脳・脊髄(凍結切片)について、抗P2RY12抗体、抗Iba1抗体、抗TMEM119抗体を用いて免疫組織染色を行った。
使用抗体
- P2RY12
- 一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (製品コード 011-28873) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 647 AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (製品コード 566-78421) - Iba1
- 一次抗体: 抗Iba1, ヤギ (製品コード 011-27991) 1:1,000
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Goat IgG (H+L) (製品コード 561-78351) - TMEM119
- 一次抗体: 他社 抗TMEM119抗体 (ウサギ) 1:100
二次抗体: Alexa Fluor® 594-AffiniPure Donkey Anti-Rabbit IgG (H+L) (製品コード 561-78471)
[結果]
抗TMEM119抗体と比較して、当社の抗P2RY12抗体による染色では微細な突起構造をより明瞭に検出可能であった。
他社製品との比較
マウス脳・脊髄(凍結切片)について、当社および他社の抗P2RY12抗体を用いて免疫組織染色を行った。
使用抗体
- 本製品
- 一次抗体: 抗P2RY12, モルモット (製品コード 011-28873) 1:1,000 (抗体濃度: 0.5 μg/mL)
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG (H+L) (製品コード 562-78401) - 他社製品
- 一次抗体: 他社 抗P2RY12抗体 (ウサギ) 1:200 (抗体濃度: 0.5 μg/mL)
二次抗体: Alexa Fluor® 488 AffiniPure Donkey Anti-Rabbit IgG (H+L) (製品コード 567-78451)
[結果]
従来品では神経細胞と思われる非特異的なシグナルが観察された(矢じり)。一方、当社の抗P2RY12抗体では非特異的なシグナルはほとんど認められなかった。
その他のアプリケーションデータやユーザーボイスは製品詳細ページに掲載しています。
参考文献
- Butovsky, O. et al.: Neurosci., 17(1), 131(2014).
Identification of a unique TGF-β–dependent molecular and functional signature in microglia - Keren-Shaul, H. et al.: Cell, 169(7), 1276(2017).
A unique microglia type associated with restricting development of Alzheimer’s disease - Maeda, J. et al.: Brain Commun., 3(1), fcab011(2021).
Distinct microglial response against Alzheimer's amyloid and tau pathologies characterized by P2Y12 receptor
製品一覧
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抗P2RY12, モルモット (ポリクローナル抗体)
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