rBC2LCN-PE23
rBC2LCN(AiLecS1) はBurkholderia cenocepacia 由来のレクチンであるBC2L-CのN末端ドメインを大腸菌で発現させた組換え体レクチンです。rBC2LCNは未分化ヒトES細胞・ヒトiPS細胞の細胞表面に存在する糖鎖に高い特異性を持っています。
本品は、緑膿菌由来外毒素の触媒ドメイン(PE23)をrBC2LCNのC末端に融合させた組換えタンパク質です。rBC2LCN-PE23は細胞内に取り込まれた後、タンパク質合成を阻害して細胞死を引き起こすことでヒトES細胞・ヒトiPS細胞を殺傷します。殺傷された細胞は培養容器より浮遊するので、培地交換を行うことで、除去することが可能です。
本品を使用することで、ヒトiPS細胞やヒトES細胞を用いた再生医療の安全性向上が期待されます。
特長
- 未分化ヒトES細胞・ヒトiPS細胞を選択的に除去可能
- 細胞分散せず、培養液にそのまま添加するのみで使用可能
- 大量の細胞や細胞シートなどにも適用可能
製品概要
- 無菌試験済み(0.22μmフィルターでろ過滅菌)
- 0.1×PBS(-)溶液
使用方法
- ヒトES細胞・ヒトiPS細胞から分化誘導した細胞を準備する。
- 培養液に終濃度10μg/mlとなるようにrBC2LCN-PE23を添加する(濃度は製品ラベルに記載)。
- 37℃、5%CO2下でインキュベートする(細胞を観察し、残存する未分化細胞が除去される時間を設定してください)。
- 分化誘導した細胞に適した培地で培養を継続する。
ヒトiPS/ES細胞の除去
ヒトiPS細胞の除去
ヒトiPS細胞201B7株の培養液に終濃度が1、10μg/mlとなるようにrBC2LCN-PE23を添加し、24時間処理した。生細胞の細胞質を緑色に、死細胞の核を赤色に染色した。rBC2LCN-PE23を培養液に添加していない(0μg/ml)場合は、ほとんどのヒトiPS細胞は接着し、緑色に染まっており、ほとんどのヒトiPS細胞が生きていることが分かる。一方、10μg/mlのrBC2LCN-PE23を培養液に添加した場合は、接着している細胞はほぼ無く、ほとんどのヒトiPS細胞が浮遊し、除去された。
<データご提供 国立開発研究法人産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門 舘野浩章先生>
ヒトES細胞の除去
ヒトES細胞WA01株の培養液に終濃度が10μg/mlとなるようにrBC2LCN-PE23を添加し、0、6、24時間処理した。生細胞の細胞質を緑色に、死細胞の核を赤色に染色した。rBC2LCN-PE23添加前は、ほとんどのヒトES細胞は接着し、緑色に染まっており、ほとんどのiPS細胞が生きていることが分かる。10μg/mlのrBC2LCN-PE23を培養液に添加して6時間後は、細胞の形態が変化し、赤色に染色された死細胞数が増加した。さらに、24時間後には接着している細胞はほぼ無く、ほとんどのヒトiPS細胞が浮遊し、除去された。
<データご提供 国立開発研究法人産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門 幹細胞工学研究グループ 小沼泰子先生、伊藤弓弦先生>
ヒトiPS細胞およびヒトES細胞の選択的除去
ヒトiPS細胞201B7株とヒト線維芽細胞を2日間混合培養した後、培養液に終濃度が10μg/mlとなるようにrBC2LCN-PE23を添加した。添加24時間後、ヒトiPS細胞のみが選択的に殺傷され、培養液中に浮遊し、除去できた。 また、ヒトES細胞WA01株についても同様にヒト線維芽細胞と混合培養し、同様にrBC2LCN-PE23を添加した。結果、添加24時間後には、ヒトES細胞のみが選択的に殺傷され、浮遊し、除去できた。
<データご提供 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門 舘野浩章先生、幹細胞工学研究グループ 小沼泰子先生、伊藤弓弦先生>
正常ヒト線維芽細胞への影響
ヒトiPS細胞201B7株の培養液には終濃度10μg/mlとなるように、また、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培養液には終濃度5, 10, 20, 30, 50μg/mlとなるようにrBC2LCN-PE23を添加し、48時間後の細胞数を調べた。ヒトiPS細胞はほぼ殺傷除去されており、生細胞はほとんど認められなかった。一方、NHDFではrBC2LCN-PE23を添加しても死細胞はほぼ認められなかった。rBC2LCN-PE23はNHDFに対して殺傷能を持たないことが分かった(0μg/ml rBC2LCN-PE23のときの生細胞数を1とした)。
間葉系幹細胞分化でのヒトiPS細胞の除去
疾患患者由来ヒトiPS細胞を間葉系幹細胞に分化させ、ヒトiPS細胞と間葉系幹細胞が混在している培養液に、終濃度10μg/mlとなるようにrBC2LCN-PE23を添加した。添加24時間後にはヒトiPS細胞が殺傷されて、コロニーが除去され始めた。そして、添加48時間後にはヒトiPS細胞はほとんど除去された。一方、間葉系幹細胞は、rBC2LCN-PE23添加48時間後でもその影響を受けることなく、細胞が生存していた。よって、rBC2LCN-PE23は間葉系幹細胞に対して殺傷能を持たないことが分かった。
<データご提供 東京慈恵会医科大 再生医学研究部 岡野ジェイムス洋尚先生>
参考文献
- Tateno, H., Onuma, Y., Ito Y, Minoshima, F., Saito, S., Shimizu, M., Aiki, Y., Asashima, M. and Hirabayashi.: Stem Cell Reports., 4, 811, (2015).
- Masuda, S., Miyagawa, S., Fukushima, S., Sougawa, N., Okimoto, K., Tada, C., Saito, A. and Sawa, Y.: Protein Cell, 6, 469 (2015).
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