超低毒性幹細胞標識用量子ドット

Fluclair™

本製品は、幹細胞などの標識に使用できる超低毒性の量子ドットです。

量子ドットは、FITC、Cyなどの蛍光色素やGFPなどの蛍光タンパク質よりも高輝度で長寿命の蛍光物質です。Fluclair™は、コア領域にカドミウムを含まないために、これまでのカドミウムを含む量子ドットと比較して、極めて細胞毒性が低いことが特長です。そのため、細胞内イメージングやFluclair™を導入した細胞の移植後のin vivoイメージングを行うことができます。

再生医療においては、移植した幹細胞や、幹細胞から分化誘導された分化細胞の患部への生着が治療効果に大きく反映されます。その移植細胞の生体内動態、組織・臓器への集積・生着効率を正確に判断するために、本製品のような、細胞毒性の低く高輝度な蛍光イメージング試薬が非常に有用です。


【総説】幹細胞標識用超低毒性量子ドット Fluclair™試薬の開発
名古屋大学 大学院工学研究科 生命分子工学専攻、名古屋大学 先端ナノバイオデバイス研究センター 湯川 博 先生、馬場 嘉信 先生

特長

  • 細胞に対する毒性が低い
  • 高輝度
  • 長寿命

製品情報

  • 濃度:7~9 μmol/L(製品ラベルに表示)
  • 溶媒:水
  • 発光ピーク波長
    Fluclair™ Green:525 nm
    Fluclair™ Yellow:585 nm
    Fluclair™ Red:670 nm

データ

Fluclair™ Yellowを、膜透過性ペプチド(オクタアルギニン)を用いて脂肪組織由来幹細胞内に導入し、蛍光顕微鏡を用いて、脂肪組織由来幹細胞に導入されたFluclair™ Yellowを観察した。

データ提供:国立大学法人名古屋大学大学院 工学研究科 湯川 博 先生

使用方法1-1:導入試薬として SFA P-reagent を使用する時

準備試薬

  • Fluclair™ (8.0 μmol/L)
  • SFA P-reagent (以下、SFA-P)
  • 使用培地 (FBS 2%以下でご使用下さい;FBSが高濃度の場合、Fluclair™が沈殿する可能性があります。)

調製方法

Fluclair™ + SFA-P溶液 1 mL (Fluclair™濃度 192 nmol/L) 調製例を示す。

① Fluclair™溶液の調製
  • FBS濃度 2%以下にした使用培地 476 µL と Fluclair™ 24 µLをエッペンチューブ等に計り取り、軽くピペッティングして撹拌する。
② SFA-P溶液の調製
  • FBS濃度 2%以下にした使用培地 404 µL と SFA-P 96 µLをエッペンチューブ等に計り取り、軽くピペッティングして撹拌する。
③ Fluclair™+SFA-P溶液の調製
  • ①と②を15 mL遠沈管等で混合して、軽くピペッティングする。
  • アルミホイル等で遮光して、室温にて15分間静置する。
  • 使用する濃度に使用培地(FBS通常濃度)で希釈して、調製完了。

調製フロー

Fluclair™ 濃度調製例

①Fluclair™+培地 ②SFA-P+培地 ③Fluclair™濃度
(①+②)
培地で希釈後のFluclair™濃度
※()内は培地添加後の液量
24 µL + 476 µL 96 µL + 404 µL 192 nmol/L (1 mL) 64 nmol/L (3 mL) 32 nmol/L (6 mL) 16 nmol/L (12 mL)
36 µL + 964 µL 144 µL + 856 µL 144 nmol/L (2 mL) 48 nmol/L (6 mL) 24 nmol/L (12 mL) 12 nmol/L (24 mL)
24 µL + 976 µL 96 µL + 904 µL 96 nmol/L (2 mL) 32 nmol/L (6 mL) 16 nmol/L (12 mL) 8 nmol/L (24 mL)
24 µL + 1,976 µL 96 µL + 1,904 µL 48 nmol/L (4 mL) 16 nmol/L (12 mL) 8 nmol/L (24 mL) 4 nmol/L (48 mL) ※1
12 µL + 988 µL 48 µL + 952 µL 48 nmol/L (2 mL) 16 nmol/L (6 mL) 8 nmol/L (12 mL) 4 nmol/L (24 mL)
6 µL + 994 µL 24 µL + 976 µL 24 nmol/L (2 mL) 8 nmol/L (6 mL) 4 nmol/L (12 mL) 2 nmol/L (24 mL)
3 µL + 997 µL 12 µL + 988 µL 12 nmol/L (2 mL) 4 nmol/L (6 mL) 2 nmol/L (12 mL) 1 nmol/L (24 mL)
2 µL + 998 µL 8 µL + 992 µL 8 nmol/L (2 mL) 2.7 nmol/L (6 mL) 1.3 nmol/L (12 mL) 0.67 nmol/L (24 mL)
1 µL + 999 µL 4 µL + 996 µL 4 nmol/L (2 mL) 1.3 nmol/L (6 mL) 0.67 nmol/L (12 mL) 0.34 nmol/L (24 mL)
0.5 µL + 499.5 µL 2 µL + 498 µL 4 nmol/L (1 mL) 1.3 nmol/L (3 mL) 0.67 nmol/L (6 mL) 0.34 nmol/L (12 mL) ※2

※1 Fluclair™ と SFA-Pとの complex を作製するのに、大量にFluclair™+SFA-P溶液を調製したい場合は、仕込み量の培地量を増やすことも可能です。ただし、※2にも記すように、希釈し過ぎないようにご注意下さい。

※2 Fluclair™ と SFA-Pとの complex を作製するのに、希薄溶液は好ましくないため、Fluclair™添加量を1 µL未満にする 場合は、培地量と合わせて500 µLになるようにして下さい。

使用方法1-2:導入試薬としてR8 (オクタアルギニン) を使用する時

準備試薬

  • Fluclair™ (8.0 μmol/L)
  • R8溶液 (8.0 mmol/L)
  • 使用培地 (FBS 2%以下でご使用下さい;FBSが高濃度の場合、Fluclair™が沈殿する可能性があります。)

調製方法

Fluclair™ + SFA-P溶液 1 mL (Fluclair™濃度 192 nmol/L)調製例を示す。

① Fluclair™溶液の調製
  • FBS濃度 2%以下にした使用培地 476 µL と Fluclair™ 24 µLをエッペンチューブ等に計り取り、軽くピペッティングして撹拌する。
② R8溶液の調製
  • R8を水に 8.0 mmol/L となるように溶解し、0.2 µmフィルターでろ過する。
  • FBS濃度 2%以下にした使用培地 476 µL と R8溶液 24 µLをエッペンチューブ等に計り取り、軽くピペッティングして撹拌する。
③ Fluclair™+R8溶液の調製
  • ①と②を15 mL遠沈管等で混合して、軽くピペッティングする (Fluclair™+R8溶液 96 nmol/L 1 mL 調製)。
  • アルミホイル等で遮光して、室温にて15分間静置する。
  • 使用する濃度に使用培地 (FBS通常濃度) で希釈して、の調製完了。

調製フロー

Fluclair™濃度調製例

①Fluclair™+培地 ②R8+培地 ③Fluclair™濃度
(①+②)
培地で希釈後のFluclair™濃度
※()内は培地添加後の液量
24 µL + 476 µL 24 µL + 476 µL 192 nmol/L (1 mL) 64 nmol/L (3 mL) 32 nmol/L (6 mL) 16 nmol/L (12 mL)
36 µL + 964 µL 36 µL + 964 µL 144 nmol/L (2 mL) 48 nmol/L (6 mL) 24 nmol/L (12 mL) 12 nmol/L (24 mL)
24 µL + 976 µL 24 µL + 976 µL 96 nmol/L (2 mL) 32 nmol/L (6 mL) 16 nmol/L (12 mL) 8 nmol/L (24 mL)
24 µL + 1976 µL 24 µL + 1976 µL 48 nmol/L (4 mL) 16 nmol/L (12 mL) 8 nmol/L (24 mL) 4 nmol/L (48 mL) ※1
12 µL + 988 µL 12 µL + 988 µL 48 nmol/L (2 mL) 16 nmol/L (6 mL) 8 nmol/L (12 mL) 4 nmol/L (24 mL)
6 µL + 994 µL 6 µL + 994 µL 24 nmol/L (2 mL) 8 nmol/L (6 mL) 4 nmol/L (12 mL) 2 nmol/L (24 mL)
3 µL + 997 µL 3 µL + 997 µL 12 nmol/L (2 mL) 4 nmol/L (6 mL) 2 nmol/L (12 mL) 1 nmol/L (24 mL)
2 µL + 998 µL 2 µL + 998 µL 8 nmol/L (2 mL) 2.7 nmol/L (6 mL) 1.3 nmol/L (12 mL) 0.67 nmol/L (24 mL)
1 µL + 999 µL 1 µL + 999 µL 4 nmol/L (2 mL) 1.3 nmol/L (6 mL) 0.67 nmol/L (12 mL) 0.34 nmol/L (24 mL)
0.5 µL + 499.5 µL 0.5 µL + 499.5 µL 4 nmol/L (1 mL) 1.3 nmol/L (3 mL) 0.67 nmol/L (6 mL) 0.34 nmol/L (12 mL) ※2

※1 Fluclair™ と SFA-Pとの complex を作製するのに、大量にFluclair™+SFA-P溶液を調製したい場合は、仕込み量の培地量を増やすことも可能です。ただし、※2にも記すように、希釈し過ぎないようにご注意下さい。

Fluclair™ と SFA-Pとの complex を作製するのに、希薄溶液は好ましくないため、Fluclair™添加量を1 µL未満にする 場合は、培地量と合わせて500 µLになるようにして下さい。

使用法2:細胞ラベリング方法

調製方法

④ 対象の培養細胞の培養液を捨てて、③で作製した Fluclair™+SFA-P溶液 (あるいは R8溶液) を添加する。
⑤ 4~24時間、培養条件下でインキュベートする。
⑥ インキュベート後は、新しい培地、もしくはD-PBSで2回以上洗浄してから使用する。

  • ※3 培養容器による添加量の参考データ (細胞はコンフルエント状態を想定)

    • 培養容器 添加量
      T75フラスコ 15 mL
      T25フラスコ 5 mL
      6well 2.0 mL
    • 培養容器 添加量
      12 well 1.0 mL
      24well 500 µL
      96 well 100 µL
  • ※4 細胞によっては取り込み時間に違いがあるため、導入効率が低い時は最大24時間インキュベートする。

参考文献

  1. Ogihara, Y., Yukawa, H., Kameyama, T., Nishi, H., Onoshima, D., Ishikawa, T., Torimoto, T. and Baba, Y.: Sci. Rep., 7, 40047 (2017).
  2. Yukawa, H. and Baba, Y.: Anal. Chem., 89, 2671 (2017).
  3. Yukawa, H., Suzuki, K., Kano, Y., Yamada, T., Kaji, N., Ishikawa, T. and Baba ,Y.: Cell Med., 6, 83 (2013).
  4. Yukawa, H., Mizufune, S., Mamori, C., Kagami, Y., Oishi, K., Kaji, N., Okamoto, Y., Takeshi, M., Noguchi, H., Baba, Y., Hamaguchi, M., Hamajima, N. and Hayashi, S.: Cell Transplant., 18, 591 (2009).
  • 評価用サンプル(約8μmol/L , 250 µL)をご用意しています。
    ご希望の方は、件名を「Fluclair サンプル希望」とし、メール(ffwk-labchem-tec@fujifilm.com)にてお申込みください。

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導入用試薬

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