同仁化学 トータルROS検出キット

ROS (Reactive oxygen species) は主にミトコンドリアでのATP合成過程で発生する反応性の高い酸素種です。情報伝達のシグナル物質としての役割や、マクロファージなどの免疫機能の一部として重要である一方、DNAやタンパク質に対し酸化剤として作用することで様々な疾病や老化を引き起こす要因となります。

最近の研究では、二価鉄を触媒とし誘発するフェントン反応によって起こる新しい細胞死 (フェロトーシス) の分野においてもROSが注目されてきており、ROSを検出する意義はますます高まってきています1)。ROSを測定する色素としてDCFH-DAが広く使われますが、感度が低くバックグラウンド蛍光との差が明瞭ではありません。本キットはROSを高感度に検出でき、キット付属のBufferを使って染色することで、より細胞にダメージを与えにくい状態でROSを検出することができます。

既存色素との比較表

同仁化学 T社
メーカーコード R253 R252 - -
品名 ROS Assay Kit
-Photo-oxidation DCFH-DA-
ROS Assay Kit
-Highly Sensitive DCFH-DA
D色素 C色素
耐光性
※観察光による自動酸化

最も耐光性が高い
×
観察光による自動酸化あり
×
観察光による自動酸化あり

観察光による自動酸化あり
固定化操作
固定化可能
×
固定化可能
×
固定化可能

固定化可能
感度
(細胞染色時)

既存色素に比べ感度が高い

最も感度が高い

感度低

感度低

トータルROS検出キット ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA-

本キットはROSを高感度に検出でき、キット付属のBufferを使って染色することで、より細胞にダメージを与えにくい状態でROSを検出することができます。

製品特長

  • トータルROSを高感度に検出
  • 蛍光顕微鏡、プレートリーダー、フローサイトメーターで検出可能

既存試薬との比較

活性酸素種に対する反応選択性

Highly Sensitive DCFH-DAは活性酸素種 (ROS) に対して、DCFH-DAと同様の反応性を示します。
また、DCFH-DAと同様の蛍光特性 (λex:505 nm、λem:525 nm) を持つため、同じ励起・蛍光波長での検出が可能です。

検出感度の比較

過酸化水素処理したHeLa細胞 (1 x 104 cells/mL) をDCFH-DAまたはROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA-で染色し、細胞内ROSの検出能を比較しました。 結果、いずれの検出装置においてもROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA-ではDCFH-DAよりも高感度に細胞内のROSを検出できました。

  • ①蛍光顕微鏡での検出

    (スケールバー:50 µm)
    ※Highly Sensitive DCFH-DAの観察条件で比較

    検出条件

    Ex. 488 nm / Em. 500 - 560 nm
    細胞種:HeLa細胞

  • ②蛍光プレートリーダーでの検出

    検出条件

    Ex. 490 - 520 nm / Em. 510 - 540 nm
    細胞種:HeLa細胞

③フローサイトメーターでの検出

検出条件

FITC laser gain:215 V
細胞種:HeLa細胞

実験例

①エラスチン処理した細胞の内在性ROS検出

エラスチン処理により、シスチン / グルタミン酸トランスポーター (xCT) を阻害すると、鉄依存性の細胞死であるフェロトーシスが誘導されることが知られています。エラスチン処理した A549 細胞において、細胞内ROSの変化をイメージングしたところ、エラスチン処理によってROSが増加する結果が得られました。

  • (スケールバー:50 µm)

    検出条件

    細胞内ROS (Highly Sensitive DCFH-DA Dye): Ex. 488 nm / Em. 500 - 560 nm

実験操作
  1. ibidi 8 well plateにA549細胞 (1 x 104 cells, DMEM, 10% fetal bovine serum,1% penicillin-streptomycin) を播種
  2. インキュベーター内 (37℃、5% CO2存在下) で一晩培養
  3. 培地を取り除き、DMEM培地で希釈した 50 μmol/l のエラスチンを添加
  4. インキュベーター内 (37℃、 5% CO2存在下) で一晩培養
  5. 上清を取り除きHBSSで細胞を2回洗浄後、Highly Sensitive DCFH-DA Dye working solutionを添加
  6. インキュベーター内 (37℃、 5% CO2存在下) で30分間インキュベート
  7. Working solutionを除去し、HBSSを用いて細胞を2回洗浄後にHBSSを加え蛍光顕微鏡で観察

②LPS処理したマクロファージの内在性ROS検出

LPS (Lipopolysaccharide) 処理した RAW264.7 細胞において、細胞内ROSの変化をイメージングしたところ、LPS処理によって細胞内のROSが増加する結果が得られました。

  • (スケールバー:50 µm)

    検出条件

    細胞内ROS (Highly Sensitive DCFH-DA Dye): Ex. 488 nm / Em. 500 - 560 nm

実験操作
  1. ibidi 8 well plateに RAW264.7 細胞 (3 x 104 cells, DMEM, 10% fetal bovine serum,1% penicillin-streptomycin) を播種
  2. インキュベーター内 (37℃、5% CO2存在下) で一晩培養
  3. 培地を取り除き、HBSSで細胞を2回洗浄後、DMEM培地で希釈した 500 ng/mL のLPSを添加
  4. インキュベーター内 (37℃、 5% CO2存在下)で20時間培養
  5. 上清を取り除きHBSSで細胞を2回洗浄後、Highly Sensitive DCFH-DA Dye working solutionを添加
  6. インキュベーター内 (37℃、 5% CO2存在下)で30分間インキュベート
  7. Working solutionを除去し、HBSSを用いて細胞を2回洗浄後にHBSSを加え蛍光顕微鏡で観察

③Sulfasalazine (SSZ) による細胞内代謝の変化

使用製品
  • 細胞内ATP :ATP Assay Kit-Luminescence (製品コード:A550)
  • 細胞内α-KG:α-Ketoglutarate Assay Kit-Fluorometric (製品コード:K261)
  • 細胞内GSH:GSSG/GSH Quantification Kit (製品コード:G257)
  • グルタミン酸放出量:Glutamate Assay Kit-WST (製品コード:G269)
実験条件

細胞:A549細胞 (1 x 106 cells)  暴露時間:48時間

    • (スケールバー:50 µm)

参考文献

耐光性ROS 検出キット ROS Assay Kit –Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-

本キットは観察光による自動酸化を抑え、ROS を経時的に高感度に検出することが可能です。

製品特長

  • ROS 発生の経時変化の観測が可能
  • 細胞内への高い滞留性・高感度化
  • 多くの測定装置に対応

技術情報

困難なROS発生の経時変化観察

本キットを用いて染色したRAW264.7 細胞にリポポリサッカリド(LPS)を添加し、マクロファージへの分化誘導によって引き起こされるROSの発生をタイムラプス観察しました。その結果、経時的なROS 産生を観察でき、さらに数値化することができました。

「耐光性」の実現による正確な測定の実現による正確な測定

一般的に活性酸素種の検出には DCFH-DA(または H2DCFDA) が用いられますが、本キットで使用している蛍光色素は観察時の励起光による自動酸化を大幅に抑制しています。

高い滞留性・高感度化の実現
僅かな多様な変化を同時に解析

既存品に比べ、本キットの色素は細胞内での滞留性や蛍光感度を大幅に向上しています。これにより、免疫染色法とや共染色やシングルセルレベルでの解析を実現させ、僅かな ROS 発生や以外の様々なターゲットとの関連性を同時に可視化する事を可能にしました。

免疫染色法との共染色が可能

本キットを用いて染色した HeLa 細胞に過酸化水素を添加後、 Tom20 抗体を用いた免疫染色法との共染色により、ROS 応答とミトコンドリアの形態異常を同時に観察しました。結果、ROS 応答とミトコンドリア形態の状態を鮮明に観察でき、既存色素では困難であった、免疫染色法との共染色ができることがわかりました。

染色後の固定化が可能

一般的に、細胞に固定化処理を行うと細胞内に存在する試薬の多くは細胞外へ漏出します。これは生細胞染色と比べて固定化細胞での ROS 検出が難しくなる要因の一つとなります。本キットを用いて染色した HeLa 細胞に過酸化水素を添加後、PFA で固定化を行い、コントロール細胞と比較をしました。結果、滞留性を高めた本キットは、固定化後もコントロールとの差を維持できることが判りました。

多くの測定装置に対応

活性酸素種を蛍光プレートリーダー、蛍光顕微鏡またはフローサイトメーターで検出することができます。また、DCFH-DA とほぼ同じ蛍光特性(λex=505 nm, λem=525 nm)のため同じ観察波長での検出が可能です。

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酸化ストレス測定試薬

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