抗酸化能の測定に

H-ORAC測定用

体内で過剰に発生した活性酸素種が細胞やDNAを損傷し、がんや成人病、老化の原因となると考えられています。このため、成人病予防や老化抑制の観点から抗酸化物質の重要性が示され、抗酸化物質に対して様々な抗酸化機能の評価法が確立されています。

酸素ラジカル吸収能測定法(Oxygen Radical Absorbance Capacity:ORAC法)は広く食品の抗酸化能評価に使用されている手法であり、特に親水成分の抗酸化能を測定する為の手法として、知られています1)
ORAC法はラジカル発⽣剤である2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine)Dihydrochloride(AAPH)より発⽣したペルオキシラジカルによって、標識物質であるフルオレセイン(Fluorescein)が分解される過程を、フルオレセインの蛍光強度を経時的に測定することにより評価する⼿法です。

本製品は、使いやすいキットタイプの製品です。国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構により、妥当性の確認された測定方法として確立された標準化法2) による測定と同等の性能をもつことを確認しています。食品成分の抗酸化能評価にぜひご活用ください。


  1. 渡辺純・他 : 日本食品科学工学会誌, 57, 525-531(2010)
  2. Watanabe, J. et al. : Anal. Sci., 28, 159-165(2012)

特長

  • 標準作業手順書による測定と同等の評価が可能
  • 緩衝液等の調製が簡便

プロトコル

AAPHとフルオレセインを混合すると、AAPHから発⽣したラジカルによってフルオレセインが分解され、その蛍光強度は弱くなります。この蛍光強度の衰退時間をマイクロプレートリーダーで経時的に測定し、得られた測定時間と蛍光強度のグラフから抗酸化⼒を評価します 。



測定手順

本製品を用いた測定では、始めに「ORAC予測値の算出」を行い、測定サンプルの最適な希釈倍率を決定します。次に「ORAC予測値の算出」から得られた希釈倍率のサンプルを用いて「ORAC値の算出」(本試験)を行います。

【参考情報】 「食品研究等データベース」の食品機能評価マニュアルより「食品の抗酸化能値測定法(H-ORAC分析法)」にて解析処理用のエクセルシートが掲載されています。



ORAC予測値の算出

蛍光測定条件

 励起波長 : 485 ± 20 nm
 検出波長 : 530 ± 25 nm
 検出方向 : プレート底面側(上面側でも可)
 測定温度 : 37 ℃

プレート位置※1
Sample1~10 STD1~4 Blank
サンプル希釈溶液 35 μL - -
STD - 35 μL -
試薬C - - 35 μL
試薬D 115 μL
- プレートシールで蓋をし、プレート庫内に入れる
- 振とう攪拌し、蛍光強度(f 0min)を測定
- 37℃、10 min加温
- マイクロプレートを取り出し、プレートシールを剥がす
試薬E 50 μL
- 50 μL
蛍光強度の経時変化を2分間隔で45回(90分間)測定(f 2min~f 90min)
解析処理

※1:各試料を分注するプレート位置や試薬の調節方法に関する詳細は、製品添付の取扱説明書に記載されています。

ORAC予測値の算出ではSampleの希釈系列を10倍、50倍、250倍、1,250倍希釈としてください。 最大10種のサンプルを測定可能です。
サンプルを加えなかったウェルには試薬Cを分注してください。



ORAC値の算出(本試験)

  1. ORAC予測値を25で除した値を求める
  2. サンプル10倍希釈溶液を試薬Cで①の倍率に希釈する(希釈倍率Ⅰ)
  3. 2を試薬Cで2倍希釈する。(希釈倍率Ⅱ)
  4. 希釈倍率Ⅰ及びⅡを「ORAC予測値の算出」と同様に測定する。

測定例

本製品は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構により妥当性の確認された測定方法として確立された標準化法による測定と同等の性能をもつことを確認しています。(Fig.1)

【方法】

  • 各食品の凍結乾燥粉末から高速溶媒抽出装置を用いてMWA(メタノール:水:酢酸=90:9.5:0.5)溶液で抽出した検体をサンプルとして使用3)
  • H-ORAC測定用キット及び標準化法に基づく方法で測定した。
  • 測定は2機関(農研機構食品研究部門および富士フイルム和光純薬)にて2回並行で実施した。

【測定結果※2

  • 2機関による測定の結果、キットを用いた際の測定値は標準化法に基づいた場合の測定値と同等であった。(Table 1, 2)

※2:各試料のH-ORAC値及びデータグラフ等は参考データであり、商品を保証するデータではありません。

参考文献

3) Watanabe, J. et al. : J. Food Sci., 79, C1665-C1671(2014).

キット構成

試薬名 容量 数量
フルオレセイン 1 mL用 1
トロロックス 1 mL用 2
APPH 15 mL用 2
フェルラ酸 100 mg 2
Assay Buffer 500 mL用 1
96穴マイクロプレート - 2
プレートシール - 4

キット以外に必要な器具・器材

  • メタノール(試薬特級など)
  • 酢酸(試薬特級など)
  • プレートリーダー※5
  • マイクロピペット
  • コニカルチューブ
  • 恒温槽(37℃)

※5:庫内が37℃に調整可能であり、蛍光強度(励起波長485±20 nm、検出波長530±25 nm)の変化が2分おきに90分間測定可能なもの

製品一覧

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H-ORAC測定用キット

別売りプレート・プレート用シール※6

※6:プレートおよびプレート用シールはキットに含まれています。追加で使用する場合に上記製品をご活用ください。

TECAN社 推奨プレートリーダー

Spark®Infinite® 200PRO

※上記製品の吸光波長範囲等の仕様詳細はこちらからご確認ください。
【参考】パンフレット記載の当社データはSpark® を用いた際の測定結果です。

関連製品一覧

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抗酸化物質

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  • 掲載されている製品について
    【試薬】
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    試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
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