TriLink社 CleanCap® Reagent
mRNAのキャッピングは、mRNAの安定化や生物活性の維持、自己/非自己認識による免疫反応の回避において重要な役割を果たします。現在のCapping方法であるmCAPやARCAはキャッピングの効率が低く、エンザイムキャッピングはコストが高いのが課題です。
TriLinkのCleanCap® は、対象のmRNAにキャッピング(Cap 1構造)を付加する試薬です。in vivoでの翻訳効率が改善され、ターゲットタンパク質の発現量が増加します。
CleanCap® とは?: mRNAにCap 1 構造を付加
TriLink社のCleanCap® Reagentは、生体内での免疫反応を回避するキャッピング(Cap 1 )構造をmRNAに付加することにより、翻訳効率の高いmRNAを合成できます。
キャップ構造について
mRNAワクチン/医薬品の有効性は、投与されたmRNAの安定性と翻訳効率の高さに依存します。
生体内で起こる自然なキャッピングは、真核細胞内で進行します。まず、5’ グアノシン(G)がメチル化され、キャップ0構造になります。次に、2つ目のメチル基が付加され、キャップ1構造が生成されます。
キャップ1構造を持つことで、mRNAは免疫系の認識を回避し、安定的に翻訳されます。mRNAワクチンや医薬品は、本来は外来RNAであり、免疫反応を誘起しますが、キャップ1構造を付加することで免疫反応を回避し、目的のタンパク質を発現します。
TriLink社のCleanCap®の特長
- 高いキャッピング効率(>95%)で、より高活性のmRNAが取得可能
- パターン認識受容体を活性化させないため、免疫反応を回避
- エンザイムキャッピングと比較して大幅なコストダウンを実現
- Cap 0 構造に比べてin vivo条件での翻訳効率が大きく改善
- 転写反応時にCleanCap®を添加するだけ
CleanCap®のシリーズ一覧表
CleanCap® AGおよびAUは、mRNAに天然型の5’-N7-メチルグアノシン 2’-O-メチル構造を持つキャップを付加します。 CleanCap® AUは、自己増幅mRNAワクチン開発用に最適化されたキャッピング試薬です(詳細はこちら)。
一方、CleanCap® AG(3’-OMe) は、ARCA法を使用してキャップされたmRNAで見られる5‘-N7-メチル-3’-O-メチルグアノシン構造を持つキャップを付加します。
CleanCap® Reagen M6は、CleanCap AG および CleanCap AG (3’-OMe)と同じ 5‘AG 開始配列を持ち、最初のアデノシン (m6A) の 6位にメチル基が付加されています。
アプリケーション | CleanCap® シリーズ | |||
---|---|---|---|---|
CleanCap® AG | CleanCap® AU | CleanCap® AG 3'OMe | CleanCap® M6 | |
ゲノム編集 (CRISPR, Base Editor) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
細胞治療 (CAR-T細胞, TCRなど) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
遺伝子置換 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ワクチン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
テーラーメイドワクチン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
自己増殖mRNA (saRNA) | 〇 | |||
抗体産生 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
CleanCap® Reagentの種類
CleanCap® Reagent AG
イニシエーター配列が5’ AG 3’の場合に使用します。
CleanCap® Reagent AG (3' OMe)
イニシエーター配列が5’ AG 3’の場合に使用します。ARCA法によるキャッピングのように、m7Gの3‘-OH基側からのmRNA合成を防止するために3’-OH基をメチル化修飾します。
CleanCap® Reagent M6
イニシエーター配列が5’ AG 3’の場合に使用します。最初のアデノシン (m6A) の 6 位にメチル基が付加されています。CleanCap®シリーズの他のキャッピングアナログよりタンパク質発現量が30%以上増加します。
CleanCap® Reagent AU
イニシエーター配列が5’ AU 3’の場合に使用します。アルファウイルスをベースとした自己複製型RNAのキャッピングに用いられます。
既存のキャッピング試薬とCleanCap®の比較
従来のキャッピングアナログとCleanCap® Reagentの比較です。
左図は、キャップ構造、免疫原性、キャッピング効率、mRNA合成量、コスト、治療用途でのライセンス有無を比較した表です。いずれの項目においても、 CleanCap®は従来法よりも優れています。
右図は、mRNAへのキャッピング効率をLC/MSで比較したグラフです。 グラフ左の従来法では、キャッピングされていないmRNA(Uncapped)のピークが見られました。一方、グラフ右のCleanCap®によるキャッピングでは、 Uncappedのピークはごくわずかで、ほとんどのmRNAがキャッピングされました。
CleanCap®のin vivoアプリケーションデータ
Cap1構造であるCleanCap®は宿主の自然免疫反応が低く抑えられ、in vivoにおける発現効率が向上します。一方、従来のCap0構造は免疫原性があるため、in vivoではあまり発現しません。
RNA受託合成サービス
ご指定いただいた配列のRNAをTriLink社で合成いたします。短鎖RNAは化学合成、長鎖RNAは転写合成にて製造いたします。キャッピング、修飾塩基、バッファー組成、精製方法などをご指定いただけます。修飾塩基を使用したガイドRNAの合成からバルクスケールでのmRNA合成まで幅広い用途でご利用いただけます。
mRNA受託合成(in vitro 転写合成)のサービス内容
目標収量:1mg~
修飾塩基:Pseudouridine, 5-Methoxyuridine, 5-Methylcytidine/Pseudouridine など
キャッピング:CleanCap®
依頼例
- ORF配列のみを指定したmRNAの合成
- UTR配列およびORF配列を指定したmRNAの合成
RNA受託合成をご希望の方は、当社営業、販売代理店までお問い合わせください。
mRNA受託合成をご希望の方は見積依頼フォームからもご依頼いただけます。
CleanCap® はTriLink BioTechnologies. LLCの登録商標です。
TriLink BioTechnologiesとは
TriLink BioTechnologiesは、アメリカ サンディエゴの試薬および医薬品の製造受託会社です。核酸、オリゴヌクレオチド、キャッピングアナログの製造や長鎖RNA合成を得意としています。
CleanCap®mRNAは、TriLinkの独自技術であり、新規の共転写キャッピング方法です。従来のキャッピング法よりも高いキャッピング効率とタンパク質発現効率を可能にします。
TriLinkは、ICH Q7およびISO 9001:2015規格に準拠した品質管理体制で製造してます。
mRNAワクチン・医薬品の研究開発および製造について
mRNAの作用機序、製造の流れ、キャッピングアナログの違いは以下の記事を参照ください。
製品一覧
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- 掲載されている製品について
- 【試薬】
- 試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
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- 【医薬品原料】
- 製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
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