スーパーオキシド検出プローブ

スーパーオキシド (Superoxide) は活性酸素の一種であり、酸素分子が一電子還元を受けることで生成されます (O₂^-・)。スーパーオキシドアニオンやスーパーオキシドラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカルとも呼ばれます。生体で発生したスーパーオキシドは、その反応性の高さにより生体分子を損傷させる原因となります。活性酸素が過剰な状態である、いわゆる酸化ストレスが高い状態が続くと、生活習慣病や神経変性疾患など様々な疾患が引き起こされます。正常な細胞では発生したスーパーオキシドを速やかに除去する機能 (抗酸化能) が備わっており、スーパーオキシドの除去に関与する分子として、一酸化窒素 (NO^・) やスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) が知られています。

スーパーオキシドは極性溶媒中では速やかに過酸化水素 (H₂O₂) に変換されるため、直接測定することが難しい分子です。スーパーオキシドの測定には、過酸化水素 (H₂O₂) よりも早い反応速度で進行する化学反応を用いる必要があり、チトクロームCやニトロブルーテトラゾリウム (NBT) の還元を利用した方法が知られています¹⁾。また蛍光プローブはスーパーオキシドを簡便に測定する方法として有用であり、従来はヒドロエチジン (HE: Hydroethidine) がよく用いられていました。しかしながら、ヒドロエチジンはスーパーオキシドへの特異性に問題があり²⁾、より特異性の高い蛍光プローブの開発が求められていました。

BES-So-AMおよびBES-Soは、生細胞内のスーパーオキシドを検出するための蛍光プローブです^2-3)。本製品は酸化還元反応に依存しないメカニズムによって蛍光を発します。従来の蛍光プローブであるヒドロエチジンと比較して、スーパーオキシドに対する特異性が高く、バックグラウンドを低減することができます。蛍光顕微鏡による生細胞のイメージングやフローサイトメトリーによる細胞分析に使用することができます。

特長

• 生細胞のスーパーオキシドを検出
• 従来の蛍光プローブ (ヒドロエチジン) よりもスーパーオキシドに対する特異性が高い
• 水に溶解して使用可能
• Ex/Em=505 nm/544 nm

原理

データ

BES-So-AMによるJurkat T細胞のスーパーオキシド検出

Jurkat T細胞を33 μM BES-So-AMを含む培地で37℃、1時間培養して細胞内に試薬を取り込ませた。その後、スーパーオキシドを産生させるため、5 mM 酪酸を添加し、さらに1時間培養した。対照群ではスーパーオキシドのスカベンジャーであるTironをBES-So-AMとともに培地に添加した。

	O2ー・産生なし/スカベンジャーなし	O2ー・産生あり/スカベンジャーなし	O2ー・産生あり/スカベンジャーあり
蛍光像
位相差像

<データ提供> 兵庫医療大学 薬学部 前田先生

1. 須磨春樹編: 「活性酸素実験プロトコール」 (秀潤社) (1994).
2. Maeda, H. et al.: J. Am. Chem. Soc., 127, 68(2005).
   A design of fluorescent probes for superoxide based on a nonredox mechanism
3. Maeda, H. et al.: Chem. Eur. J., 13(7), 1946 (2007).
   Design of a practical fluorescent probe for superoxide based on protection–deprotection chemistry of fluoresceins with benzenesulfonyl protecting groups.