定量NMR (qNMR) 用基準物質

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定量NMR(qNMR)用の基準物質に求められる要件として、①吸湿や昇華などによる質量変動が小さく、安定してはかり取れること、②純度値のトレーサビリティが保証されていること、③NMRにおいて特異的なケミカルシフトを与え、加えて単純な形状(可能であればシングルピーク)を示すことなどが挙げられます。また分析試料、重水素溶媒に応じて適切な基準物質を選定することも重要です1)。当社では定量NMR用の基準物質として最適な製品をラインアップしています。

TraceSure® (CRM)

1つ以上の指定された特性について、計量学的に妥当な手順によって値付けされ、指定された特性値及びその不確かさ、並びに計量学的トレーサビリティーを記述した認証書が付いている物質 (認証標準物質) です。

標準物質生産者の認定 (ISO 17034認定) を取得し、国際MRAに対応しています。当社から販売している 4種の標準物質(1,4-BTMSB-d4、DSS-d6、ジメチルスルホン、マレイン酸)は、IAJapanからASNITE認定プログラムによって認定を取得した認証標準物質で、計量トレーサビリティが表明された信頼性の高い標準物質です。

定量NMR用標準品

IAJapanからASINITE認定プログラムによって認定を取得した認証標準物質(TraceSure® (CRM))を用いて、定量NMR法による値付けと、測定の不確かさを付与した標準品です。認証標準物質と比較し、大容量で安価な製品となっています。

定量NMR用標準液

定量NMRで使用する認証標準物質を重溶媒で調製した製品で、定量NMRによる特性値と信頼性の証である不確かさを付与しています。標準液の試料調製では、1Hの信号強度が相対的に強い内標準物質を精密に採取することが要求されるため、ウルトラミクロ天秤等の高精度な天秤や調製環境が必要とされます。本製品は、調液済みの製品のため、標準物質の精密な秤量が不要です。また、外標準法2)の標準物質としても使用することが可能です。

*定量NMR用標準液を用いた内標準法概略

NMIJ CRM

NMIJ CRMは日本の国家計量標準機関である、NMIJから頒布される認証標準物質です。ISO17034に基づいたマネジメントシステムにより生産され、SIにトレーサブルです。近年、他の原子核による定量法の研究が進められています3,4,5)。本製品は定量NMRにおける1Hおよび19Fの信号強度の校正に用いるほか、分析方法の妥当性確認に用いることが可能です。

  1. 「qNMRプライマリーガイド」ワーキング・グループ:「qNMRプライマリーガイド 基礎から実践まで」(共立出版)(2015)
  2. 標準溶液と分析試料を別々に比較して定量値を求める手法。測定の精確性は、内標準法の方が高いと言われているが、試料溶液に標準物質を添加する必要がないので、分析試料を回収できるというメリットがある。
  3. 斎藤直樹 他 : 計測と制御, 53-6, 529 (2014).
  4. T.S. Al-Deen et al.: Anal. chim. acta, 474-1-2, 125 (2002).
  5. W. He et al.: J. fluorine chem, 127-6, 809 (2006).

特長

内標準物質を選ぶ際には、①測定対象化合物とNMR信号が重ならないこと、②使用する重水素溶媒への溶解性が重要です。以下に当社標準品の1H NMRチャート※1、溶解性情報をまとめました。測定対象化合物にあった標準品をご利用ください。

※1 1H NMRチャートは条件によって多少変化します。

  • TraceSure® (CRM)
  • 定量NMR用標準品

溶解性情報

TraceSure® (CRM) 定量NMR用標準品
溶媒 \ 標準 マレイン酸 ジメチルスルホン 1,4-BTMSB-d4 DSS-d6 安息香酸 トリフェニルメタン フタル酸水素カリウム テレフタル酸ジメチル 1,3,5-トリメトキシベンゼン
Acetone-d6
CDCl3
DMSO-d6
CD3OD
D2O
CD2Cl2

qNMRに用いる基準物質の選定

qNMR測定で使用する基準物質の品質は、qNMR測定において最も注意しなければいけないポイントのひとつです。qNMRが、医薬品、食品分析を含めた多くの分野で活用され始めている背景としては、信頼性の高い保証値 (純度や濃度など) が付与された基準物質 (例えば、SIトレーサビリティが確保された基準物質) を使用することで、他の分析法と比べて、広範囲な化合物に対し簡便に正確な定量値が得られる点にあります。qNMRが有するこの特性は、裏を返せば、測定結果の基となる基準物質の選定が極めて重要であるということになります。

qNMRに使用する基準物質の選定で注意するポイント1,2)

  • 特異的な領域にケミカルシフトを与えるもの (一般的な有機化合物のシグナルが観測されない領域にケミカルシフトを与えるもの)
  • 溶媒への溶解性が良好であるもの
  • 安定して精確に秤量できるもの (吸湿性/潮解性や揮発性/昇華性がないもの)
  • シグナルの数と、スピン結合によるシグナルの分裂が少ないもの (単一線 (シングレットシグナル) が望ましい)
  • 国際単位系 (SI) へのトレーサビリティが確保されたもの (国家標準物質 (National Standard) や認証標準物質 (Certified Reference Material; CRM) など)
    • SIトレーサビリティが確保された基準物質を使用することで、SIトレーサブルな定量値 (絶対定量値) を得ることが可能となります。

1,4-BTMSB-d4標準物質DSS-d6標準物質は、上記のポイントを全て満たしており、その汎用性の高さから、日本薬局方において複数品目のqNMR純度規定3)に採用されています。論文等で報告されている一般的なqNMR用基準物質のケミカルシフトと、一般的な有機化合物由来シグナルのケミカルシフトを比較すると、1,4-BTMSB-d4標準物質とDSS-d6標準物質は、0 ppm付近にシングレットシグナルを与え、他の基準物質と比べて一般的な有機化合物由来シグナルとの分離能が高いことが分かります3,4)。また1,4-BTMSB-d4標準物質は有機系の溶媒に良好な溶解性を示し、DSS-d6標準物質は水系溶媒へ良好な溶解性を示します。

  1. JIS K 0138: 2018 定量核磁気共鳴分光法通則 (qNMR通則).
  2. Miura T. et al., Analytical standards purity determination using quantitative nuclear magnetic resonance. New Horizons of Process Chemistry: Scalable Reactions and Technologies. (Tomioka K. et al.). Springer, Singapore, 275 (2017).
  3. 和光純薬時報 Vol.86 No.1(2018年1月号)
  4. Inspired by Dr. Naoki Sugimoto at NIHS.

秤量手順

日本薬局方試薬・試液の項のqNMR純度規定においては、ウルトラミクロ天秤を使用した秤量操作を行いますが、ウルトラミクロ天秤の秤量皿は非常に小さいことから、バイアルなどの容器も小さいものしか載せることができません。そして、この小さいバイアルを秤量皿の上に載せ風袋引きを行い、そのバイアルの中に薬さじなどを使ってサンプルをバイアルの淵などに付着させずに巧く入れるのは非常に困難です。場合によっては、バイアルの外側や、天秤の秤量皿にサンプルが付着し、これに気付かずに測定結果に大きな誤差を生じる可能性があります。そのため、ウルトラミクロ天秤で精確な秤量を行う手法として、アルミニウムなど金属製の秤量皿を風袋として利用する手法が広く利用されています。この手法を利用することで、測定対象物質やqNMR用基準物質をバイアルの淵や、天秤の秤量皿に付着することなく、巧みにバイアルなどの容器の中に入れることが可能となります。

qNMR測定の秤量手順を示します。アルミ秤量皿は、アルミニウム製で帯電しにくく、加えて体積が小さく空気中での浮力の影響を受けにくいことから、qNMR測定での精確な秤量に適しています。また、内容量も80 μLとqNMR測定を実施する上で適度な量を確保しています。さらに、7種の重水素化溶媒(クロロホルム-d、DMSO-d6、重水、アセトン-d6、アセトニトリル-d3、メタノール-d4、ジクロロメタン-d2)に対して溶出試験を行い、溶出物由来シグナルが検出されないことを確認しています。本製品は、当社における数百品目を超えるqNMRを利用した試薬製品の品質試験においても実用され、良好な測定結果が得られることが確認されております。また、アルミ秤量皿を投入するのに適した、広口の石英バイアルもご用意しております。

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最小計量値

最小計量値とは、天秤で精確な秤量をする際の採取量の基準のひとつです。qNMR測定の試料調製においては、目標とする測定精度にもよりますが、最小計量値を満たした秤量が推奨されています。製薬業界では、天びんの管理方法の1つとして米国薬局方 (United States Pharmacopeia; USP) General Chapter <41> Balances及びGeneral Information<1251> Weighing on an Analytical Balancesが広く利用されています1,2)。測定試料が正確に計量されるためには、天びんがその使用範囲において校正され、かつ以下の基準を満たしている必要があります。

① 繰り返し性は、1つの検査用分銅を10回以上計量して測定すること。
② 計量された値の標準偏差を2倍し、それを使用した分銅の公称値で割った値が0.10%を超えないこと。

これを言い換えると、以下の式が導かれます。

以下に最小計量値の測定例を示します。同じ精度を確保しようとする場合、天秤の最小表示が小さいほど、より少ない採取量で秤量が可能です。

最小計量値の測定例

天秤の種類 最小計量値 (Wmin)
セミミクロ天秤 (最小表示:0.01 mg) 13.9 mg
ミクロ天秤 (最小表示:0.001 mg) 2.8 mg
ウルトラミクロ天秤 (最小表示:0.0001 mg) 0.2 mg

溶液NMR測定においては、サンプルを重水素化溶媒に溶解し測定に供しますが、使用する重水素化溶媒は、HPLCやGCに用いる一般溶媒と比べて高価であることから、可能な限り使用量を抑えることが求められます。qNMR測定においても、状況は同じであり、濃度固定を前提とした場合、最小表示が小さい天秤ほど、使用する重水素化溶媒の量を節約することができます。実際、日本薬局方では試薬・試液の項の複数品目に、qNMR純度規定が採用されていますが、使用する天秤はすべて「ウルトラミクロ化学はかり※1を用い」と規定されています。

  • 1 最小読み取り値が0.1 μgの天秤 (天秤業界用語ではウルトラミクロ天秤) のこと

  1. USP “General Chapter 41 Balances”, USP39-NF34, cited 29 April, (2016).
  2. USP “General Information 1251 Weighing on an Analytical Balance”, USP39-NF34, cited 29 April, (2016).

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高純度NMR溶媒

不純物を大幅に低減した、qNMR測定等に最適な溶媒です。

NMR溶媒

デジタルシリンジ

秤量皿

NMRチューブ

  • チューブ材質:ほう珪酸ガラス、キャップ材質:ポリエチレン
  • NMRチューブは、製造時のアルカリ成分が表面に現れることがございます。精密な測定の際には事前の洗浄を推奨します。
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