エドマン法 (プロテインシークエンサー/PPSQ)
タンパク質やペプチドのアミノ酸配列を決定するには、N末端側からアミノ酸を1残基ずつ同定していくエドマン法が極めて優れた方法として広く使用されています。
EdmanとBeggにより自動エドマン法が開発されて以来、分析の微量化と迅速化が要求されるようになり、シークエンサーなどを用いてpmolオーダーの分析が行われています。
エドマン分解法
エドマン分解法(Edman法)とは、タンパク質・ペプチドのN末端より逐次的にペプチド結合を切断し、タンパク質の一次構造を決定する方法です。
【原理】
①タンパク質あるいはペプチドのN末端部分の遊離アミノ基に PITC (フェニルイソチオシアネート) を反応させ、PTC-アミノ酸 (フェニルチオカルバミルアミノ酸) を作ります。
②TFA (トリフルオロ酢酸) によってATZ-アミノ酸 (アニリノチアゾリノンアミノ酸) として遊離させます。
③酸性下で安定なPTH-アミノ酸 (3-フェニル-2-チオヒダントンアミノ酸) に変換して分析します。
分析方法
1967年にエドマンにより、液相でエドマン分解を自動処理する装置が開発されました1)。1980年代に気相式でエドマン分解を自動処理し、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) によりPTH-アミノ酸をイソクラティック溶離で分析する国産初の気相式プロテインシーケンサPSQ-1が開発されました2)。その後、分析部およびデータ処理ソフトウェアの開発により、PPSQ (プロテインシークエンサ) シリーズへ進化してきました。
PITC ; フェニルイソチオシアネート、TMA ; トリメチルアミン、TFA ; トリフルオロ酢酸、
PTC ; フェニルチオカルバミル、PVDF ; ポリフッ化ビニリデン
アミノ酸分析配列自動分析のフローを図2に示します。
アミノ酸配列の自動分析方法は、まずリアクタとコンバータ内でエドマン分解を展開します。そして、インジェクタ内で安定なPTH-アミノ酸をHPLCに注入して同定し、データ処理部でデータの解析を行います。
PPSQでは、移動相の組成が一定のイソクラティック溶離と移動相組成を連続的に変化させながら溶出させる方法のグラジエント溶離が可能です。 PTH-アミノ酸標準混合品(2 pmol)のグラジエント溶離によるクロマトグラムを図3(a)に、イソクラティック溶離によるクロマトグラムを図3(b)に示します。 グラジエント溶離は、イソクラティック溶離と比較し、全体的に3~5倍程度高いピークの高さで検出され、疎水性の高いPTH-アミノ酸の分離も可能です。
さらに、グラジエント溶離では、500 fmol の微量のサンプルを分析する場合でも、PTH-アミノ酸の分離および検出が可能となり、特異的に増加しているPTH-アミノ酸を容易に検出出来ます (図4)。
PPSQでは、様々な反応液や溶離液が必要となり、その処理は非常に煩雑です。当社で販売する「島津全自動タンパク質一次構造分析装置用試薬」は、PPSQ専用の試薬で、容器のまま装置にセッティングしてご使用いただけます。
バックグラウンドの軽減
クロマトグラム上に現れるバックグラウンドは、主にエドマン分解の副生成物であるジメチルフェニルチオウレア (DMPTU)、ジフェニルチオウレア (DPTU) とジフェニルウレア (DPU)、および、エドマン試薬に含まれている物質が挙げられます。これらは、カップリング試薬であるフェニルイソチオシアネート (PITC) と塩基性雰囲気下をつくるトリメチルアミン (TMA) から生成されますが、サンプルが微量になると、この副生成物であるDMPTUや、転換反応に用いる25%トリフルオロ酢酸に含有する酸化防止剤のジチオスレイトール(DTT)のピークがアミノ酸 (PTH-Asp, PTH-His) のピーク検出を妨害します。
これらの問題点は、塩基性雰囲気下を作る試薬をTMA からN-メチルピペリジンに、さらにDTT を含有しない25%トリフルオロ酢酸を使用することで解消出来ます (図5)。
当社の島津タンパク質一次構造分析装置用試薬は、不純物を保証しており、安定したベースラインを得ることが出来ます。また、容器を装置にそのままセッティングしてご使用いただけます。
- Edman, P. and Begg, G. : Eur. J. Bouchem., 1, 80-91 (1967).
- 上田 昭 他:島津評論,46(4), 207-215 (1989).
- 栗木 智子 他 : 和光純薬時報, 86(4), 6-7 (2018).
- グラジエントシステムとは、使用する試薬が異なります。
製品一覧
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PTH-アミノ酸混合標準品
PTH-アミノ酸標準品(単品)
専用溶離液
分析用カラム
(和光純薬時報 2018 Vol.86 No.4 p.6~8)
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