Q「労働安全衛生規則第12条の5」化学物質管理者の選任義務化について
労働安全衛生法第 12 条では、一定の規模及び業種の区分に応じ「衛生管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理させることとなっています。
2024年4月1日より、リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、又は譲渡提供をする事業場において「化学物質管理者」の選任が義務化されました。
【改定内容・2024年4月1日】
1.化学物質管理者、保護具着用管理責任者の選任
1)化学物質管理者の選任(安衛則第12条の5関係)
労働安全衛生規則(以下、安衛則)等が改正され、化学物質による労働災害を防止するための新たな化学物質管理規制として、従来の「個別規制型」から「自律的な管理」へ制度改革が進められています。
その重要な柱として、2024年4月1日よりリスクアセスメント対象物を製造、取り扱い又は譲渡提供をする事業場においては、事業規模にかかわらず"化学物質管理者"を選任し、化学物質の管理に係る技術的事項を管理させることが義務づけられました。
選任要件:化学物質の管理に関わる業務を適切に実施できる能力を有する者
①リスクアセスメント対象物を製造する事業場
- 厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する専門的講習(表1)を修了した者から選任する必要があります。
②リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場
- 資格要件はありませんが、専門的講習等の受講が推奨されています。
科目 | 時間 | |
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講義 | 化学物質の危険性及び有害性並びに表示等 | 2.5時間 |
化学物質の危険性及び有害性等の調査 | 3時間 | |
化学物質の危険性及び有害性等の調査に基づく措置等その他必要な記録等 | 2時間 | |
化学物質を原因とする災害発生時の対応 | 0.5時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実習 | 化学物質の危険性及び有害性等の調査及びその結果に基づく措置等 | 3時間 |
合計 | 12時間 |
2)保護具着用管理責任者の選任(安衛則第12条の6関係)
化学物質管理者を選任した事業場においては、リスクアセスメントの結果に基づく措置として労働者に保護具を使用させる場合、"保護具着用管理責任者"を選任し、有効な保護具の選択、保護具の保守管理、その他保護具に係る業務を担当させることが義務づけられました。
選任要件:保護具に関する知識及び経験を有すると認められる下記の者のうちから選任する必要があります。
①化学物質管理専門家の要件に該当する者
②作業環境管理専門家の要件に該当する者
③労働衛生コンサルタント試験に合格した者
④第1種衛生管理者免許又は衛生工学衛生管理者免許を受けた者
⑤作業主任者
⑥安全衛生推進者
⑦保護具着用管理責任者教育(表2)を修了した者
科目 | 時間 | |
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講義 | 保護具着用管理 | 0.5時間 |
保護具に関する知識 | 3時間 | |
労働災害の防止に関する知識 | 1時間 | |
関係法令 | 0.5時間 | |
実習 | 保護具の使用方法等 | 1時間 |
合計 | 6時間 |
- 表1、2の講習は各種安全衛生関係団体が開催しています。
2.それぞれの職務
化学物質管理者の職務 | 保護具着用管理責任者の職務 |
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①ラベル表示・SDS交付に関すること
②リスクアセスメント(以下、RA)の実施に関すること
③RA結果に基づくばく露防止措置の内容及び実施に関すること
④RA対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応に関すること
⑤RAの結果等の記録の作成・保存並びに労働者の周知に関すること
⑥RA結果に基づくばく露防止措置が適切に施されていることの確認、労働者のばく露状況、労働者の作業の記録、ばく露防止措置に関する労働者の意見聴取に関する記録・保存並びに労働者への周知に関すること
⑦①から④までの事項の管理を実施するにあたっての労働者に対する必要な教育に関すること
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①保護具の適正な選択に関すること
②労働者の保護具の適正な使用に関すること
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3.社内への周知
事業者は、化学物質管理者及び保護具着用管理責任者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、選任時はそれぞれの氏名を事業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させる必要があります。