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QA番号:13381

Q「NMR(核磁気共鳴)」とは何ですか。

A

磁場中の物質に電磁波を照射すると、物質中の原子核に特有な周波数の電磁波の吸収・放出が起こります。 これを核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)といいます。

NMR法

化学(ケミカル)シフト(原子の結合状態や環境に依存する共鳴ピークの位置)やスピン結合(化学結合の数、結合次数及び結合角に依存するピーク)の情報を得る手法です。物質の化学構造を知る上で多くの情報を得ることができます。
1H, 13Cの測定が代表的ですが、 1H, 2H (水素)、14N, 15N (窒素)、13C (炭素)、31P (リン)、19F (フッ素)、27Al (アルミニウム)、29Si (ケイ素)、23Na (ナトリウム)など数多くの原子核が固有の共鳴周波数を持っています。

定量NMR

化合物の分子構造がわかった状態では、核共鳴周波数(NMR)のピークに寄与する原子の数が明確になります。
定量NMRは、NMRの化合物中の原子核の数の比がピーク積分比に対応する特性を利用して、化合物の純度や濃度等の定量値を求める方法です。

定量分析で広く用いられているクロマトグラフ法が、UVや屈折率、蛍光度など、分子の持つ特性を検出しているのに対し、定量NMR法は、分子の中の原子核を検出しているため、原理的には一種類の基準物質によって全ての測定対象物質を定量する事が可能です。また定量NMRで使用する基準物質は測定対象物質と同じ種類の化合物である必要はありません。

基準物質

NMRで定量分析を行う際、定量基準、つまり「ものさし」となる物質の事を「基準物質」といいます。
定量NMR(qNMR)用の基準物質は、質量(秤量値)、分子量、純度が既知の物質で、その求められる要件として、
①吸湿や昇華などによる質量変動が小さく、安定してはかり取れること、
②純度値のトレーサビリティが保証されている(SIトレーサブルである)こと、
③NMRにおいて特異的なケミカルシフトを与え、加えて単純な形状(可能であればシングルピーク)を示すこと、
などが挙げられます。
原理的には一種類の基準物質によって全ての測定対象物質を定量する事が可能ですが、精確な成分比を求めるためには、注目する成分に由来するNMR信号がスペクトル上で分離し、なおかつ不純物と重ならない事が必要になります。そのため複数の基準物質を用意し、分析試料、重水素溶媒に応じて適切な基準物質を選定することも重要です。

測定の流れ
  • 基準物質を測定対象物質に添加する。
  • 基準物質のピーク面積(物質量・分子数)から測定対象物質の分子量・分子数を求める。
  • 測定対象物の分子数・質量(秤量値)・分子量から測定対象物質の純度を求める。

定量NMR法は、計量トレーサビリティが確保された基準物質を使用し適切な手順で操作する事によりSIトレーサブルな分析結果を得ることができます。
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