生細胞のリソソーム内鉄イオンを検出可能!

リソソーム内鉄イオン検出試薬(Lyso-FerroRed)

DOJINDO

鉄イオンに依存した脂質過酸化物の蓄積により引き起こされるフェロトーシスがStockwellらに提唱されてから10年以上経過し、これまでにフェロトーシスに関するさまざまな研究がなされています。遊離した二価鉄 (Fe2+) がフェントン反応により活性酸素を発生させ、脂質が酸化されることから、フェロトーシスは鉄依存性の細胞死であることが明らかになってきています。また最近では、脂質酸化により、リソソームの膜が損傷し、リソソーム中の鉄が漏出することによって、他の細胞小器官へ脂質酸化が広がっていくことが報告されています。
Lyso-FerroRedは細胞内のリソソームの鉄を検出することができます。試薬を培養細胞に添加すると細胞膜を透過し、リソソームのFe2+と選択的に反応し強い蛍光を発します。Lyso-FerroRedにはキレート能はなく、Lyso-FerroRedとFe2+は非可逆的に反応するため、Fluo-3のようなカルシウムプローブの検出原理とは異なります。

フェロトーシス経路概略図

フェロトーシス経路概略図

フェロトーシスにおけるリソソーム鉄の重要性

フェロトーシスは、鉄依存的な脂質過酸化によって引き起こされる細胞死の一種であり、がん、神経変性疾患、老化関連疾患など、さまざまな疾患との関わりが明らかになっています。これまでの研究では、細胞全体の鉄総量が主な焦点とされてきましたが、近年ではリソソームをはじめとする細胞小器官への鉄局在が重要視されるようになってきました。その中でもリソソームは、細胞内で分解とリサイクルを担う小器官であると同時に、鉄の蓄積部位としても知られています。このリソソーム内の鉄動態がフェロトーシスを誘導する引き金となる可能性が指摘されており1)、こうした背景から、リソソーム鉄を選択的に検出・評価する技術に注目が集まっています。

1) Y. Saimoto, et al., Nature Communications, 2025, 16, 3554. ​

刺激による鉄の細胞内分布の変化とフェロトーシス

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これからはじめるフェロトーシス検出

原理

Lyso-FerroRedは細胞内のリソソームの鉄を検出することができます。試薬を培養細胞に添加すると細胞膜を透過し、リソソームのFe2+と選択的に反応し強い蛍光を発します。Lyso-FerroRedにはキレート能はなく、Lyso-FerroRedとFe2+は非可逆的に反応するため、Fluo-3のようなカルシウムプローブの検出原理とは異なります。

特長

  • 生細胞のリソソーム内Fe2+を検出可能
  • 蛍光顕微鏡でのイメージングおよびプレートリーダー、フローサイトメーターでの数値化が可能
原理
【操作の流れ】
操作の流れ

本製品は、岐阜薬科大学ケミカルバイオロジー研究室 平山祐先生のご指導の下、同仁化学研究所にて製品化しました。

鉄検出試薬の選択

鉄検出時の実験方法および測定機器に応じて試薬を選択頂けます。

Lyso-FerroRed FerroOrange Mito-FerroGreen Iron Assay Kit-Colorlmeteric-
細胞内の局在 リソソーム内 細胞内 ミトコンドリア
検出波長 蛍光
λex : 551 nm、λem : 571 nm
蛍光
λex : 543 nm、λem : 580 nm
蛍光
λex : 505 nm、λem : 535 nm
吸光度
593 nm
対応装置
(フィルター)
蛍光顕微鏡、プレートリーダー 、
フローサイトメーター(TRITC)
蛍光顕微鏡、プレートリーダー (Cy3) 蛍光顕微鏡 (FITC、GFP) プレートリーダー
サンプル 生細胞 生細胞 生細胞 組織
使用回数 35 nmolで35 mm dish 17枚分染色可能
(終濃度 1 μmol/l使用時)
1 tubeで35 mm dish 17枚分染色可能
(終濃度 1 μmol/l使用時)
50 μgで35 mm dish 5枚分染色可能
(終濃度 5 μmol/l使用時)
50 tests
(標準曲線を作成し
Fe2+のみ測定する場合: 4サンプル分、
Fe2+とFe3+を測定する場合: 2サンプル分)

データ例

リソソーム内Fe2+の検出・数値化

HT-1080細胞を用いて、細胞内に内在するFe2+および鉄キレート試薬Bpy(2,2'-bipyridine、終濃度:1 mM)と鉄(硫酸アンモニウム鉄(II) 、終濃度:100 μmol/l)の添加有無により、リソソーム内のFe2+の変化をLyso-FerroRedにより確認しました。

蛍光顕微鏡によるイメージング

蛍光顕微鏡によるLyso-FerroRedのイメージング
<検出条件>Ex/Em = 564 nm / 565-620 nm

プレートアッセイによる数値化

プレートアッセイによるLyso-FerroRedの数値化
<検出条件>Ex/Em = 550 nm / 580 nm

フローサイトメトリーによる検出

フローサイトメトリーによる検出
<検出条件>Ex/Em = 565 nm / 565-617 nm

Fe2+への高い選択性

50 mmol/l HEPES Buffer(pH7.4) 1 mL中に1 mmol/l Lyso-FerroRed 2 μL、各種金属 2 μLを加え室温にて1時間反応後の蛍光強度を測定しました。

Fe2+への高い選択性
<検出条件>Ex/Em = 564 nm / 565-620 nm
<終濃度>
Lyso-FerroRed:2 μmol/l
Mn, Co, Ni, Fe2+, Fe3+, Zn, Cu : 20 nmol/l
Na, K, Mg, Ca : 1 mmol/l
Bpy : 100 µmol/l

<検出条件>
Ex: 550 nm、Em: 580 nm

リソソーム局在の高い特異性

Lyso-FerroRedのリソソーム内局在を確認するため、各細胞小器官染色試薬と共染色を行い、Lyso-FerroRedがリソソームを選択的に染色していることを確認しました。

※Lyso-FerroRedは、Merge画像が分かりやすいように疑似カラーで表現しています。

蛍光特性(鉄と反応させる前と後の Lyso-FerroRed)

50 mmol/l HEPES Buffer (pH7.4) 中にLyso-FerroRed(終濃度:2 μmol/l) 、硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)(終濃度:20 µmol/l)を加え室温にて1時間反応後に測定しました。

鉄と反応させる前と後の Lyso-FerroRedの蛍光特性

フェロトーシス誘導剤とリソソーム阻害剤の併用による各指標の変化

これまでがん細胞株間ではフェロトーシス感受性が異なることが示唆されており、フェロトーシス抵抗性のがん細胞においてリソソームのストレスを増加させることでフェロトーシスを促進できることが報告されている1)
フェロトーシス抵抗性を示すがん細胞、A549細胞を用いてフェロトーシス誘導剤であるRSL3またはRSL3とリソソーム阻害剤であるChloroquine(CQ)を24時間処理し、細胞生存率、リソソーム内Fe2+、リソソーム量の変化を解析した。その結果、RSL3単独で処理した場合では細胞生存率、リソソーム内Fe2+に大きな変化はみられなかったが、一部リソソームが集積している様子(LysoPrime Deep Redの強い輝点)が観察された。
一方、RSL3に加えてCQを同時に処理した細胞では、リソソーム内Fe2+の増加とリソソームの肥大化、細胞生存率が低下する既報と同様の結果が得られ、フェロトーシス促進にリソソーム内Fe2+の増加が関与している可能性が示唆された。

1) Saimoto. Y, et al., Nature Communications, 2025, 16, 3554. ​

RSL3とCQ処理後の細胞生存率
RSL3とCQ処理後の細胞イメージング

<使用製品>
細胞生存率測定:Cell Counting Kit-8(メーカーコード:CK04)
リソソーム内Fe2+:Lyso-FerroRed(メーカーコード:L270)
リソソーム量:LysoPrime Deep Red - High Specificity and pH Resistance(メーカーコード:L264)

参考文献

No. 対象サンプル 装置 引用(リンク)
1 細胞
(HepG2)
蛍光顕微鏡 Niwa, M. et al. : Org. Biomol. Chem, 12 (34), 6590–6597 (2014)
※論文で「HMRhoNox-M」と記載されている化合物が「Lyso-FerroRed」となります。
2 細胞
(Calu-1)
蛍光顕微鏡 Saimoto, Y. et al. : Nat Commun, 16 , 3554 (2025)
※論文で論文で「Lyso-RhoNox」と記載されている化合物が「Lyso-FerroRed」となります。

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