CTGF ELISAキット

結合組織成長因子(CTGF: Connective Tissue Growth Factor)は臍静脈や血管内皮細胞から産生される約38 kDaの分泌タンパク質です。細胞接着や軟骨細胞の増殖・分化などに関与することが知られているほか、組織線維化の主要因子と考えられており、線維症のマーカー候補として報告されています。

当社ではCTGFの全長および全長+N末領域を測定するELISAキットをそれぞれ開発しました。2種類のELISAを組み合わせることで特発性肺線維症 (IPF)のバイオマーカーとして期待される血液中のN末領域CTGFを正確に測定することが可能です。

  • 線維化研究試薬カタログDLお申込みはこちら

CTGFとは?

CTGF (Connective Tissue Growth Factor) は臍静脈と血管内皮細胞から産生される約38kDa の分泌タンパク質です。CCN (Cyr61/CTGF /Nov)ファミリーの1種であり、CCN2とも呼ばれます。CTGFは主にModule 1 - Module 4 の4つの部位から構成されており、Module 1 はIGF 結合ドメイン、Module 2 はVWC ドメイン、Module 3 はTSP-1 ドメイン、Module 4 はCT ドメインと呼ばれ、それぞれのドメインに異なる因子が結合することで機能します。

CTGFは組織線維化において重要な役割を果たしており、線維症のバイオマーカー候補として報告されています。CTGFはTGFβによって発現が誘導され、細胞外基質を産生する筋線維芽細胞の分化やコラーゲンの合成を促進することで線維化に関与しています1)。マウスの皮膚線維化においては、TGFβが線維化の発症に、CTGFは線維化の持続にそれぞれ重要であることが示されています2)。その他にもCTGFは軟骨細胞の増殖や分化、細胞間接着などに関与することが報告されています。

CTGFには全長CTGFの他に、Module 2 - Module 3間の切断で生じるN末領域 (Module 1-2) のCTGFとC末領域 (Module 3-4)のCTGFがあります。CTGF (C末領域)は分解を受けやすく、血中には主にCTGF (全長)とCTGF (N末領域)が存在すると考えられています。CTGF (N 末領域)は特発性肺線維症 (IPF: Idiopathic Pulmonary Fibrosis)のバイオマーカーとして期待されているものの3)、CTGF(全長)とCTGF (N末領域)が混在するなかで、CTGF (N末領域)のみを測定することは困難でした。

CTGF ELISAキットワコー

当社ではCTGFの全長および全長+N末領域を測定するELISAキットをそれぞれ開発しました。2種類のELISAを組み合わせることで、特発性肺線維症 (IPF)のバイオマーカーとして期待される血液中のN末領域CTGFを正確に測定することが可能です4)

製品ラインアップ

品名 CTGF(全長) ELISAキットワコー CTGF(全長+N末領域) ELISAキットワコー
コードNo. 290-84701 292-84901
測定対象 CTGF(全長) CTGF(全長)およびCTGF(N末領域)
測定原理
検体 ヒト血清、ヒト血漿(EDTA)
※ ヘパリン血漿は非推奨
※ マウスの血清・血漿は測定不可
検量線範囲 7.81 - 500 pM
必要検体量 ヒト血清: 5 μL、ヒト血漿(EDTA): 10 μL
測定時間 2時間50分
検出法 発色

性能データ

全長、N末断片、C末断片との交差性

各ELISAキットについて、CTGFの全長、N末断片、C末断片それぞれとの交差性を確認した。

[結果]
CTGF(全長) ELISAキットワコーはCTGFの全長を、CTGF(全長+N末領域) ELISAキットワコーはCTGFの全長とN末断片を特異的に測定できた。

CCNファミリーとの交差性

CTGFを含むCCNファミリーとの交差率(500 pM, n=8)を確認した。

CTGF ELISA
(全長)
交差率 (%)
CTGF ELISA
(全長+N末領域)
交差率 (%)
CCN1 <0.5 N.D.
CCN2
(CTGF)
100 100
CCN3 <0.5 N.D.
CCN4 <0.5 N.D.
CCN5 <0.5 N.D.
CCN6 <0.5 N.D.

N.D. = 未検出

[結果]
当社キットはCCNファミリーの中で、CCN2(CTGF)に高い特異性を示した。

各社キットにおけるCTGF反応性の比較

濃度既知のヒトCTGFリコンビナントタンパク質(rHuman CTGF) ① 全長、② N末領域、③ C末領域をそれぞれ段階希釈し、各社キットで測定した。測定手順は各社キットの取扱説明書に従った。

CTGFへの反応性
① rHuman CTGF(全長)
② rHuman CTGF(N末領域)
③ rHuman CTGF(C末領域)
CTGF(全長+N末領域) ELISAキットワコー
CTGF(全長) ELISAキットワコー
R社キット N.D.
M社キット(N末領域)

+: 反応する、 -: ほとんど反応しない、N.D.: 未検出

[結果]
CTGF(全長+N末領域) ELISAキットワコーはCTGF(全長)およびCTGF(N末領域)に、CTGF(全長) ELISAキットワコーはCTGF(全長)にそれぞれ高い反応性を示した。
R社キットはCTGF(全長) にのみ高い反応性を示した。M社キット(N末領域)は当社で検討したいずれのCTGFにもほとんど反応しなかった。

アプリケーションデータ

N末領域CTGFの測定 (希釈直線性試験)

段階希釈したヒト血清もしくはヒト血漿(EDTA)を用いて、CTGF(全長+N末領域)ELISAキットワコーでCTGFの全長+N末領域を、CTGF(全長) ELISAキットワコーでCTGFの全長を測定した。さらにその差分からN末領域CTGFの量を求め、希釈直線性を確認した。

  • 検体 希釈
    倍率
    CTGF(全長+N末領域)
    (pM)
    CTGF(全長)
    (pM)
    CTGF(N末領域)
    (pM)
    ヒト
    血清
    1/1 1735 952 783
    1/2 875 495 380
    1/4 417 237 180
    ヒト
    血漿
    (EDTA)
    1/1 684 126 558
    1/2 347 66.2 281
    1/4 157 34.9 * 参考値 122

[結果]
本手法で求めたCTGF(N末領域)量について、高い希釈直線性があることが確認できた。

健常者およびIPF患者の血漿におけるN末領域CTGFの測定

健常者および特発性肺線維症(IPF)患者より採取した血漿(EDTA)から、CTGF(全長+N末領域)ELISAキットワコーとCTGF(全長) ELISAキットワコーを用いて、CTGF (全長)およびCTGF (N末領域)の量を求めた。

  • 健常者
    ID CTGF(全長+N末領域)
    (pM)
    CTGF(全長)
    (pM)
    CTGF(N末領域)
    (pM)
    1 494 83.4 411
    2 535 116 419
    3 580 155 425
    4 661 129 532
    5 383 63.5 319
    mean 109 421
    SD 36.4 75.6
  • IPF患者
    ID CTGF(全長+N末領域)
    (pM)
    CTGF(全長)
    (pM)
    CTGF(N末領域)
    (pM)
    1 1226 213 1013
    2 1004 187 817
    3 432 35.4 397
    4 1422 278 1144
    5 938 39.9 898
    6 682 73.2 609
    7 1123 168 955
    8 849 45.5 804
    9 857 60.6 796
    mean 122.3 826
    SD 90.3 221

[結果]
CTGF(全長)は健常者とIPF患者の間で統計的に有意な差は見られなかった。一方、IPF患者の血漿中CTGF (N末領域) 量は健常者よりも有意に高かった。

参考文献

  1. Biernacka, A., Dobaczewski, M., and Frangogiannis, N. G.: Growth Factors, 29(5), 196(2011).
    TGF-β signaling in fibrosis
  2. Mori T., et al.: J. Cell Physiol., 181(1), 153(1999).
    Role and interaction of connective tissue growth factor with transforming growth factor-beta in persistent fibrosis: A mouse fibrosis model.
  3. Kono, M. et al.: Clin. Chim. Acta, 412, 2211(2011).
    Plasma CCN2 (connective tissue growth factor; CTGF) is a potential biomarker in idiopathic pulmonary fibrosis (IPF)
  4. Miyazaki, O. et al.: Ann. Clin. Biochem., 47, 205(2010).
    Subtraction method for determination of N-terminal connective tissue growth factor

製品一覧

  • 項目をすべて開く
  • 項目をすべて閉じる

CTGF (全長) ELISAキット

CTGF (全長+N末領域) ELISAキット

関連製品一覧

  • 項目をすべて開く
  • 項目をすべて閉じる

抗CTGF抗体

CTGFタンパク質

  • 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
  • 掲載されている製品について
    【試薬】
    試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
    試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
    【医薬品原料】
    製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
  • 表示している希望納入価格は「本体価格のみ」で消費税等は含まれておりません。
  • 表示している希望納入価格は本記事掲載時点の価格です。