植物科学を切り開く新規ツール

ClearSee™

データ提供元:
名古屋大学大学院理学研究科
栗原大輔特任助教・水多陽子さきがけ研究者

ClearSee™は、固定、洗浄、透明化の3ステップで植物サンプルを透明化できる植物用透明化試薬です。本法は名古屋大学大学院の栗原大輔博士らにより開発されました。

植物科学の研究ツールとして、細胞レベルの現象と個体全体をつなぐシステムの解明へ応用が期待されます。

ClearSee™特長

  • 植物用透明化試薬
  • 植物の内部構造を丸ごと蛍光観察可能 (切片作成不要)
  • 操作は3ステップ (1. 固定 2. 洗浄 3. 透明化)

透明化可能組織

植物

透明化に要する期間

根:1~2日、葉・幼植物:4~7日、めしべ:2週間、成熟組織:4週間
※上記は目安です。透明化にかかる時間は植物種・組織により異なります。

透明化に必要なもの

試薬
  1. ClearSee™
  2. 超純水
  3. パラホルムアルデヒド (製品コード:160-16061)
  4. 2mol/L 水酸化ナトリウム溶液 (製品コード:194-05361)
  5. 10 x PBS (製品コード:163-25265)
  6. 1 x PBS (製品コード:164-25511)
器具
  1. オートクレーブ
  2. 局所排気装置 (ドラフトチャンバーなど)
  3. 真空ポンプ
  4. デシケーター
  5. 60℃恒温器
  6. コニカルチューブ
  7. マイクロチューブ
  8. パラフィルム
  9. ピンセット
  10. カバーガラス
  11. スライドガラス
  12. ワセリン・グリース
  13. ClearSee™透明化標本向け蛍光顕微鏡と推奨対物レンズ※※

※共焦点顕微鏡、2光子顕微鏡
※※屈折率 (RI=1.41) に合った対物レンズをご用意ください。データ取得前にお手持ちの顕微鏡メーカーに確認することを推奨いたします。

プロトコル

シロイヌナズナの葉・幼植物の透明化プロトコル例

(詳しくは、製品に添付されております添付文書をご確認ください。)

1.固定

1-1 4 %パラホルムアルデヒド溶液を用いて、サンプルを固定する。
植物生体試料は空気を含むため、溶液を加えると液面に浮いてしまうので、サンプルができるだけ固定液に浸かるようにする。
写真1. 固定液に浸けたシロイヌナズナの葉・幼植物
1-2 デシケーターにサンプルを入れ、真空ポンプにより減圧する。
写真2. 減圧中、マイクロチューブの中に泡が見える様子
1-3 減圧後、室温で30分間静置し、固定する。
1-4 1-2と1-3の作業をもう1度行う。
写真3. 固定処理後のシロイヌナズナの葉・幼植物

2. 洗浄

2-1 固定液を除き、1 x PBSを加えて1分間静置する (ドラフト内)。
2-2 1 x PBSを除き、新しい1 x PBSを加えて1分間静置する。
2-3 2-1と2-2の作業をもう1度行う。

3. 透明化

3-1 1 x PBSを除き、ClearSee™を加える。
3-2 真空ポンプにより減圧し、室温で1時間放置する。
3-3 大気圧に戻す。
3-4 遮光して室温で静置し、透明化する。
写真4. 透明になったシロイヌナズナの葉・幼植物 (3~5日後)

4. 観察

4-1 スライドガラス上にワセリンやグリースなどで囲いを作り、ClearSee™を適量のせる。
4-2 ピンセットで植物試料をカバーガラスへ移し、蛍光顕微鏡下で観察する。
  • ClearSee™で透明化した植物試料は、蛍光色素で染色することも可能です。
    下記のように、DAPI等の色素をClearSee™に加えて1時間静置後、新しいClearSee™に置換してさらに1時間静置し、その後蛍光顕微鏡下で観察します。
     細胞核を染色する場合:終濃度 10 μg/mLになるようClearSee™に添加
     細胞壁を染色する場合:終濃度 1 mg/mLになるようにClearSee™に添加

アプリケーション例

シロイヌナズナ (葉・根) の観察例

図1. 透明化したシロイヌナズナの葉
明視野では透明に見え、クロロフィルの赤い自家蛍光が無くなる。葉を丸ごと観察できるので、内部にある維管束の蛍光タンパク質も観察できる。
図2. ClearSee™で4日間処理したシロイヌナズナの根
オーキシン応答細胞の核を緑色、全身の細胞核を紫色で示す。参考文献より改変して転載。

めしべの蛍光観察例

図3. 透明化しためしべを丸ごと蛍光観察
花粉管を4色 (青、緑、黄、赤) の蛍光タンパク質で目印をつけている。参考文献より改変して転載。

他の植物種

図4. 透明化した植物の葉
ClearSee™で6日間処理したトレニア、ペチュニア、タバコ、トマト、キュウリ、イネの葉

※イネの場合、葉の表面にワックス層があり、組織の中に溶液を浸透させることが困難であるため、固定作業の前にクロロホルムなどの有機溶媒に10-30秒浸けることによりワックスを取り除いてください。

参考文献

  1. Kurihara, D. et al.: Development, 142, 4168-4179 (2015).

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