H-D交換反応(重水素化反応)

重水素の特徴は、

  • 通常の水素 (軽水素) のほぼ 2 倍の質量を持つ。
  • 天然の同位体比は 0.015% とわずかであるが、水素そのものが極めて豊富に存在するため、比較的入手が容易。
  • NMR, 質量分析などの手段で検知することが容易。
  • 放射性を持たない安定同位体であるため、取り扱いに特別な施設や技術を必要としない。
  • 化学的性質は軽水素と基本的に同等だが、やや反応速度が遅くなる。これを「重水素効果」という。

などが挙げられています。

重水素が導入された化合物が使われるようになってきてから、重水素を化合物の特定位置に導入する方法のニーズは高まっています。これまでに、塩基でプロトンを引き抜き求核剤とした後に重水を反応させる方法、ブロモベンゼン-d5やヨードメタン-d3などの予め重水素が導入されたビルディングブロックを用いる方法、LiAlD4やNaBD4などの重水素が導入された還元剤を用いる方法などが多く使用されています。

その他、直接化合物に重水素を導入できる方法も報告例があるものの、特殊な設備を要する方法、基質適用が限定的な方法が多いです。

当社では、化合物の水素を重水素に変換するH-D交換反応により、様々な重水素標識化合物を合成することが出来ます。基質に応じた反応条件を開発しており、様々な基質に対応することができます。特に芳香族化合物の重水素化は得意としています。

学術コンテンツ

特長

  • 化合物の水素を重水素に直接交換
  • 重水素源は一番安価な重水を使用
  • 量産化可能

参考文献

(1) Sajiki, H. et al. : Chem. Pharm. Bull, 66, 21 (2018).
(2) 佐治木 弘尚 : 薬学雑誌, 133, 1177 (2013).
(3) 江嵜啓祥, 栗田貴教, 藤原佑太, 前川智弘, 門口泰也, 佐治木弘尚 : 有機合成化学協会誌, 65, 1179 (2007).

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