ヒトiPS 細胞由来腸管上皮細胞

富士フイルム F-hiSIEC™

富士フイルム社のF-hiSIEC™は、ヒトiPS細胞を小腸の腸管上皮細胞に分化誘導した創薬支援用細胞です。 ヒト生体に近い機能を有し、薬物の吸収性を高精度に評価できる画期的な細胞であるため、経口剤開発の効率化に大きく貢献します。
当社がグループ内で保有する世界トップレベルのiPS細胞関連技術と、名古屋市立大学 大学院薬学研究科 松永民秀教授が確立した腸管上皮細胞への分化誘導技術などを組み合わせて開発したヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞です。

特長

・ヒト生体由来腸管上皮細胞と同等のCYP3A4酵素活性

腸管上皮細胞が薬物を吸収する際に、薬物代謝酵素の中で最も重要な機能を果たすCYP3A4の酵素活性がヒト生体由来腸管上皮細胞と同等です。

・ヒト生体同等の主要トランスポーター遺伝子発現量

薬物の腸管上皮細胞内への取り込みと細胞外への排出をつかさどるトランスポーター遺伝子の発現量がヒト生体由来腸管上皮細胞とほぼ同等です。

・さまざまな細胞培養容器で使用可能な高い汎用性

プレートやセルカルチャーインサートなどさまざまな細胞培養容器で使用可能です。また、セルカルチャーインサートに播種することで、バリア機能が確保できます。

評価データ

CYP3A4活性

腸管上皮細胞が薬物を吸収する際に、薬物代謝酵素の中で最も重要な機能を果たすCYP3A4の酵素活性が、Caco-2細胞に対して約30倍、ヒト生体由来腸管上皮細胞と同等です。

代謝酵素の遺伝子発現

第1相の薬物代謝酵素(CYP3A4、CYP2C9、CYP2C19、CES2)、第2相の薬物代謝酵素(UGT1A1、UGT2B7、SULT1B1)、二糖加水分解酵素(Sucrase-Isomaltase,Lactase,Trehalase,Maltase-Glucoamylase)について、生体小腸同等の遺伝子発現を⽰しています。

トランスポーターの遺伝子発現

薬物トランスポーター(MDR1、MRP1、MRP2、 MRP3、BCRP、OCT1、OATP2B1)、グルコーストランス ポーター(GLUT2、GLUT5、SGLT1)、ペプチドトランスポーター(PEPT1)、核酸トランスポーター(CNT1、 CNT2、ENT1、ENT2)、コレステロールトランスポーター(ABCG5、ABCG8、NPC1L1)、カルシウムトラン スポーター(CaT1)について、生体小腸同等の遺伝子発現を⽰しています。

腸管上皮細胞マーカー

腸管上皮細胞マーカーについて、⽣体⼩腸同等の遺伝⼦発現を⽰しています。

各種腸管上皮細胞の存在

吸収上皮細胞(VIL1)、 杯細胞(MUC2)、 内分泌細胞(REG4)、 パネート細胞(LYZ)、 M細胞(GP2)、 タフト細胞(DCLK1)のマーカー遺伝子が発現しており、存在が示唆されております。

バリア機能

セルカルチャーインサートに播種することで、バリア機能が確保できます。
※ Occludinを免疫染色した画像
・細胞を解凍、播種後9日目のTEER値

実験条件

  • 播種細胞数:10× 104 cells/well
  • セルカルチャー インサート:Merck Millipore社製(#MCHT24H48)
  • 24 well plate:Greiner Bio-One(#662-160)

安定した性能(ロット間差)

CYP3A4酵素活性及びMDR1(P-gp)トランスポーター活性は、各ロット間で安定した数値を示しています。

本製品はiPSアカデミアジャパン株式会社よりiPS細胞技術に関する特許の非独占的実施権の許諾を受けております。

解凍・播種~培地交換~試験スケジュール

本製品は細胞を解凍・播種した翌日から、使用例1の通り、一日おきに培地交換を行ってください。培養9日目~13日目の間で試験実施可能ですが、12日目以降の試験には F-hiSIEC™ Culture Mediumの追加購入が必要です。

土曜日及び日曜日の培地交換を避ける場合は、使用例2の通り、木曜日に解凍・播種し、培養を開始してください。この場合、11日目月曜日から13日目水曜日まで試験実施可能です。

* 初日の播種の際はF-hiSIEC™ Seeding Mediumをご使用ください。
* 培養期間中の培地交換の際はF-hiSIEC™ Culture Mediumをご使用ください。

※器材、特にCell Culture Insert はCorning 社製品を推奨します。

  • T-issue Culture Plate
  • Cell Culture Insert:24 well plate
  1. ① Corning製トランズウェル(プレートとインサートのセット:#3413)
  2. ② Greiner Bio-One製(プレート:#662-160、インサート:#662-640)

※試薬は下記を推奨しております。

  • Matrigel Matrix Growth Factor Reduced(CORNING #354230)
  • DMEM / F12(1:1、 Gibco #11330-032)
  • F-hiSIEC Seeding Medium

学会発表資料

分類 時期 学会名 要旨 資料
免疫・炎症 2019年11月 日本食品免疫学会 設立15周年記念学術大会 発表ポスター F-hiSIECの特性、腸管免疫評価への応用 [PDF]
薬物動態 2019年11月 日本動物実験代替法学会 第32回大会 発表ポスター F-hSIECの特性、腸管吸収評価モデルとしての有用性 [PDF]
薬物動態 2019年12月 日本薬物動態学会 第34回年会 発表ポスター F-hSIECの特性、腸管吸収評価モデルの機能 [PDF]
薬物動態、免疫・炎症、ウイルス 2020年10月 iPS細胞由来分化細胞セミナー 発表資料 薬物間相互作用評価、腸管免疫評価、腸管ウイルス培養系の可能性 [PDF]
薬物動態、免疫・炎症、ウイルス 2020年11月 日本動物実験代替法学会 第33回大会 発表ポスター 薬物動態評価、腸管免疫評価、ウイルス評価への応用 [PDF]
薬物動態 2020年12月 日本薬物動態学会年会 第35回年会 発表資料 薬物間相互作用評価、動態予測精度改善検討 [PDF]
免疫・炎症 2021年3月 日本農芸化学会2021年度大会 M細胞による取込み機能、Toll様受容体や脂肪酸受容体を介した免疫応答機構 [PDF]
腸内細菌、免疫・炎症 2021年3月 第94回日本細菌学会総会 腸内細菌機能評価への応用:M細胞による取込み機能、Toll様受容体や脂肪酸受容体を介した免疫応答機構 [PDF]
免疫・炎症 2021年7月 第58回日本消化器免疫学会総会 消化管炎症モデル、炎症モデルにおける腸内細菌代謝物の影響評価 [PDF]
毒性評価 2021年7月 第48回日本毒性学会学術年会 消化管毒性評価モデルへの応用:抗がん剤の細胞毒性評価、Notch阻害による分化異常評価 [PDF]
薬物動態、免疫・炎症 2021年11月 日本薬物動態学会 第36回年会 消化管炎症モデル、M細胞による取り込み評価、薬物動態に関するF-hiSIECを用いた研究例の紹介 [PDF]
毒性評価、免疫・炎症 2022年5月 第49回日本毒性学会学術年会 M細胞によるナノ粒子取込み機能評価、消化管炎症モデルへの応用 [PDF]
薬物動態 2022年11月 日本薬物動態学会 第37回年会 発表ポスター 動態予測精度改善検討、腸管吸収予測性向上の検討 [PDF]
腸内静菌、免疫・炎症 2023年6月 第27回腸内細菌学会学術集会 嫌気性腸内細菌とF-hiSIECの共培養による相互機能評価 [PDF]
薬物動態 2023年11月 日本動物実験代替法学会 第36回大会 F-hiSIEC改良法(改良培地×改良培養法)による消化管代謝評価 [PDF]
免疫・炎症 2023年11月 日本食品免疫学会第19回学術大会 F-hiSIECの食品免疫研究での応用例:腸管吸収、免疫応答・炎症、腸内細菌共培養 [PDF]
薬物動態 2023年12月 第97回日本薬理学会年会 F-hiSIEC改良法(改良培地×改良培養法)による消化管代謝評価、免疫・炎症評価 [PDF]
毒性評価 免疫・炎症 2024年2月 ヒト iPS 細胞由来分化細胞の創薬応用 webinar 2024 ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞(F-hiSIEC™)の基本性能および消化管吸収モデル等への活用について [PDF]
薬物動態 2024年6月 第31回HAB研究機構学術年会 新規培養法によるヒトiPS 細胞由来腸管上皮細胞を用いた薬物のヒト小腸代謝回避率の評価 [PDF]
毒性評価、 薬物動態 2024年7月 第51回日本毒性学会学術年会 NEW ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞(F-hiSIEC™)の新規培養法による、薬物代謝能の改善と毒性評価への展開可能性 [PDF]

関連論文

細胞特性・アプリケーション全般

吸収・代謝評価

腸内細菌共培養・ウイルス培養

MPS(生体模倣システム)

製品一覧

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