向山酸化
Swern酸化は副反応も少なく実用性が高い一方で、低温無水条件が必要であったり、有毒な一酸化炭素の生成、ジメチルスルフィド由来の悪臭などが懸念されます。また、Dess-Martin試薬などに代表される高原子価ヨウ素試薬には、潜在的な爆発性などがあります。 ベンゼンスルフェンアミドを用いる向山酸化は、上記の難点を克服した酸化反応のひとつです。 室温で取り扱い容易な試薬を用いて、温和な条件(室温、弱塩基性条件)で酸化が進行します。 TPAP酸化やTEMPO酸化のような触媒的条件であり、大量スケール合成にも向いています。
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基本文献
- Mukaiyama, T., Matsuo, J.-i., Yanagisawa, M.: Chem. Lett., 29, 1072 (2000). DOI: 10.1246/cl.2000.1072
- Mukaiyama, T., Matsuo, J.-i., Kitagawa, H.: Chem. Lett., 29, 1250 (2000). DOI: 10.1246/cl.2000.1250
- Matsuo, J.-i., Kitagawa, H., Iida, D., Mukaiyama, T.: Chem. Lett., 30, 150 (2001).DOI: 10.1246/cl.2001.150
- Mukaiyama, T., Matsuo, J.-i., Iida, D., Kitagawa, H.: Chem. Lett., 30, 846 (2001). DOI: 10.1246/cl.2001.846
- Matsuo, J.-i., Iida, D., Tatani, K., Mukaiyama, T.: Bull. Chem. Soc. Jpn., 75, 223 (2002). DOI: 10.1246/bcsj.75.223
- Matsuo, J.-i., Iida, D., Yamanaka, H., Mukaiyama, T.: Tetrahedron, 59, 6739 (2003).DOI: 10.1016/S0040-4020(03)00479-4
- 有機合成化学協会誌 , 62, 574 (2004).DOI: 10.5059/yukigoseikyokaishi.62.574
反応機構
Corey-Kim酸化や Swern酸化 における活性種生成、および塩基による脱プロトン化を系中で同時に行うという発想に基づいています。実際の活性種であるイミドイルクロリドはNCS酸化により系中で発生させています。
反応例
リチウムエノラートを当量のイミドイルクロリドで酸化すると、α,β-不飽和カルボニル化合物が得られます。HaouamineAの合成に使用した例1)があります。
Taxolの合成の中間体における適用例があります2)。多官能基化合物でも、官能基を維持したまま反応が進行します。
参考文献
- Burns, N. A., Krylova, I. N., Hannoush, R. N., Baran, P. S.: J. Am. Chem. Soc., 131, 9172 (2009). DOI:10.1021/ja903745s
- Mukaiyama, T. et al.: Chem. Eur. J., 5, 121 (1999). DOI: 10.1002/(SICI)1521-3765(19990104)5:1<121::AID-CHEM121>3.0.CO;2-O
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