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メタクリル酸3-メチル-3-ブテン-1-イル 3-Methyl-3-buten-1-yl Methacrylate

有機合成用
for Organic Synthesis
規格含量 :
98.0+% (capillary GC)
製造元 :
富士フイルム和光純薬(株)
保存条件 :
室温
CAS RN® :
156291-88-2
分子式 :
C9H14O2
分子量 :
154.21
適用法令 :
危4-2(非水溶性)-III
GHS :
  • 構造式
  • ラベル
  • 荷姿
SDS
比較
製品コード
容量
価格
在庫
販売元
132-19301
JAN
4548995093783
100mL
希望納入価格
7,700 円

16

販売元
134-19305
JAN
4548995093790
500mL
希望納入価格
22,000 円

6

ドキュメント

SDS
製品規格書
スペクトルデータ
検査成績書
校正証明書

製品概要

IPEMA (Isoprenyl Methacrylate)は、異なる二つのラジカル反応性基をもつ架橋剤であり、空気下でのUV硬化において酸素による硬化阻害を低減し硬化を促進させます。その他に、IPEMAは硬化膜に硬度と柔軟性を付与する反応性希釈剤として働き、段階的にリン酸エステルを付加させることによって難燃性を付与することができます。

IPEMAの構造式

IPEMAの物性および特長

<IPEMAの物性>

IPEMAの物性

<IPEMAの特長>

  • 反応性の異なる二つのオレフィンを有する架橋剤
  • 空気雰囲気下でのUV硬化において、酸素による反応阻害を抑制し硬化を促進させる
  • 硬化膜に硬度・柔軟性を付与する反応性希釈剤として有用

製品の紹介

<UV硬化の促進>

IPEMAを添加剤として用いたUV硬化の時間変化を図1に示します。モノマーとしてトリアクリル酸ペンタエリトリトール、ラジカル重合開始剤として1-ヒドロキシシクロへキシル=フェニル=ケトンを用い、リアルタイムIR測定で反応率の変化を追跡しました。酸素遮断条件では開始30秒で反応率74.5%で重合反応が進行したのに対し(凡例1)、空気雰囲気下では酸素の影響で反応率は4.3%に留まりました(凡例6)。一方、IPEMAを添加した場合、空気雰囲気下でも反応率はそれぞれ44.5%を示し、反応率が10倍以上向上しました(凡例3)。また、反応率の時間変化を見ると、IPEMAを添加することによって、酸素遮断条件と同様にUV照射直後から反応率が急上昇していることも大きな特長です。IPEMAがUV硬化を促進するメカニズムは明らかになっていませんが、イソプレノールやメタクリル酸メチルの添加ではUV硬化を促進する効果が見られないことから、イソプレニル基とメタクリロイル基を同一分子内にもつことが促進効果に寄与すると推定されています。

DPNG、IPEMA添加によるUV硬化の促進
DPNG、IPEMA添加によるUV硬化の促進
DPNG、IPEMA添加によるUV硬化の促進

図1. UV照射によるオレフィン反応率の時間変化

<オレフィンの反応性について>

IPEMAは、メタクリロイル基とイソプレニル基の異なる2つのラジカル反応基をもつ二官能モノマーです。それそれの反応性基のQ-e値をモデル化合物から推定した結果を表1に示します。メタクリロイル基は高いQ値(0.78)とプラスのe値(0.40)であることから反応性が高いのに対し、イソプレニル基は低いQ値(0.034)とマイナスのe値(-1.51)であることから反応性はメタクリロイル基よりかなり低いことがわかります。

オレフィンの反応性について

表1. ラジカル反応性基のQ-e値

ラジカル反応性基のQ-e値

したがって、IPEMAはアクリロイル基との共重合時に特異な挙動を示します(図2)。メタクリロイル基はアクリロイル基と容易に重合しポリマー中に取り込まれるのに対し、イソプレニル基はアクリロイル基との反応性が低くポリマー中に取り込まれにくいことから、重合中盤までイソプレニル基は残存します。そのまま重合を継続するとイソプレニル基もやがて重合して架橋に関与しますが(図2、反応①)、残存するイソプレニル基を官能基化することも可能です(図2、反応②)。この2つのイソプレニル基の反応パターンによって、IPEMAは樹脂に様々な機能を付与することができます。

IPEMAの特異な反応挙動

図2. IPEMAの特異な反応挙動

<硬化膜の硬度と柔軟性の付与>

先ほど説明したIPEMAの反応挙動の一つである特異な架橋構造を応用した例として、硬化膜作成時に使用する反応性希釈剤を紹介します。反応性希釈剤は、粘度を低減してハンドリング性を向上させる目的で使用しますが、硬化性の悪化や硬化膜の物性低下が課題として挙げられます。
IPEMAを反応性希釈剤として多官能アクリレートに配合した際の硬化膜物性を表2に示します。一般的な反応性希釈剤である二官能アクリレートモノマーHDDAと比較して、IPEMAは粘度を低減しながらも硬化に必要な光量も少なく、酸素阻害を受けにくいことがわかります。さらに、得られた硬化膜には特異な物理的性質を付与し、優れた表面硬度と耐擦り傷性に加え、耐屈曲性試験では6 mmΦという高い耐屈曲性を示しました。本来トレードオフの関係である硬度と柔軟性を両立できている点において、 IPEMAを配合した硬化膜は興味深い材料であると言えます。また、写真で示すようにIPEMAを配合した硬化膜は基材の反りが小さく、HDDA配合の硬化膜と比較してカールが抑制されていることがわかります。
これらの特異な物性は、反応性に富むメタクリロイル基と重合終盤に取り込まれるイソプレニル基を同一分子内にもつ分子構造に由来していると考えられます。官能基の重合タイミングが異なることにより、硬化時の応力が緩和された架橋の進行や、特異な架橋構造の形成が進行していると解釈され、IPEMAのユニークな機能発現に繋がっています。

表2. 反応性希釈剤による塗膜物性の変化

反応希釈剤による塗膜物性の変化

<樹脂に対する難燃性の付与>

もう一つのIPEMAの反応挙動である官能基化重合を応用した例として、りん酸エステルを用いた樹脂への難燃性付与を紹介します。近年、難燃剤の規制厳格化によりノンハロゲン化の要求が高まっており、りん化合物を始めとするノンハロゲン系難燃剤の開発が盛んに行われています。しかし、低分子難燃剤には燃焼時に延焼・火災拡大の原因となる燃焼物のドリップ(溶融滴下)や難燃剤のブリードアウトなどの課題があります。IPEMAは重合中盤まで残存するイソプレニル基にりん化合物を付加させて高分子化することで、低分子難燃剤に見られるドリップやブリードアウトといった課題を解決し、樹脂の不燃化を簡便に達成できます。
主剤としてメタクリル酸メチル(MMA)、難燃剤として低分子りん酸エステルを用いた一般プロセス製のアクリル板と、IPEMAと亜りん酸エステルを添加した官能基化重合プロセス製のアクリル板の燃焼の様子を図3に示します。一般プロセス製では低分子りん酸エステルの可塑効果により燃焼時にドリップする一方で、官能基化重合プロセス製ではドリップが抑制され、ノンハロゲンでの不燃性を達成しました。IPEMAを用いたりん化合物の導入が難燃性付与に好適に働いていることが示されました。

IPEMAを用いたポリメタクリル酸メチルに対する難燃性の付与

IPEMAを用いたポリメタクリル酸メチルに対する難燃性の付与

IPEMAを用いたポリメタクリル酸メチルに対する難燃性の付与

IPEMAを用いたポリメタクリル酸メチルに対する難燃性の付与

図3. IPEMAを用いたポリメタクリル酸メチルに対する難燃性の付与

さらに、IPEMAを用いた官能基化重合によるりん導入技術をコーティングにも応用しました(表3)。汎用の二官能モノマーHDDAと比較し、IPEMAを使用した条件で優れた難燃性能を示し、高い硬度を有する硬化膜を得ることができます。

表3. ポリウレタン硬化膜における難燃性能評価

ポリウレタン硬化膜における難燃性能評価

<参考文献>

  1. Grulke, E. A. et al. : “Polymer Handbook”, Wiley, vol. 2 (2003).
  2. 野口大樹:フォトポリマー懇話会ニュースレター, p. 5, No. 94, April (2021).
  3. 加藤直也、福本隆司:月刊MATERIAL STAGE, 22, 76 (2022).

*本品は株式会社クラレの開発品です。写真は同社よりご提供していただきました。

概要・使用例

概要 本品は、UV硬化を促進することに加え、反応性の異なる二つの重合性基を有する特長から、重合反応後に新たな機能付与を行うことができる架橋剤です。主な用途として、UV硬化促進、樹脂物性の向上、樹脂への難燃性付与などが挙げられます。

物性情報

外観 無色~ほとんど無色、澄明の液体
溶解性 エタノール及びアセトンに溶けやすく、水に難溶である。「溶解性情報」は、最適溶媒が記載されていない場合がございます。

「物性情報」は参考情報でございます。規格値を除き、この製品の性能を保証するものではございません。
本製品の品質及び性能については、本品の製品規格書をご確認ください。
なお目的のご研究に対しましては、予備検討を行う事をお勧めします。

製造元情報

別名一覧

  • メタクリル酸イソプレニル
    IPEMA
  • 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
  • 製品規格・包装規格の改訂が行われた場合、画像と実際の製品の仕様が異なる場合があります。
  • 掲載されている製品について
    【試薬】
    試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
    試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
    【医薬品原料】
    製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
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