同仁化学 精子染色キット
*本キットは試験・研究用途です。医療用その他の目的には使用できません。 *本キットを使用して得られた結果の評価及び利用は、お客様の責任と判断において行ってください。
はじめに
生殖細胞である精子は、その形成過程で核タンパク質がヒストンからプロタミンに置換されます。プロタミンはジスルフィド結合によって高次構造を形成します。これにより、体細胞核と異なり、精子核ではクロマチン構造が高度に凝集しています。
本キットは、プロタミンに多く含まれるジスルフィド結合を還元し、チオール反応性蛍光色素 (Thiol-specific Dye Blue) を還元したチオール基に結合させ、同時にDNA 染色蛍光色素 AO (Acridine Orange) により二重染色することができるキットです。UV 光 (Blue) でThiol-specific Dye Blue を励起させることで生じた蛍光エネルギーが、その近傍のDNA と結合したAO に蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) を起こし、精子頭部が強い緑色蛍光を発します。
精子プロタミン-DNA 複合体の染色原理
Assay Buffer 中のThiol-specific Dye Blue, AO の蛍光スペクトル
特長
- 低倍率でも視認性の高い精子の観察が可能
- 精子頭部に強い緑色の蛍光を発する
- S/N 比が高い
- フローサイトメトリーによる精子選別条件の検討に応用できることが期待
キット内容・必要なもの
キット内容 容量:100テスト
コンポーネント | 数量 |
---|---|
Thiol-specific Dye Blue | 10 μL×1本 |
AO Solution | 75 μL×1本 |
Reducing Agent | ×1本 |
Assay Buffer | 40 mL×1本 |
必要なもの
- 100-1,000 µl、20-200 µl、2-20 µl、0.1-2 µl マイクロピペット
- コニカルチューブ
- Proteinase K 溶液
- Paraformaldehyde (PFA) / PBS 溶液 (4%)
- スライドガラス、カバーガラス
- 封入剤 (固定細胞用褪色防止剤)
実験例:Baecchi 染色との比較
精子の染色は、従来よりBaecchi 染色と呼ばれる古典的な方法がよく使われてきましたが、その特異性が低いため視認性が悪く、精子の識別が困難という課題がありました。
本キットは、チオール反応性蛍光プローブ (Thiol-specific Dye Blue) 及びDNA結合蛍光プローブ (AO) を用いた二重染色によって、UVによって励起したThiol-specific Dye Blue の蛍光エネルギーが蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) によりAO を励起させ、精子頭部に強い緑色の蛍光を発するため、視認性の高い精子の観察が可能です。
Experimental conditions
- Fluorescence microscopy (BX-53)
- UV: Ex = 340-390 nm, Em = 410~
- Gain: ×1
- Exposure time:10 ms
※画像提供: 岐阜県警察本部 刑事部 科学捜査研究所 酒井 優治 先生
実験例:免疫染色法との比較
人間の精子頭部に対して特異的な蛍光タグ付きの抗体を用いた免疫染色のキット (I社) と本キットとの比較を行いました。
購入した精子を使って、市販品と性能を比較した結果、本キットは、S/N 比が高く、低倍率でも高い視認性で精子を探索することが可能です。
※画像提供: 岐阜県警察本部 刑事部 科学捜査研究所 酒井 優治 先生
実験例:フローサイトメトリーでの検出
本キットを用いて、購入したSemen (精液)、Buccal cells (口腔内細胞) をフローサイトメトリー (SH800, Sony) で測定しました。
その結果、Semen (精液) のみ2 つのフィルター (DAPI/AF488) でダブルポジティブな集団が観察されました。フローサイトメトリーによる精子選別条件の検討に応用できることが期待されます。
※画像提供: 岐阜県警察本部 刑事部 科学捜査研究所 酒井 優治 先生
Q&A
- 1キットでどれくらいの検討ができますか?
- スライドガラスに塗布したサンプル (スポット 6 mm) の場合、100枚分の検討が可能です。(スライドガラス1 枚にRA working solution、Staining solutionをそれぞれ30 µL で処理した場合)
- サンプルの塗布方法を教えてください。
- 精液が付着した担体 (綿棒やガーゼなど) から、 Assay Buffer もしくはAssay BufferにSDSを0.5%の比率で加えた溶液を用いてボルテックスまたはピペッティングにて精子を抽出して下さい。その溶液を遠心分離 (1,000G-6,000G, 5 min) し、沈殿した精子を蒸留水で再懸濁してスライドガラスに塗布して下さい。塗布後のサンプルは、十分に乾燥させてください。
- Proteinase K 処理方法を教えてください。
- 精液が付着した担体 (綿棒やガーゼなど) から、 Assay BufferにProteinase K 溶液 (Qiagen 社) を5%の比率で加えた溶液、もしくはこの溶液にSDSを0.5%の比率で加えた溶液を用いてボルテックスまたはピペッティングにて精子を抽出し、56℃で15 分震盪して下さい。その溶液を遠心分離 (1,000 x g-6,000 x g, 5 min) し、沈殿した精子を蒸留水に置換してからスライドガラスに塗布してください。塗布後のサンプルは、十分に乾燥させてください。
- サンプル数が多く、各処理 (固定化、還元、染色) 時間が長くなった場合、結果に影響しますか?
- 各処理 (固定化、還元、染色) 時間が5-15分間であれば影響がないことを確認しています。
製品一覧
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