同仁化学 細胞内酸素検出キット
本キットを用いることで、「細胞内」の酸素濃度変化をりん光で検出できます。
温度調節・時間分解蛍光対応プレートリーダーまたは蛍光顕微鏡を用いての検出が可能です。
本品は群馬大学大学院理工学府 吉原准教授らにより開発された製品です。
ミトコンドリア活性と低酸素状態の検出に
好気性生物は主にミトコンドリアの酸化的リン酸化でATPを産生しており、その過程で酸素は消費されるため、酸素は我々の生命維持に必要不可欠な物質の一つです。また、何らかの要因によって細胞内が慢性的な低酸素状態になると、がんや虚血性疾患などが引き起こされることが知られており、酸素は重要な指標として測定されています。
特長
- 細胞内の酸素濃度変化をりん光で検出できる
- 温度調節・時間分解蛍光対応プレートリーダーまたは蛍光顕微鏡を用いて検出可能
- 空気中の酸素の流入を防ぐミネラルオイルを同梱
原理・キット内容
本キットには、下記2つのコンポーネントが同封されています。
- Intracellular Oxygen Probe:細胞中の酸素濃度が低下すると、りん光強度が高くなる特性を持つ
- Mineral Oil:ウェル内への酸素流入を防ぐ(滴下方法の動画はこちら)
試薬の添加だけで細胞内の酸素濃度に応じたりん光強度を蛍光マイクロプレートリーダーまたは蛍光顕微鏡にて検出できます。蛍光マイクロプレートリーダーでの測定の場合は、取扱説明書に記載の計算式からりん光寿命として算出します。
※プレートリーダーでの測定には、温度調節、時間分解蛍光測定に対応したプレートリーダーが必要です。
容量 | コンポーネント | 数量 |
---|---|---|
100 tests | Intracellular Oxygen Probe | 1本 |
Mineral Oil | 10 mL×1本 | |
300 tests | Intracellular Oxygen Probe | 3本 |
Mineral Oil | 10 mL×3本 |
実験例:FCCP 処理による細胞内酸素の変化
ミトコンドリアの酸素消費を増加させる FCCP で 1 時間処理した HepG2 細胞において、細胞内酸素変化(りん光寿命)を蛍光マイクロプレートリーダーにて測定しました。その結果、FCCP 処理した細胞では control と比較してりん光寿命が増加したことから細胞内酸素の減少を確認できました。
<使用装置>
TECAN社製 InfinitePRO 200
<実験条件>
細胞:HepG2 細胞(7.2×104 cell/well)
薬剤:FCCP(終濃度:4 μmol/L)
実験例:蛍光顕微鏡でのイメージング解析
トリプルウェル ガラスベースディッシュ(型番:3970-103, IWAKI 社製)に播種した HepG2 細胞をミトコンドリアの酸素消費を増加させる FCCP を 2 時間処理し、本製品にて細胞内酸素変化をイメージング解析しました。control と比較して FCCP 処理 した細胞では Intracellular Oxygen Probe のシグナルの増加が確認されたことから細胞内酸素の減少を検出することができました。
<使用装置>
共焦点顕微鏡 (LSM 800, ZEISS 社製 )
検出条件:Ex=488 nm / Em=550-700 nm, 1%, 700 V
レンズ倍率:40 倍 , Scan speed:3
実験例:Glucose oxidase 処理による細胞内低酸素状態の検出
培地中の溶存酸素を消費させ低酸素状態へ誘導させる Glucose oxidase を処理した 3 種類の細胞(HeLa 細胞、HepG2 細胞、Jurkat 細胞)の細胞内酸素変化(りん光寿命)を蛍光マイクロプレートリーダーにて測定しました。その結果、 Glucose oxidase 処理した細胞では control と比較してりん光寿命が増加したことから細胞内酸素の減少を確認できました。
<使用装置>
TECAN社製 InfinitePRO 200
<実験条件>
細胞:HeLa 細胞(7.8×104 cell/well), HepG2 細胞(7.2×104 cell/well), Jurkat 細胞(1.0×105 cell/well)
薬剤:Glucose oxidase(終濃度:0.5 U/mL)
実験例:低酸素環境下における酸素応答性の検出
測定環境中の酸素濃度を変化させた HT-29 細胞の細胞内酸素の変化をイメージング解析しました。
その結果、大気中の酸素濃度に相当する 21% の条件と比べて、2.5% の低酸素濃度条件下ではIntracellular Oxygen Probe のシグナルの増加が確認されました。
<使用装置>
共焦点レーザー走査型顕微鏡(FV3000, エビデント社製)
検出条件:Ex=488 nm / Em=560-660 nm, 20 µs/pixel(ピクセル数:512×512, 2.486 µm/pixel)
データ提供:群馬大学大学院理工学府 吉原准教授
Q&A
- 1キットあたりの測定可能なサンプル数の目安を教えてください。
- 1つの細胞種で同一細胞数にて実験する場合、100 testsで30サンプル、300 testsで90サンプル測定可能です。
*2種類以上の細胞種や複数の細胞数を実験に用いる場合は、別途BlankとControlを準備する必要があり測定可能なサンプル数が変わります。詳細については、取扱説明書に実験系に応じたプレートレイアウトの例を記載しておりますのでご参照ください。
- Mineral Oilに細胞毒性はありませんか?
- Mineral oilを添加した細胞においてCell Counting Kit-8による細胞毒性測定を行ったところ、毒性は確認されませんでした。
- Working solutionは保存できますか?
- Working solutionは保存できません。用時調製してください。
- Intracellular Oxygen ProbeやMineral Oilは凍結融解を繰り返しても測定に影響しませんか?
- Intracellular Oxygen ProbeおよびMineral Oilは凍結融解を繰り返した場合も測定に影響がないことを確認しています。
- なぜプレートリーダー内でマイクロプレートを恒温にするのですか?
- プレートリーダーで測定する際、測定前のマイクロプレートのインキュベーションを、インキュベーター(ヒートブロックや恒温槽など)で行うとプレートリーダー内との温度差が生じ正確な酸素濃度の変化が測定できません。再現性の低下に繋がります。そのため必ずプレートリーダー内で行って下さい。
<操作概要> 取扱説明書の浮遊細胞:操作7),12)、付着細胞:操作7),12)にあたります。
- Topリーディングでも測定できますか?
- Topリーディングでの測定は、オイルの影響を受けるためお奨めしません。Bottomリーディングでの測定を推奨しております。
- 浮遊細胞の実験例(プレートリーダー)を教えてください。
- Jurkat細胞の実験例をご案内します。
<操作>
- コニカルチューブに入れたJurkat細胞(1.0×106 cells/ml)をworking solutionに懸濁した。
- 細胞懸濁液を培養容器に移し、インキュベーター(37℃、5%CO2存在下)で1時間培養した。
- 操作2をコニカルチューブに回収し、遠心(1500 rpm, 3 min)後、上清を除去した。
- RPMI培地(10% FBSを含む)を添加し細胞を懸濁させ、再度遠心(1500 rpm, 3 min)し、上清を除去した。
- Intracellular Oxygen Probeを取り込ませていない細胞(Blank)とProbeを取り込ませた細胞(controlとGlucose oxidase)をそれぞれRPMI培地(10% FBSを含む)に懸濁し、96穴黒色クリアボトムプレートに100 µl(1.0×105 cells/well)ずつ播種した。
- 予め37℃に設定しておいたプレートリーダーの中にマイクロプレートを入れ、10分間インキュベーションした。
- 2条件での強度をタイムコースで10分毎に20分間測定した(Ex=480 nm/Em=590 nm, Bottomリーディング)。
- BlankとControlのウェルにRPMI培地(10% FBSを含む)、Sample 1のウェルにRPMI培地(10% FBSを含む)で希釈したGlucose oxidase(5 U/ml)を10 µlずつ各ウェルに添加した。
- 薬剤添加後、直ちにMineral Oilを1滴ずつ全てのウェルに滴下した。
- 37℃に設定したプレートリーダーの中にマイクロプレートを入れ、10分間インキュベーションした。
- 2条件での強度をタイムコースで10分毎に200分間測定した(Ex=480 nm/Em=590 nm, Bottomリーディング)。
- 計算式を用いて得られた強度の値から、りん光寿命の値を算出し、グラフを作成した。
- 血清不含培地でも測定できますか?
- 測定自体は可能です。ただし、血清含有時と異なる結果が得られる可能性がございます。結果を比較する場合は毎回同じ培地条件で測定してください。
製品一覧
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- 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
- 掲載されている製品について
- 【試薬】
- 試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
- 試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
- 【医薬品原料】
- 製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
- 表示している希望納入価格は「本体価格のみ」で消費税等は含まれておりません。
- 表示している希望納入価格は本記事掲載時点の価格です。