水溶性アクリルアミドモノマー

アクリルアミドモノマーから得られるポリマーは、UV塗料、接着剤、レンズ材料など様々な用途に利用されています。特に最近、アクリルアミドポリマーは生体適合性が高いことから、細胞培養シートなどのバイオマテリアルとして注目を集めています。ここでは、水溶性で安全性に優れているアクリルアミドモノマーとアクリルアミド基を複数有する架橋剤を紹介します。

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特長

  • 水溶性・安全性に優れている
  • 1分子内に2~4個のアクリルアミド基を有する架橋剤4種 (FOM-03006~03009)
  • ベタイン構造に起因する高い親水性を付与できるモノマー1種 (FOM-03010)
  • 生体適合材料、塗料、接着剤、インク、洗浄剤、レンズ材料、凝集剤等の研究に!
  • 量産化対応も可能
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アクリルアミドポリマーについて

アクリルアミドポリマーは、水溶性ポリマーとして知られており、アミドのカルボニル基と水分子との間で水素結合することによって水和され、水に溶解します。用途としては、UV塗料、接着剤、レンズ材料、超吸収剤、凝集剤、油回収剤など幅広く用いられていますが、近年生体適合性が高いことからバイオマテリアルとして注目を集めています。ポリN-イソプロピルアクリルアミド (poly(N-isopropylacrylamide): PIPAAm) は、水中において32℃に下限臨界溶解温度 (lower critical solution temperature: LCST) をもつポリマーであり、32℃以上では脱水和による収縮構造をとり、32℃以下では水和による膨潤状態となります (図1)。これらの特長を利用して、PIPAAmは細胞シートを作成する細胞培養器材に応用されています1)。この培養器材は、ポリスチレンの基板上にPIPAAmがナノメートルオーダーでグラフトされており、細胞培養が行われる温度 (37℃) ではPIPAAmは疎水性を示すため細胞は表面に接着されますが、室温付近まで冷却すると親水性を示すため、表面上に培養した細胞を非侵襲的に回収することができます。実際に、細胞培養器材を利用して、角膜上皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞、筋芽細胞等の多岐にわたる細胞腫が培養されています。

ポリアクリルアミドを用いて、人間の筋肉のように負荷を掛けることによってポリマーの強度が上がる材料も開発されています 2, 3)。人間の筋肉は、作られては壊されるを繰り返して構造を作り変え、外部から栄養を取り込むことによって、成長・強化させることができます。人間の筋肉のような人工材料を開発するため、龔・中島・松田らは溶媒を通じて外界から物質を取り込むことができ、脆い網目を破壊した際にラジカルが生じるダブルネットワークゲル (DNゲル) に着目しました 4)。DNゲルを用いた構造作り変えの機構としては以下のようになります (図2)。

  1. モノマー・架橋剤を含んだDNゲルに力学負荷を加えると、その脆い高分子網目が破壊される(構造の破壊)
  2. 同時にラジカルが発生し、内部のモノマー・架橋剤がラジカル重合されて新しい高分子網目が合成され(構造の再形成)、ゲルの強度が増大する

実際に、DNゲルをモノマー (2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム) と架橋剤 (N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド) の溶液に浸透させた後にアルゴン雰囲気下で一軸延伸させたところ、ラジカル発生に伴うDNゲル内部でのラジカル重合反応が確認されました。本反応におけるモノマー転化率は80%以上であり、延伸によってDNゲル中の高分子質量は約3倍に増加しました。また、モノマー・架橋剤溶液中で延伸を繰り返すことによって、重量だけでなく、強度、硬さも増加することが確認されています。本材料は、外界から栄養を取り込んで成長する「生物様材料」の世界初の例になります。

参考文献
  1. 橋本せつ子:高分子, 66, 499 (2017).
  2. 中島祐 : 高分子, 69, 146 (2020).
  3. Matsuda, T., Kawakami, R., Namba, R., Nakajima, T. and Gong, J. P. : Science., 363, 504 (2019).
  4. Gong, J. P., Katsuyama, Y., Kurosawa, T., Osada, Y. : Adv. Mater., 15, 1155 (2003).

水溶性架橋剤の物性・特長について

N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド (別名: FOM-03006)

構造式

物性

外観 白色固体
融点 107 ℃
易溶剤 水、メタノール
水溶性

特長

① 水溶性が高い

水に対して高い溶解性を示します。メタノールやエタノール等の親水性溶媒にも容易に溶けます。

各種溶媒への溶解性
溶媒名 SP値 各固形分濃度(重量%)での溶解性
0.1 0.5 1 10 20 30 40 50
n-ヘキサン 7.3
トルエン 8.8
酢酸エチル 9.0
メチルエチルケトン 9.3
アセトン 10.0
イソプロピルアルコール 11.5
アセトニトリル 11.9
エタノール 12.7
メタノール 14.5
23.4

*モノマーのSP値12.8 *液温30℃で測定
*◎:易溶 〇:可溶 △:経時で結晶析出 ×:不溶 -:未測定

② 耐加水分解性に優れている

酸性~塩基性水溶液中での耐加水分解性に優れています。
N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド (FOM-03006) の水溶液中での安定性を評価しました (45℃、2週間)。比較化合物に市販の2官能アクリルアミドTM-1、EO変性4官能アクリレートTM-2を用いております。

③ 硬化性が高い

市販の4官能アクリレート TM-0と比較し、酸素による重合阻害を受けにくく、高い重合性を示します。

④ 安全性に優れている

従来のアクリルアミドにはない高い安全性を有しています。

N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミドの安全性試験結果
試験項目 結果
皮膚刺激性・腐食性 PII = 0
無刺激
皮膚感作性 陰性
変異原性 (Ames) 陰性

硬化例

硬化例1. ラジカル重合を用いた例
動画

*映像は塗布状況を見やすくするため、シアン顔料を加えています。

硬化例2. マイケル付加反応を用いた例

使用例

使用例1.
  • 親水性の高い機能性コートを作成することができます。
  • モノマーや開始剤の水溶性が高いため、水を溶剤としてコート液を作成することができます。
コートAの組成例
原料名 配合割合 (wt%)
水溶性モノマー (FOM-03010) 30
水溶性架橋剤 (FOM-03006) 67
水溶性光ラジカル開始剤 (FOM-03011) 3
メタノール 400
コートAの使用例と物性
  • PET基板に塗布、乾燥後 (50℃/5分)、光硬化 (3J/cm2)
    *使用ランプ: 高圧水銀灯 (露光量はUV-Aで管理)
評価膜 水接触角 (°)
PET単独 75
コートA 35
コートAを水に含侵後、乾燥 44

水との親和性を示す、水接触角によるぬれ性評価においてコートAは接触角が低く高い親水性を示し、水含侵後に再乾燥しても親水性を維持します。

使用例2.
  • 市販の多官能アクリルモノマーをFOM-03006に置き換えることで硬化収縮の小さいカールしにくいコーティング膜を作成することができます。
コート液の組成
コートB コートC 配合割合 (wt%)
水溶性架橋剤 (FOM-03006) 市販多官能アクリルモノマー 50
単官能メタクリルモノマー (HEMA) 単官能メタクリルモノマー (HEMA) 47
水溶性光ラジカル開始剤 (FOM-03011) 水溶性光ラジカル開始剤 (FOM-03011) 3
硬化後のコーティングの様子

N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド (別名: FOM-03007)

構造式
物性
外観 白色固体
融点 89 ℃
易溶剤 水、メタノール
水溶性
各種溶媒・モノマーへの溶解性
溶媒・モノマー 溶解度 (wt%)
n-ヘキサン 0.1未満
トルエン 0.1未満
酢酸エチル 0.1~0.5
メチルエチルケトン 0.1~0.5
アセトン 0.1~0.5
イソプロピルアルコール 0.5~1
アセトニトリル 0.1未満
エタノール 50以上
メタノール 50以上
1-メトキシ-2-プロパノール 10~20
50以上
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル (HEMA) 30~40
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド 30~40
N,N-ジメチルアクリルアミド 20~30
4-アクリロイルモルホリン 5~10

*液温30℃で測定

N,N'-[オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリルアミド (別名: FOM-03008)

構造式

物性
外観 白色固体
融点 58 ℃
易溶剤 水、メタノール
水溶性
各種溶媒・モノマーへの溶解性
溶媒・モノマー 溶解度 (wt%)
n-ヘキサン 0.1未満
トルエン 1~5
酢酸エチル 0.1~0.5
メチルエチルケトン 0.5~1
アセトン 1~5
イソプロピルアルコール 10~20
アセトニトリル 0.5~1
エタノール 50以上
メタノール 50以上
1-メトキシ-2-プロパノール 50以上
50以上
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル (HEMA) 50以上
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド 40~50
N,N-ジメチルアクリルアミド 40~50
4-アクリロイルモルホリン 40~50

*液温30℃で測定

N,N'-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド} (別名: FOM-03009)

構造式

物性
外観 白色粉末
融点 110 ℃
易溶剤 水、メタノール
水溶性
各種溶媒・モノマーへの溶解性
溶媒・モノマー 溶解度 (wt%)
n-ヘキサン 0.1未満
トルエン 0.1未満
酢酸エチル 0.1~0.5
メチルエチルケトン 1~5
アセトン 1~5
イソプロピルアルコール 1~5
アセトニトリル 1~5
エタノール 30~40
メタノール 50以上
1-メトキシ-2-プロパノール 10~20
40~50
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル (HEMA) 10~20
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド 20~30
N,N-ジメチルアクリルアミド 5~10
4-アクリロイルモルホリン 5~10

*液温30℃で測定

架橋剤の物性まとめ

FOM-03006 FOM-03007 FOM-03008 FOM-03009
外観 白色固体 白色固体 白色固体 白色粉末
融点 107℃ 89℃ 58℃ 110℃
易溶剤 水、メタノール、エタノール 水、メタノール、エタノール 水、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、HEMA 水、メタノール

当社化成品事業部ホームページでも詳しくご紹介しております。

水溶性モノマーの物性・特長について

4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸 (別名: FOM-03010)

高い親水性を発現するベタイン構造と、メタクリルアミド基とを含有した水溶性モノマーです。高い親水性、生体適合性とともに、安定性に優れています。

構造式

物性

外観 白色粉末
融点 なし
臭い 無臭

特長

① 水溶性、親水性が高い
  • 水に50wt%以上溶解します。メタノール、エタノールなどの溶媒にも容易に溶けます。
  • ベタイン構造により、非常に高い親水性を示します。(CLogP=-10)

現在市販されている親水性モノマーの多くは、親疎水性の指標となるCLogP値が-2~+1程度です。FOM-03010はCLogP値が-10であり、これらの汎用モノマーに比べてはるかに高い親水性を有しています。

MPC: 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
GLBT: カルボキシメチルベタインモノマー
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル

FOM-03010は、異なるpH環境下における分子の解離を考慮した、親水性の指標であるLogD値においてもLogD= - 4 (pH=7) と高い親水性を示します。

各種溶媒・モノマーへの溶解性
溶媒・モノマー名 各固形分濃度(重量%)での溶解性
0.1 0.5 1 10 20 30 40 50
メタノール
エタノール
イソプロピルアルコール
ジメチルスルホキシド
アセトン
酢酸エチル
ジメチルアセトアミド
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル (HEMA)
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド
N,N-ジメチルアクリルアミド
4-アクリロイルモルホリン

*液温25℃で測定 *〇:可溶 ✖:不溶 -:未測定

② 耐加水分解性に優れている
  • 酸性~塩基性水溶液中での耐加水分解性に優れています。
③ 生体適合性が高い
  • 細胞付着耐性、血小板付着耐性を示します。
    ※富士フイルム試験による細胞付着の抑止効果を検証

使用例

  • 親水性の高い機能性コートを作成することができます。
  • モノマーや開始剤の水溶性が高いため、水を溶剤としてコート液を作成することができます。

具体的な使用例は、水溶性架橋剤N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミドの項を参考にしてください。

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