がん関連線維芽細胞 (Cancer-Associated Fibroblast : CAF)

線維芽細胞は、体内のあらゆる組織や臓器の正常な成長、治癒、創傷修復、日常的な生理活動に関与しています。がんと関連する場合、がん関連線維芽細胞 (Cancer-Associated Fibroblasts : CAF) とよばれ、腫瘍の進行に関連することが示唆されています(図1, 2)。

がんによるCAFの関係

図1 CAFとがんの関係

 CAFには様々な起源細胞が提唱されており、それらにがん微小環境中の状態に応じて様々な刺激が加わることで、inflammatory CAF (i CAF) やmyofoblastic CAF (my CAF)、antigen-presenting CAF (ap CAF) などに形質変化すると考えられています。
 CAFは抗腫瘍免疫応答の強力な抑制因子としても働きます。例えば、i CAFはサイトカインの一つであるIL-1シグナルを介し、CD8+T細胞 (キラーT細胞) の活性の抑制や、腫瘍促進性マクロファージの活性化の誘導を行います。my CAFは組織の硬化を介してがん細胞の浸潤を促進するのみならず、細胞障害性T細胞の腫瘍内浸潤を抑制します。また、my CAFで産生されたTGF-βは、近傍のがん細胞や免疫細胞に作用し、がん浸潤・転移および免疫抑制を促進します。また、TGF-βとIL-1aの刺激を受けて分化したap CAFは、抗原提示を介してナイーブCD4+T細胞をTreg (制御性T細胞) に誘導するといった、免疫抑制効果を発揮します。
 老化CAFは細胞老化随伴分泌現象 (SASP) 因子を分泌しており、主に炎症性サイトカインやケモカイン、増殖因子、マトリクス分解酵素などがSASP因子として報告されています。これらががん細胞の増殖や発がん、抗腫瘍免疫の亢進に寄与することが知られています。

がんによるCAFの代謝変容

図2 CAFとがん細胞の相互作用

CAFとがん細胞は細胞内代謝を変容させ、互いの増生、生存に有意な環境を作り出しています。がん細胞から分泌される TGF-βや、細胞外小胞体 (EV) に含まれるマイクロRNA (miRNA) などによって、CAFの解糖系やアミノ酸合成、脂質合成経路が活性化され、乳酸やグルタミンなどの代謝産物の分泌量が増加します。それらが、がん細胞の増殖や浸潤・転移能、薬剤耐性などを制御することが示されています。

【参考文献】
1.榎本篤. がん関連線維芽細胞の多様性の理解の難しさ. 実験医学. 2024 7 ; 42 (11) : 1656-1663
2. 仁科隆史, 塚本夏生. 中野裕康 腫瘍免疫制御におけるCAFsの役割と炎症性CAFs.実験医学. 2024 7 ; 42 (11) : 1677-1683
3. 千場隆, 石本崇胤. CAFsに起こる代謝様式の変化とがん進展における意義.実験医学. 2024 7 ; 42 (11) : 1691-1695

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