遺伝子導入試薬

トランスフェクションとは?

トランスフェクションは真核細胞に外来遺伝子を導入して目的の遺伝子を発現させる手法です。この手法は目的とする遺伝子の機能解析やタンパク質の産生に利用されており、生命科学分野の発展に大きく貢献してきました。

トランスフェクションの種類

真核細胞へのトランスフェクションは主に物理的方法、生物学的方法、そして化学的方法が知られています。それぞれに特長があり目的に応じて使い分けられています。

物理的手法

物理的方法は刺激を導入して細胞膜を透過させて核酸を導入する方法です。エレクトロポレーション法 (電気穿孔法)、マイクロインジェクション法、およびレーザー法などが知られています。最もよく使用される方法はエレクトロポレーション法 です。エレクトロポレーション法では電気パルスにより細胞膜を透過して核酸を導入します。物理的な刺激により細胞膜を透過させるという特長から幅広い細胞に対して高効率で導入することが可能です。一方で特殊な機器を必要とすることから非常に高価であり、また細胞によっては物理的な刺激による細胞毒性が認められるという欠点があります。

生物学的手法

生物学的方法にはウイルスを使用した方法が知られています。ウイルスの感染能力を利用していることから非常に高い導入効率を示します。さらにin vivoでのトランスフェクションに非常に適しており、動物実験における適応例も非常に多く報告されています。一方、ウイルスの調製が煩雑である場合が多く、またバイオセーフティレベルを適応させる必要がある点が欠点として挙げられます。

化学的手法

化学的方法としてはリポフェクション法、リン酸カルシウム共沈殿法などが知られています。この中でもリポフェクション法はトランスフェクション法において一般的な手法として位置付けられています。リポフェクション法では正の電荷を持つカチオン性脂質と負の電荷を持つ核酸で形成された複合体がエンドサイトーシスを介して細胞に導入されます1,2)。リポフェクション法は毒性が低く操作性に優れていることから、最も簡便にトランスフェクションを行うことが可能な手法であると言えます。一方、一般的に物理的手法や生物学的手法に比べて導入効率が低く、また細胞種や培養条件に適した条件設定が必要になる点が欠点として挙げられます。近年では導入効率や操作性に優れたトランスフェクションを各試薬メーカーが開発しており、その性能は日々進化しています。


リポフェクション法では負の電荷である核酸と正の電荷であるカチオン性脂質により形成された複合体がエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれます。

高性能トランスフェクション試薬

当社では2種類のトランスフェクション試薬シリーズを取り扱っています。ScreenFect™シリーズは、クリックケミストリーによってスクリーニングされた新規カチオン性脂質から構成されるトランスフェクション試薬です。幅広い細胞に対する適応性、血清培地培養下での添加、添加後の培地交換を不要とする操作性を実現しました。GenomONE®シリーズ (HVJ-E)、はセンダイウイルスのエンベロープ (Hemagglutinating virus of Japan Envelope; HVJ-E) を利用したトランスフェクション試薬です。センダイウイルスのゲノムRNAを不活化することで得られるHVJ-Eは、非増殖性・非感染性の小胞であり、バイオセーフティレベル1 (BSL1) の実験室で使用可能です。生物学的方法の特長である高い導入効率を化学的手法と同等の簡便な方法で実現できます。当社が提案するこれら高性能トランスフェクション試薬をぜひご検討ください。

トランスフェクション比較表
物理学的手法 生物学的手法 化学的手法
代表的な手法 エレクトロポレーション
マイクロインジェクション
ウイルスベクター リポフェクション
リン酸カルシウム共沈殿
長所 導入効率が高い
幅広い細胞種に適応
導入効率が高い
生体(in vivo)に適応
毒性が低い
操作が簡便
短所 特殊な機器が必要
高価
細胞毒性が高い
操作が煩雑
バイオセーフティ対応
導入効率が低い (細胞種による)
細胞種や培養条件で導入効率が大きく変化
試薬 GenomONE ®-Neo (FD)
GenomONE ®-Si
ScreenFect™
GenomONE ®-GX

GenomONE ®-GXはHVJ-Eではなく、中性の脂質様物質を主成分としており、化学的手法に分類されます。

  1. Felgner et al., Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure. : Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84 (21) : 7413-7. (1987).
  2. Felgner et al., Enhanced gene delivery and mechanism studies with a novel series of cationic lipid formulations. : J. Biol. Chem. 269 (4): 2550-61. (1994).