GC用キャピラリーカラムの選択ガイド

キャピラリーカラムの選択要因

1. Stationary Phase / 固定相

  • 要求する分離が得られるカラムの中で最も極性の低い固定相を選択します。
    キャピラリーGC分析のうち70 %近くの分析は、100 %ジメチル(BP1)あるいは5 %フェニル(BP5、BPX5)ポリシロキサン相当の固定相で可能です。
  • 無極性固定相は類似した構造の化合物を沸点順で分離します。固定相のフェニル/シアノプロピル基の含有量を増やすとその分離は双極子モーメントや局在化した電子によって大きく影響されます。
    【BP10(1701)、BPX35、BPX50、BP225、BPX70】
  • 水素結合力の異なる化合物(例えばアルデヒド、アルコール、ケトン)を分離するにはポリエチレングリコールタイプの固定相が最適です。
    【SolGel-WAX™、BP20(WAX)、BP21(FFAP)】
<固定相のフェニル含量を増やした場合の効果>
Columns:30 m x 0.25 mm x 0.25 µm
Initial Temp:45 ℃(1 min)
1st Temp Ramp:30 ℃/min to 200 ℃(0.1 min)
2nd Temp Ramp:7 ℃/min
Final Temp:315 ℃ (hold 10 min)
Injector Temp:280 ℃
Splitless Time :1 min
Carrier :He, 1 mL.min

Organophosphorus Pesticides

  1. 4-Chloro-3-nitrobenzotrifl uoride
  2. 1-Bromo-2-nitrobenzene
  3. Tributylphosphate
  4. Terbufos
  5. Dioxathion
  6. Phoshamidon
  7. Chlorfenvinphos
  8. Ethion
  9. Famphur
  10. Carbophenothion
  11. Triphenylphosphate
  12. Phosmet
  13. Leptophos
  14. Azinphos-ethyl

2. Internal Diameter / カラム内径

<多環芳香族炭化水素(PAH)分析における内径の効果>
  • カラム内径を細くするほど、カラム効率が上がり、分離度も高まります。内径の細いカラムを使用すれば、従来のカラムに対しカラム長さを短くして、同等の分離で時間分析をより短くする事が可能です。ただし、試料負荷量の上限に注意が必要です。

3. Film Thickness / 膜厚

<膜厚の効果>

表1. SGEキャピラリーカラムで利用可能な相比(β)を下に示します。 同一種のカラムでカラム内径を変えるときに似たような相比に保つとクロマトグラフィーのパラメーターの大幅な変更をせずに同様な結果が得られます。
膜厚(µm) カラム内径 (µm)
100 150 220 250 320 530
0.10 250 - 550 625 800 1325
0.15 - 250 - - - 883
0.25 - 150 220 250 320 530
0.50 - 75 110 125 160 265
1.00 - - 55 63 80 132
3.00 - - - - 27 44
5.00 - - - - 16 26
  • 試料中の各成分濃度範囲が広い場合には、膜厚の厚いカラムを推奨します。 膜厚の厚いカラムを選択する事で、高濃度成分のピークが過負荷の影響でリーディングしたり、 同濃度混合品では分離していたはずの他成分ピークに重なってしまったりする現象を防げる場合があります。 濃度差の影響を受けない程、各成分の分離が十分である場合には、ピーク形状に配慮し、膜厚がより薄いカラムを選択します。
  • 膜厚が厚いカラムほど溶出時間がかかり、溶出温度が高くなる傾向になります。 恒温分析において膜厚を2倍にしても同等の保持時間で溶出させるためには、オーブン温度を15 ℃~20 ℃高くする必要があります。 温度プログラムをかけることにより、溶出温度を幾分低く抑えることができます。
  • 相比(β)は、種々のアプリケーションに対する適性を示すパラメーターのひとつです。 β値が低いカラムは、 内径に対して膜厚の比が高い、すなわち、保持力が強いことを意味しており、揮発性成分分析に適しています。 これに対して、 β値が高いカラムは、 膜厚が薄く保持力が比較的弱いカラムであり、 分子量が大きく、 高沸点化合物の分析に適しています。

β = id/4df

β = 相比(フェイズレシオ)
id = カラム内径 (µm)
df = 膜厚 (µm)

<相比によるのアプリケーションの範囲>
相比 (β) アプリケーション
16-100 ガス体、低分子量の炭化水素、溶媒、揮発性ハロゲン化合物(M.W.16-250)
100-320 半揮発性化合物、一般的なアプリケーション(M.W. 100-700)
320-1325 高分子量の炭化水素、ワックス、石油製品(M.W. 300-1500)

同一種のカラムで内径等を変える場合は同じ相比を持つカラムを選択すると似通ったクロマトグラムを得ることが可能です。

4. Column Length/カラム長

<カラム長さの効果>
  • 要求される分離が得られる長さで極力短いカラムを選択します。 カラム長を長くしても十分な分離が得られない場合には、固定相及び相比を再度検討する必要があります。
  • 分離度は、カラム長さの平方根に比例します。 カラム長を2倍にした場合には、基本的に分離度が1.4倍程度改善します。

SGEキャピラリーカラムの固定相と特長

カラム名 固定相 構造式 特長 用途
BP1 100 % ジメチルポリシロキサン ・標準的な化学結合 ・架橋型100 % ジメチルポリシロキサン
・優れた汎用GCカラム ・低ブリード ・無極性固定相
・全てルーチン分析に適応 ・最高使用温度320 ℃/340 ℃(膜厚に依存)
炭化水素、芳香族化合物、殺虫剤、禁止薬物、フェノール、除草剤、アミン分析
BP1 PONA 100 % ジメチルポリシロキサン ・石油製品分析用に設計 ・PONA分析用無極性固定相
・蒸留シミュレーションASTM(DHA-メソッド)に適合 ・化学結合
・架橋型 ・溶媒洗浄可能 ・最高使用温度320 ℃/340 ℃
石油炭化水素、ガソリン炭化水素、MTBE、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物
BPX1 100 % ジメチルポリシロキサン ・無極性固定相 ・構造的に安定な固定相 ・低ブリード
・特に高沸点炭化水素分析のために設計
・蒸留シミュレーションASTMメソッド: D2887に適合
・最高使用温度430 ℃のアルミクラッドカラム
・最高使用温度370 ℃- 400 ℃のポリイミドクラッドカラム(膜厚に依存)
ASTMメソッド : D2887, D6532
SolGel-1ms™ 100 % ジメチルポリシロキサン-SolGel 相 ・超低ブリード(より良いMSライブラリの同定、イオン源のメンテナンス頻度の減少、より良い感度)
・高い不活性度 ・最高使用温度340 ℃/360 ℃
・全ての非MS検出器でも使用可能 ・BP1と同じ選択性
高活性化合物の分析に最適
BP5 5 % フェニル / 95 % ジメチルポリシロキサン ・優れた汎用GCカラム ・低ブリード ・微極性固定相
・高耐熱性 ・最高使用温度320 ℃/340 ℃(膜厚に依存)
一般分析、芳香族化合物、殺虫剤、除草剤、ドラッグ、炭化水素、ポリ塩化ビフェニール、精油、半揮発性化合物
HT5 5 % フェニルポリカルボラン- シロキサン ・耐熱性の高い固定相 ・相当品のないユニークな固定相
・蒸留シミュレーションに対応 ・化学結合 ・架橋型
・最高使用温度380 ℃/400 ℃のポリイミドクラッドカラム
・溶媒洗浄可能
蒸留シミュレーション、炭化水素、殺虫剤/除草剤
HT8 8 % フェニルポリカルボラン- シロキサン ・耐熱性の高い固定相 ・低ブリード ・最高使用温度360 ℃/370 ℃
・PCB異性体分析に最適なGCキャピラリーカラム
・PCB異性体のオルソ位置に塩素数が少ない異性体により強い保持
・GC/MSでの環境分析に適しています。
・POPs化合物の分析に適したユニークな固定相
PCB分析、芳香族ニトロ化合物、多環芳香属炭化水素、殺虫剤、除草剤
BPX5 5 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン ・高不活性 ・高耐熱性 ・優れた汎用カラム-日常分析の多くに適応
・超低ブリード-微量成分分析に最適 ・GC-MS分析に最適
・微極性固定相 ・最高使用温度360 ℃/370 ℃(膜厚に依存)
超微量成分分析、殺虫剤、除草剤、炭化水素、溶剤、フェノール、アミン、GC/MS及び他のGC検出器用
BPX35 35 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン ・中極性固定相 ・確認分析に最適 ・不活性な固定相
・USP Phase G42に相当 ・高耐熱性で低いブリード
・医薬品分析に最適 ・最高使用温度330 ℃/360 ℃
・GC/MS分析に最適 ・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能
環境分析、殺虫剤/除草剤、禁止薬物、医薬品、多環芳香属炭化水素
BPX608 35 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン ・ECD分析に最適 ・有機塩素系農薬/除草剤の分析に有効
・最高使用温度 : 370 ℃
環境分析、U.S. EPA メソッド: 608、殺虫剤、除草剤
BPX50 50 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン ・中極性固定相 ・不活性な固定相 ・高耐熱性で低いブリード
・USP EAP メソッドに最適 G42に相当 ・医薬品分析に最適
・最高使用温度330/350℃ ・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能
U.S. EPA メソッド:604, 608, 8060, 8081、トリアジン系農薬、薬物スクリーニング、ステロイド、医薬品、GC2D
BPX70 70 % シアノプロピルポリシルフェニレン- シロキサン ・高極性カラム ・不活性な固定相 ・高耐熱性で低いブリード
・脂肪酸メチルエステル(FAMEs)の分析に最適 ・最高使用温度250 ℃/260 ℃
・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能
脂肪酸メチルエステル(FAMEs)、炭水化物、薬剤、GC/MSアプリケーション
BPX90 90 % シアノプロピルポリシルフェニレン- シロキサン ・ユニークな化学結合カラム ・極強極性カラム ・高耐熱性カラム
・シス/トランス異性体の分離に最適
・トランス-脂肪酸メチルエステル(FAMEs)の分析に最適
・最高使用温度260 ℃/280 ℃ ・溶媒洗浄可能
香料、芳香族化合物、石油化学製品、殺虫剤、PCB、FAMEs、トランス脂肪酸
SolGel-WAX™ ポリエチレングリコール(PEG)-SolGel 相 ・結合PEG相 ・頑丈な高耐熱性カラム
・従来のWAX固定相より酸素によるダメージに強い
・強極性カラム ・極めて低いブリードで高不活性なカラム
・最高使用温度280 ℃ ・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能
高活性化合物の分析に最適
BP20(WAX) ポリエチレングリコール ・標準的なWAXカラム ・強極性カラム
・最高使用温度240 ℃~280 ℃(膜厚に依存)
・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能
アルコール、遊離酸、脂肪酸メチルエステル(FAMEs)、芳香族化合物、溶媒、エッセンシャルオイル
BP21(FFAP) ポリエチレングリコール (PEG) – TPA 処理 ・PEG固定相をニトロテレフタル酸で修飾 ・強極性カラム
・低分子量の有機酸の分析に最適 ・最高使用温度250 ℃
・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能(水やエタノールはおすすめしません)
揮発性遊離酸、脂肪酸メチルエステル、アルコール、アルデヒド、アクリル酸塩、ケトン
BP10(1701) 14 % シアノプロピルフェニルポリシロキサン ・有機塩素系農薬分析に最適 ・中強極性カラム
・低ブリードで高不活性なカラム
環境分析、US EPAメソッド: 608 , 8081、殺虫剤/除草剤、乱用薬物、医薬品
BPX-VOLATILES シアノプロピルフェニルポリシロキサン ・中極性カラム
・US EPA揮発性有機化合物分析用
 (EPA 624, 502.2, SW-846,8240/8260に最適)
・化学結合 ・架橋型 ・最高使用温度290 ℃/300 ℃ ・溶媒洗浄可能
環境分析、揮発性有機物、アルコール、USP G43
BP624 シアノプロピルフェニルポリシロキサン ・US EPAメソッド : 624 対応カラム ・揮発性有機化合物分析用に設計
・EPA 624, SW-846,8240/8260に最適 ・USP G43に最適
・最高使用温度230 ℃/300 ℃ ・化学結合 ・架橋型 ・溶媒洗浄可能
US EPAメソッド :624、飲料水中の揮発性有機化合物、塩素化炭化水素、溶媒(EPAメソッド : 501.3, 502.2, 503.1, 524.2, 601, 602, 8010, 8015, 8020, 8240, 8260)
CYDEX-B™ パーメチルベータシクロデキストリン(キラル) ・光学異性体分離用カラム 天然物中の鏡像異性体の分離

各化合物 - キャピラリーカラム対応表

化合物種 SOLGEL-1ms BP1 BPX1 BP1-PONA BPX5 BP5 HT5 HT8 BPX35 BPX-Volatiles BP624 BP10 BPX50 SOLGEL- WAX BP20 BP21 BPX70 CYDEX-β BPX20
Acidic/Neulral Drugs                        
Acids                      
Alcohols                  
Amines Aliphatic                      
Amines Aromatic                    
Antidepressants                        
Aromatics - PAH                
Aroclors                        
Beverages - Alcohols                        
Butter - Fat                        
Chiral Compounds                          
Chlorinated Aromatics                    
Cigarette Lighter Fuel                        
Dioxins                        
Essential Oils                      
Food - FAME                    
Glucose - Methylated                        
Herbicides                    
Industrial Solvents                      
Ketones                    
Monomers                      
Nitroaromatics                
Organochlorine Pesticides                
Organophosphorous Pesticides                  
Paraffins                    
PCB's                      
Petroleum                    
Phenols                    
Phthalates                      
Plant Sterols                      
Polymers                        
Polywax                      
Pyrethroids                  
Racehorse Doping Mixture                        
Sedatives                        
Semivolatiles                      
Silicon Oil                          
Solvents                      
Sugars-Alditol Acetates                      
Triglycerides                        
TRPH                      
Volatiles                      
Xylenes                

◎アプリケーションに対して推奨する固定相  ●アプリケーションに対して対応可能な固定相

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