オートタキシン(ATX)測定キット

オートタキシン(ATX: Autotaxin)は、ヒト悪性黒色腫細胞の細胞培養上清より、細胞遊走促進因子として単離された分子量125 kDaの糖タンパク質です¹⁾。ATXはリゾホスファチジルコリン(LPC)を加水分解するりん脂質代謝酵素であり、臓器の線維化を引き起こすリゾホスファチジン酸(LPA)を産生します²⁾。

これまでに肝線維化の組織学的段階と、血清ATX活性の間に有意な相関があることが報告されています³⁾。これは線維化などの肝障害によりATXの代謝阻害が起こると、ATXが血中に滞留し、血中濃度が上昇することが原因と考えられています。またATXの上昇によって、LPAも上昇するため、ATXは線維化の進展にも関連しているとされています。線維化の判定に最も確実なのは肝生検ですが、患者の身体的負担も大きいことから、相対的に侵襲性の低い肝線維化マーカー検査への期待が高まっており、ATXは画像診断で判別しにくい初期の線維化を判別できる血中マーカーとして有望視されています⁴⁾。なお副腎皮質ステロイド投与患者では脂肪組織による産生低下によりATX低値となる一方、妊婦では胎盤由来ATXにより血清ATX高値を示すため、注意が必要です。

試料中ATXのリゾホスホリパーゼD活性により、リゾホスファチジルコリンが加水分解されコリンが生成します。生成されたコリンは、コリンオキシダーゼ(COD)の作用により酸化され、過酸化水素を生成します。生成された過酸化水素は、ペルオキシダーゼ(POD)の作用によりN-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3- メチルアニリン(TOPS)と4-アミノアンチピリンとを定量的に酸化縮合させ青紫色色素を生成させます。最後に反応停止液を添加して反応を止め、吸光度を測定することにより試料中のATX活性を求めます。

図1 オートタキシン(ATX)の測定原理

ラボアッセイ™ ATXは血清、血漿、細胞培養上清のATXを測定するキットです。マイクロプレートを用いて短時間かつ簡便に検体中のATXを測定することができます。

キット性能

1. Stracke, M. L. et al.: J. Biol. Chem., 267(4), 2524(1992).
   Identification, purification, and partial sequence analysis of autotaxin, a novel motility-stimulating protein
2. Umezu-Goto, M. et al.: J. Cell Biol., 158(2), 227(2002).
   Autotaxin has lysophospholipase D activity leading to tumor cell growth and motility by lysophosphatidic acid production
3. 池田均 他: 日本臨床検査医学会誌, 57(5), 445(2009).
   消化器疾患における血清オートタキシン測定の意義
4. 日本消化器病学会 編: 「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」, (南江堂) (2014).