三菱ケミカル ダイヤイオン

三菱ケミカルのイオン交換樹脂「ダイヤイオン」の歴史は古く、1938年研究を開始し、現在のように工業生産を開始したのは、終戦間もない1946年で、現在まで約70年間製造を続けています。その長い年月の中で軟水や純水などの工業用水の製造にその用途を留めず、現在では医薬・食品の精製、廃水処理、半導体製造用超純水の製造など、多岐にわたって使用されています。
三菱ケミカルのイオン交換樹脂ダイヤイオンも、このような多くの分野・用途に対応すべく、単純な陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂だけでなく、キレート樹脂、合成吸着剤とさまざまな用途向けに200を超える独自の分離媒体組成物を提供しています。

イオン交換樹脂(Ion Exchange Resins)とは

イオン交換樹脂は、ベンゼン環にビニル基を1つ持つスチレンと、ビニル基を2つ持つジビニルベンゼン(DVB)を材料としています。それらを水中で懸濁重合することで直鎖の高分子であるポリスチレン同士をDVBが橋架けし、あらゆる溶媒に不溶な3次元構造の粒状ポリマーができます。このポリマーにスルホン酸や4級アンモニウム塩などを官能基として導入することで、イオン交換樹脂ができます。
重合時にポリスチレン同士を橋架けするDVB量の増減によって、樹脂内の分子の網目(ミクロポアー)の大きさが変わります。DVBが多くなると橋架けする箇所が多くなって網目が密になり、DVBが少ないと橋架けする箇所が少なくなるので網目は大きくなります。この架橋剤であるDVBが全原料中に占める重量比率を、架橋度と呼びます。
イオン交換樹脂は物理的構造から大きく3種類に分類されます。基本となるのが、スチレンとDVBを単純に重合した、見た目が透明なゲル型です。このゲル型に物理的に穴(マクロポアー)を開けた多孔性のものをポーラス型と呼びます。またポーラス型より小さな穴をたくさんあけた高多孔性のものをハイポーラス型と呼びます。

ゲル型 ポーラス型 ハイポーラス型 概要
陽イオン
交換樹脂
強酸性陽イオン交換樹脂
(Strongly Acidic Cation Exchange Resins)
SK1B
SK1BH
SK112
UBK530
UBK535
UBK550
UBK555
PK220
PK216
PK216LH
PK228L
PK228LH
スルホン酸基(ーSO3H)を持つ陽イオン交換樹脂です。全てのpH領域(0~14)で使用でき、温度にも比較的安定で100~120℃の高温にも耐えることができます。強酸性のため再生しにくく、高い再生率を得るためには理論化学当量より多量の再生剤が必要となります。
品目:ゲル型(SKシリーズ)、ポーラス型(PKシリーズ)及び均一粒径(UBKシリーズ)
用途:純水・軟水製造の水処理を始め、医薬品・食品の精製、アミノ酸分析、触媒等
使用方法:カラム通液またはバッチ処理
弱酸性陽イオン交換樹脂
(Weakly Acidic Cation Exchange Resins)
WK60L カルボン酸基(-COOH)を交換基として持つ陽イオン交換樹脂です。
使用できるpH範囲に制限があるため強酸性陽イオン交換樹脂に比べて用途は限られますが、H形に再生しやすいという特長を持っています。
品目:ReliteWK60L(イオン形:H形、アクリル酸系)
用途:酸性度がやや高いため、炭酸塩硬度が高い水の処理
使用方法:カラム通液 または バッチ処理
陰イオン
交換樹脂
強塩基性陰イオン交換樹脂
(Strongly Basic Anion Exchange Resins)
SA10A
SA10AOH
SA12A
SA20A
UBA100
UBA120
UBA200
PA306S
PA308
PA312
PA316L
PA318L
PA408
PA418
PA412
HPA25M 4級アミンを導入した陰イオン交換樹脂です。I型(トリメチルアンモニウム基)とII型(ジメチルエタノールアンモニウム基)の2種類があります。
Ⅰ型:塩基度が最も高く、陰イオンを強く吸着出来ることから高純度の脱塩水を得たい場合に使用されます。再生は、吸着力が強いため大量の再生剤が必要となります。
Ⅱ型:Ⅰ型より塩基度が低いため、得られる脱塩水の水質はⅠ型より劣りますが、その分再生剤の使用量を減らすことが出来ます
NaOH、KOHなどの強アルカリと同様に解離して強い塩基性を示し、強塩基性陰性イオン交換樹脂と呼ばれています。
品目:ゲル型(SAシリーズ)、ポーラス型(PAシリーズ)、ハイポーラス型(HPAシリーズ)、均一粒径(UBAシリーズ)
用途:水処理をはじめ、医薬品・食品の精製等
使用方法:カラム通液 または バッチ処理
弱塩基性陰イオン交換樹脂
(Weakly Basic Anion Exchange Resins)
WA20
WA21J
WA30 架橋したスチレン骨格に1~3級アミンを官能基として持つ陰イオン交換樹脂です。NaCl、Na2SO4のような中性塩の陰イオンを交換することはできませんが、HCl、H2SO4などの無機酸やNH4Clのような弱塩基の塩の陰イオンをイオン交換することが出来ます。
用途:水処理、医薬・食品の精製等
使用方法:カラム通液 または バッチ処理
混床式ポリッシャー用樹脂
(Mixed Resin)
SMNUPB 1つの樹脂塔に強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂を混合した状態で使用するものを混床式と言います。一般に混床式は多塔式装置と組合せて、さらに純度を高めるためのポリッシャーとして使用します。
キレート樹脂
(Chelating resins)
CR11 CRB03
CRB05
イオン交換基の代わりに、金属イオンとキレート(錯体)を作る官能基を導入した樹脂で、特定の金属とキレートを形成することによって金属イオンを捕捉します。
品目:イミノジ酢酸型(CR11)、グルカミン型(CRB03、CRB05)
用途:塩水精製、薬液精製、廃水処理、ホウ酸除去など
使用方法:カラム通液 または バッチ処理

合成吸着剤(Synthetic Adsorbents)とは

芳香族系合成吸着剤ダイヤイオン™HP20

合成吸着剤は、特殊な合成技術により比表面積500~1200m2/dry-gの多孔質構造を持たせた球状の架橋高分子です。合成吸着剤は、樹脂内の細孔表面と被吸着物質間の物理的相互作用により溶液中から種々の有機物を吸着することが出来ます。
合成吸着剤はその多孔質構造と吸着原理から活性炭と比較されますが、活性炭の細孔に比べ、数十~数百オングストロームと大きな細孔を持っていることから比較的大きな有機物の吸脱着が出来ます。そのため、抗生物質などの醗酵生成物の吸着精製や不純物の除去などに広く利用されています。
また、吸着剤として比較されるものにアルキル基結合シリカゲル系吸着剤もありますが、合成吸着剤はその化学構造から容易に分かるように酸・アルカリ条件に対しての耐久性に優れているため、広範囲な吸着・溶離条件の適用が可能で安定的に長期間使用することができます。

HP20 HP2MGL SP850 SP825L SP700 SP207 SP70
比較的大きな細孔を有している為、大きな分子の吸着に適しています。又、脱着性にすぐれ、吸着物が容易に溶離できるので、適用範囲が広く各種工業分野に幅広く使用されています。 芳香族系の化合物を一切使用せず、メタクリル系の化合物より製造しているので、母体の親水性を利用して比較的極性の高い有機物の吸着に適します。 比表面積を飛躍的に向上させ、均ーな細孔を導入した製品です。比表面積が HP20より大きく、細孔の大きさが小さく均ーになっていますので、小さな分子を大量に吸着する事ができます。又、吸着物の脱離も容易です。 芳香族系の母体にBrを化学的に結合し、疎水吸着力を強めた製品です。
また、比重が他の合成吸着剤の約 1.2 倍ありますので上向流で処理するプロセスに適します。
米国 FDA 基準(CFR§173.65)に準じた芳香族系合成吸着剤で、中程度の細孔径を持つ製品です。
母材 スチレン-ジビニルベンゼン系 メタクリル系 スチレン-ジビニルベンゼン系 スチレン-ジビニルベンゼン系 スチレン-ジビニルベンゼン系 スチレン-ジビニルベンゼン系 スチレン-ジビニルベンゼン系
見掛密度
〈参考値〉
(g/L-R)
680 720 695 685 690 790 690
水分 55~65 % 55~65 % 46~52 % 52~62 % 60~70 % 43~53 % 57~67 %
細孔容積(mL/g) 1.3 1.3 1.4 1.4 2.1 1.0 1.5
比表面積(m2/g) 590 570 930 930 1200 600 700

小粒径合成吸着剤(クロマト分離用)

合成吸着剤を用いたクロマト分離において、医薬品等の高純度での回収を要求される場合には、より精密分離が可能な小粒径の分離剤が必要とされます。

ダイヤイオン HP20SS: すぐれた吸着特性を持つダイヤイオン HP20 の粒径を 63~150μm に小粒径化した製品で、分取用合成吸着剤としてより高純度な分離が可能です。
セパビーズ SP20SS:小粒径で更に粒径を均ーにした、より分離性のすぐれた製品です。
セパビーズ SP207SS:芳香族修飾型セパビーズ SP207 を63~150μm に小粒径化した製品で、より高純度な分離が可能です。

三菱ケミカル分離精製事業

三菱ケミカル株式会社 九州事業所
イオン交換樹脂・合成吸着剤製造プラント

三菱ケミカル株式会社は、70年以上にわたり、イオン交換樹脂であるDIAION™と合成吸着剤であるSEPABEADS™を製造してきました。 DIAION™およびSEPABEADS™は、その優れた物理的・化学的特性や工業用分離・精製に向けた秀でたロット間再現性で世界中に知られています。

Q&A

Q1. 保管方法は?

風通しの良い乾燥した冷暗所に保管してください。密閉して異物の混入、乾燥を防いでください。酸化性物質と同一場所に保管しないでください。高温下では樹脂の劣化速度が速まり、0 ℃以下では含有する水分が凍結し樹脂を破壊することがあります。

Q2. イオン交換樹脂の取り扱い方は?

眼や皮膚への接触を防ぐため適切な保護具を使用し、出来るだけ風通しの良い風上から作業を行ってください。眼の洗浄設備を必ず設置してください。こぼれると滑り易いので転倒に注意してください。高温、火花、火炎との接近、酸化剤との接触や混合を避けてください。硝酸等の酸化剤と接触させると爆発することがありますので、十分な注意をしてください。

Q3. 使用する際の注意点は?

新しく樹脂を充填した場合は、溶出物等を除去するため、逆洗およびコンディショニングを実施されることをお勧めします。逆洗およびコンディショニングの条件は、充填塔のデザインや使用できる薬剤によって異なります。コンディショニング方法としては、希酸(2mol/L-HCl等)と希アルカリ(1mol/L-NaOH等)で交互に洗浄する方法、再生薬剤と洗浄水を交互に通水する方法がありますが、要求される処理水質等によって方法および回数が異なります。一般に、溶出による影響が大きい場合は回数を増やして溶出物を低減化する必要があります。

Q4.樹脂のコンディショニング方法は?

一般の強酸性樹脂や強塩基性樹脂のイオン形は塩(Na または Cl)形です。また、弱酸性樹脂や弱塩基性樹脂の場合でも一部塩形となっています。そのため、使用前に樹脂のコンディショニングとして再生操作を実施する必要があります。再生剤の使用量は以下の通りです。この量は通常行われる再生の2倍量です。

強酸性樹脂 300~500 g-HCl/L-R(R は Resin の略)
弱酸性樹脂 100~150 g-HCl/L-R
強塩基性樹脂 300~500 g-NaOH/L-R
弱塩基性樹脂 100~150 g-NaOH/L-R

※イオン交換樹脂の使い始めは微量の不純物が溶出します。この溶出物を早く減少させるための操作もコンディショニングと言います。このための操作は、再生と塩負荷を 2~3 回繰り返します。

Q5.樹脂の再生方法は?

負荷形の樹脂を再生形に変換する工程で、使用樹脂により再生剤の種類、再生剤の使用量はそれぞれ異なります。一般的な再生剤濃度は以下の通りです。

強酸性樹脂 3~8 % HCl またはH2SO4
弱酸性樹脂 0.5~5 % HCl
強塩基性樹脂 3~8 % NaOH
弱塩基性樹脂 0.5~5 % NaOH

再生剤注入に要する時間は、強酸性樹脂でおよそ30分、強塩基性樹脂ではおよそ45分を目安とします。なお再生レベルを一定以上に上げても、再生剤使用量に見合った再生効果は得られないため、以下の再生率および再生剤使用量で管理するのが一般的です。

樹脂の種類 再生率 再生剤使用量
強酸性樹脂 50~70 % 100~300 g/L-R
弱酸性樹脂 80~100 % 60~120 g/L-R
強塩基性樹脂 I 型 30~50 % 100~300 g/L-R
II 型 50~70 %
弱塩基性樹脂 80~100 % 60~120 g/L-R

※以上は、不純物(不要物)を吸着した樹脂の再生方法ですが、この他の使用方法として、特殊薬液より有価物を吸着させるケースもあります。この場合には、適当な溶離液を用いて目的物を溶離し、その後再生を行う場合と、再生を兼ねた溶離を行う場合があります。

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強酸性陽イオン交換樹脂(Strongly Acidic Cation Exchange Resins)

弱酸性陽イオン交換樹脂(Weakly Acidic Cation Exchange Resins)

強塩基性陰イオン交換樹脂(Strongly Basic Anion Exchange Resins)

弱塩基性陰イオン交換樹脂(Weakly Basic Anion Exchange Resins)

混床式ポリッシャー用樹脂(Mixed Resin)

キレート樹脂(Chelating resins)

合成吸着剤(Synthetic Adsorbents)

小粒径合成吸着剤(クロマト分離用)

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