PEGに代わる新たな選択肢

ポリサルコシンタイプ

PEG(ポリエチレングリコール)の代替品として、安全性、合成の制御のしやすさ、汎用性の観点から、一般的にポリペプトイド、特にポリサルコシンが注目されています。

ポリサルコシンはグリシンの合成および分解における中間体および副生成物であるサルコシン(N-メチルグリシン)をモノマーとするポリマーで、PEGの代替技術の中で、合成のしやすさ、汎用性などの点で有力視されています。

片末端または両末端(同じ官能基、異なる官能基)に修飾したポリサルコシンのいずれも提供可能です。重合度n は10から1000まで対応可能で、分子量分散の小さな精緻なポリマーを提供いたします。 製品一覧にないものにご興味をお持ちの方も、ぜひお問い合わせください。

ポリサルコシンの特長

  • 生分解性があり[1]、免疫原性をもちません [2、3]。
  • タンパク質に対する非特異的吸着を起こしません [4、5]。
  • 水および有機溶媒のいずれにも高い溶解性を示します [6]。
  • 分子量分散の小さな精緻なポリマーを合成可能です [7]。
  • 200-220nmに吸収を持つため、HPLCおよび紫外可視吸収スペクトルでの検出が可能です。分析用途でもお使いいただけるグレードでご提供いたします。
  • 長期間保存可能で、ロット間差の低いポリマーをご提供いたします。
ポリサルコシンの分子量分布

参考文献

  1. J. Ulbricht, et.al. :Biomaterials, 35, 4848-4861 (2014)
  2. P. H. Maurer, et.al.: J Immunol, 83 (2), 193-197 (1959)
  3. M. Sela, et.al.: Adv Immunol, 5, 29-129 (1966).
  4. K. H. A. Lau, et.al.: Langmuir, 28 (4), 2288-2298 (2012)
  5. K. H. A. Lau et.al.: Langmuir, 28 (46), 16099-16107 (2012)
  6. C. Fetsch, et.al.: Macromolecules, 44 (17), 6746-6758 (2011)
  7. R. Luxenhofer, at.al.: Polym. Chem., 51 (13), 2731-2752 (2013)

ポリサルコシンのDDS(Drug Delivery System)への適用

ポリサルコシンは、頭部と尾部に機能性基を持つため、PEG化技術に匹敵するバイオコンジュゲーションが可能です。

ポリサルコシンまたはPEGを結合させたウリカーゼを比較し、ポリサルコシンによるコンジュゲーションが生体内でのウリカーゼ半減期を20倍以上延ばすのに有効であることが示されました。さらに、Uc-Psarは生体内において、ネイティブウリカーゼあるいはPEG化ウリカーゼと比較して免疫原性が低く、ポリサルコシン化は酵素活性に影響を及ぼさないことが示されました。

ウリカーゼのPEG化とポリサルコシン化比較

参考

Iris Biotech社記事

脂質ナノ粒子の形成のための機能化ポリサルコシン: RNA 送達の改善に向けて

世界的なコロナ禍において、mRNAワクチンの開発によって安全なRNA送達のためのツールの重要性が強調されました。
RNA自体は、その負電荷と親水性が原形質膜を介した受動的拡散を妨げるため、生理学的障壁を越えることができないためです。さらに、核酸と血清タンパク質との結合および内因性ヌクレアーゼによる酵素分解に対する感受性も、効率的な翻訳を妨げます。

それにもかかわらず、核酸類は、癌から感染症、心臓血管、炎症性および神経変性疾患に至るまでの疾患治療の有望な薬剤候補であることが証明されています。

したがって、RNA薬物送達を成功させるために、原形質膜を透過できる脂質ナノ粒子(LNP)が文献で報告されています。LNPは、ミセル構造を形成する小胞であり、分子間力によって互いに物理的に結合している脂質の混合物で構成されています。これによってRNA などの生物学的に活性な薬剤をカプセル化し、体内の特定の場所に目的の時間に送達するために使用できます。LNPの脂質成分には、イオン性(ionizable)またはカチオン性脂質、リン脂質などのヘルパー脂質、およびステロールまたはコレステロールなどの構造脂質が含まれる場合があります。

注射後、血流でのLNPのクリアランスを回避するために、さまざまな戦略、たとえば表面修飾などが用いられます。表面修飾のアプローチは、親水性ポリマーのポリエチレングリコール (PEG) を脂質に結合させてPEG 脂質を形成することによって実現できます。薬物送達にPEGが頻繁に使用されているにもかかわらず、PEGが抗PEG抗体の生成を引き起こし、免疫原性やアレルギー反応を引き起こすこともよく知られています。さらに、ナノ粒子の中性表面が細胞取り込み効率を低下させる可能性があるため、共有結合したPEGの存在もトランスフェクション効率を大幅に低下させることが報告されています。

ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリロイルモルホリン)、ポリオキサゾリンなどの他の親水性ポリマーがPEG脂質の代替として報告されていますが、従来技術の欠点を克服する代替のLNPを開発する必要性が依然として存在します。

ポリサルコシニル化およびポリグルタミン酸由来の脂質は、特にmRNA の治療への応用に使用できます。
異なる高分子鎖長とモル分率を持つ PSar/PGA 由来の脂質を使用すると、粒子サイズ、形態、内部構造などのLNPの物理化学的特性を制御できます。

参考

Iris Biotech社記事
"Polysarcosine-Functionalized Lipid Nanoparticles for Therapeutic mRNA Delivery" Sara S. Nogueira, et al. : Appl. Nano Mater., 3 (11), 10634 (2020)

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ポリサルコシン

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ポリオキサゾリン

ポリリシン

ポリグルタミン酸

ポリアルギニン

ポリオルニチン

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