呼吸器疾患、COVID-19重症化の原因となる遺伝子変異を検出!

α1-アンチトリプシン遺伝子変異検出キット

本品は、当社独自開発のプライマーを用いたリアルタイムPCR法(インターカレーター法)により、PiSおよびPiZ遺伝子点変異を高感度に検出できるキットです。

PiS、PiZ変異は、重篤な呼吸器疾患(COPD、肺気腫など)や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化の原因のひとつと考えられています。そのため、これらの遺伝子変異の有無を確認することは、罹患リスクの把握や疫学調査の観点において高い意義があると考えられます。

本品は、当社独自技術を応用したPCR法を採用しており、従来高感度検出が困難とされたインターカレーター法での点変異の簡易・高感度検出を実現しました。

概要

α1-アンチトリプシン(AAT)とは?

α1-アンチトリプシン(α1-antitrypsin:AAT)は、肝臓で合成される糖タンパク質で、血流を介して肺内に拡散され、肺胞壁の障害を防ぐ作用があります。血中のAATが欠乏するα1-アンチトリプシン欠乏症(指定難病)は、血中AAT濃度の低下によりプロテアーゼのはたらきが優位になり、慢性的な組織破壊が引き起こされる常染色体顕性遺伝の疾患です。
α1-アンチトリプシン欠乏症により血中AAT濃度が低下すると、成人では慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)や肺気腫など重篤な肺疾患の発症、小児および成人では肝疾患や脂肪織炎などの発症リスクが高まります。

α1-アンチトリプシン遺伝子の変異

AATは、ヒトではSERPINA1という遺伝子によってコードされており、SERPINA1遺伝子に変異が生じると血中のAATが欠乏します。
SERPINA1の中でも特に「PiS」、「PiZ」と呼ばれる点変異は、α1-アンチトリプシン欠乏症の代表的な遺伝子変異であり、COPDに関連することが知られています。また、いずれも近年の疫学調査でCOVID-19の重症化危険因子の1つである可能性が報告されています1)。そのため、AAT遺伝子変異の有無を確認することは、COPD発症リスクだけでなく、COVID-19感染症の疫学調査の一助になると考えられます。

遺伝子変異検出法の課題

AATの遺伝子変異は、従来ゲノムシークエンスや蛍光標識プローブを使用したリアルタイムPCR法、あるいはLAMP法などで検出されています。しかしながら、検出試薬が高額であったり、試験プロセスが煩雑で結果判定までに時間がかかるなどの課題がありました。
本キットでは、上記課題を解決すべく、インターカレーターを用いたリアルタイムPCR法を採用しており、他の検出方法よりも高感度かつ迅速に変異を検出できるよう設計されています。

キットの構成

本品は、PiSおよびPiZ遺伝子変異の有無をそれぞれ50検体ずつ測定できるキットです。
PiS、PiZについて、それぞれ正常型および変異型検出用のプライマーが付属しています。

  • キットの外観
  • キットコンポーネント
    100反応用
    1st PCR PiS primer set 100 μL x 1本
    1st PCR PiZ primer set 100 μL x 1本
    qPCR PiS wild type primer set 100 μL x 1本
    qPCR PiS mutant type primer set 100 μL x 1本
    qPCR PiZ wild type primer set 100 μL x 1本
    qPCR PiZ mutant type primer set 100 μL x 1本
    2 x PCR master mix 1,500 μL x 2本
    20 x Intercalator* 200 μL x 1本

    *Biotium, Inc.から商用ライセンスを得て、研究用試薬として販売しています (US 7803943 B2, US 7776567 B2)。

特長

  • インターカレーターを用いたリアルタイムPCRを採用!
    当社独自開発のプライマーとインターカレーター法を組み合わせ、PiSおよびPiZ遺伝子変異を高感度に検出可能
  • 鼻咽頭拭い液および唾液から精製なしで直接検出可能!
    前処理は90℃で6分熱処理するだけ
  • 約70分で測定完了!
    1st PCRは約30分、2nd PCRは約40分で完了
  • 判定が容易!
    Ct値の差で変異の有無を判定
    インターカレーター法で高感度に検出が可能なため、ヘテロ接合型変異を保有する検体でも結果の判定が容易

測定原理

本品は、インターカレーターを用いたリアルタイムPCR法を採用しています。

①検体の前処理

唾液・拭い液を熱処理(90℃,6分)し、ゲノムDNAを抽出。

※鋳型となるゲノムDNAを既に抽出済みの場合は、5ng ~ 50ng をご使用ください。

熱処理により細胞膜を破壊・DNaseを失活させます。

1st RT-PCR(約30分)

変異部位を含む領域でRT-PCR増幅

変異部位を通常のPCRで十分に増幅させます。

③2nd PCR(約40分)

1st PCRで増幅させたDNAの発光強度をリアルタイムPCRでモニタリング

1st PCRの増幅産物を鋳型にして、2nd PCRをかけます。
PCRによってDNAの増幅が起こると、合成されたDNAの間にインターカレーターが挿入され、発光します。
溶液の発光強度をモニタリングすることで、DNAの増幅量を調べることができます。

判定方法

正常型および変異型のCt値の差で変異の有無を判定します。

▼サンプル:プラスミドDNA(PiS、PiZそれぞれ正常型、ヘテロ接合型変異、ホモ接合型変異の計6種類。濃度10 pg/µL)
▼プライマー:キット付属(PiS wild/mutant type primer set,PiZ wild/mutant type primer set)

正常型 ヘテロ接合型変異 ホモ接合型変異
PiS
PiZ
  • 正常型:wild type primer set(青)の増幅曲線がmutant type primer set(赤)の増幅曲線よりも先に立ち上がる
  • 変異型(ヘテロ): wild type primer set(青)の増幅曲線とmutant type primer set(赤)の増幅曲線がほぼ同時に立ち上がる
  • 変異型(ホモ): mutant type primer set(赤)の増幅曲線がwild type primer set(青)の増幅曲線よりも先に立ち上がる
  • 実検体での測定データは、製品ページをご覧ください。
参考文献

Shapira, G., Shomron, N. and Gurwitz, D. : FASEB J., 34(11), 14160 (2020).

製品一覧

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