色素内包カーボンナノチューブ
新エネルギーの候補として水素が注目されており、水素エネルギーを使うにあたり二酸化炭素フリーの水素製造法の開発が課題となっています。しかし、現在までに実用化が検討されている光触媒は、太陽光スペクトルのごく一部(紫外領域)しか利用できないために十分なエネルギー活用ができていない事や、光触媒の一部に希少元素が利用されていることなどの課題がありました。
山口大学の三宅先生、岡山大学 高口先生らの共同研究グループは、カーボンナノチューブの内部空間に有機色素を封じ込めることで、光照射下において、色素増感水分解反応により水素製造が可能になることを世界で初めて確認されました。
また、赤色光(波長 650 nm)照射下で水分解水素生成反応の活性を比較したところ、染色したカーボンナノチューブ光触媒の量子収率(1.4 %)は、色素分子をもたないカーボンナノチューブ光触媒の量子収率(0.011 %)に比べて、活性が120 倍になることも確認されました。
特長
- カーボンナノチューブの内部空間に有機色素を封じ込めることで、長波長(650 nm)照射下で水分解による水素生成反応が可能
- 従来のカーボンナノチューブ光触媒と比較して、120倍の水素発生能を示す
色素内包カーボンナノチューブの製法
1,2-ジメトキシエタン(2 mL)を化合物1(20 mg)とSWCNT(20 mg)の混合物に添加し3時間還流する。得られた混合物を濾過し(PTFEメンブレン、10.0 μmol)、クロロホルムで洗浄する。得られた固体を膜から取り出し、クロロホルム(10 mL)中に分散させ、10 分間超音波処理し、そして再度濾過する。このサイクルを3回続けて繰り返し行なう。洗浄工程の後、得られた固体を乾燥して1@ SWCNT(25 mg)を得る。
図1. 色素内包カーボンナノチューブ / fullerodendronの構造図
(a)チオカルボニル色素1
(b)fullerodendronの分子構造
(c)1@Single-Walled Carbon NanoTubes (SWCNTs)/fullerodendronの段階的製造の概略図
(d)1@SWCNT/fullerodendronの構造図
図2. 色素内包カーボンナノチューブ / fullerodendronのUV-NIRスペクトル
1@SWCNT /フラーロデンドロン(赤)のUV-NIRスペクトル D2O中のSWCNT / fullerodendron(青)、およびTCE中の1のもの(ピンクの点線)と1 @ SWCNT /の差スペクトル fullerodendronとSWCNT / fullerodendron(グリーン)。
図3. 色素内包カーボンナノチューブ / fullerodendronのエネルギー準位図(a)と光触媒サイクル(b)
図4. 色素内包カーボンナノチューブ光触媒(赤)、および色素分子をもたないカーボンナノチューブ光触媒(青)の量子収率
参考文献
- Murakami, N., Miyake, H., Tajima, T., Nishikawa, K., Hirayama, R. and Takaguchi, Y.: J. Am. Chem. Soc., 140, 3821(2018).
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