キシレン代替品

レモゾール・レモゾールA

脱水処理された組織内の水分はアルコールに置換されていますが、アルコールもパラフィンには馴染みません。そのため、組織内のアルコールをパラフィンと相溶性のある中間剤に置き換える必要があります。

現在、中間剤にはアルコール, パラフィンと相溶性のあるキシレン等が主に汎用されています。キシレンは揮発性に富み、刺激臭があり、また人体に対しても有害で、職場環境でも問題になっています。レモゾール®, レモゾール®Aは、毒性、刺激臭がほとんど無く、キシレンの代替えとして利用できます。

特にレモゾール®Aは、フィトンチット(さわやかな森林浴成分)を主体とした中間剤です。それぞれの特長は以下の通りです。

レモゾール® レモゾール® A(エース)
主成分 D(+)-リモネン ピネン化合物
由来 オレンジ皮 ユーカリ, 松樹皮
におい 柑橘系のにおい ユーカリの葉, 松脂様のにおい
揮発性 キシレンに比べ揮発性は劣る 優れている(キシレンと同等)
比重(20 ℃) 0.838~0.844 g/mL 0.873~0.879 g/mL
引火点 61 ℃ 36.5 ℃
沸点 177 ℃(d-リモネン) 154 ℃~166 ℃
屈折率(20 ℃) 1.473 1.475
毒性(LD50 ラット経口) 5 g/kg以上 5 g/kg以上
備考 目、鼻、喉、皮膚への刺激はない。
リモネンは米国FDAにより食品添加物・香料原料として許可されている。
目、鼻、喉、皮膚への刺激はない。
ピネンは米国FDAにより食品添加物・香料原料として許可されている。
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レモゾール®

キシレン、クロロホルムに代わる人体に優しい溶剤です。オレンジ皮油の成分であるD(+)-リモネンを主成分とするレモン微香を持ちます。

特長

  • 安全で人に優しい溶剤
  • キシレン、クロロホルムの代用として中間剤、脱パラフィン剤および透徹剤として使用可能
  • 中間剤としてキシレンを使用する場合に、組織が収縮・硬化して薄切しにくい組織でも、 本製品では臓器の軟らかさを保ったままでパラフィン包埋組織切片が作製可能
  • キシレンとは違い、微生物によって分解されるので、廃液処理がより簡単
  • 一般染色および免疫組織染色に支障なく使用可能
  • マイルドな柑橘の香りがする精製リモネンが主成分

レモゾール® を使用した組織切片の染色例

  • ヒト胃(バイオプシー)
    HE染色
  • ヒト肺(CEA)
    ABC染色

レモゾール®A(エース)

レモゾール® A(エース)は、ユーカリ, 松樹皮より抽出した植物エッセンスを主成分とするテルペン系の溶剤で、病理組織標本作製時、キシレン代替品として中間剤, 透徹剤に使用されます。操作時の溶剤臭を解消、揮発性も良く、レモゾール®よりもさらに性能アップしています。

特長

  • 揮発性に優れている(キシレンとほぼ同等)
  • 目、鼻、喉、皮膚を刺激することなく、キシレンのような毒性がないので安全
  • HE、特殊染色および免疫組織染色に使用可能
  • 使用済み液は固化、廃棄可能

レモゾール®、レモゾール®Aの操作手順例

脱水、脱脂、パラフィン浸透の条件

脱パラフィン、アルコール処理の条件

透徹・封入の条件

  • 表
  • *1 レモゾール®の成分リモネンは、オレンジ油特有のベトツキを
      スライドガラス上に生じさせることがあります。このベトツキ防止と
      レモゾール®の封入効果を上げるため、封入直前にキシレン槽を
      手早く通されることをお勧めします。
  • 本製品とエタノールまたは水が混ざると白濁あるいは析出物を生じることがあります。
    白濁あるいは析出物が生じる場合、本製品からエタノールまたはエタノールから本製品へスライドガラスを浸漬する前に、本製品と100 %エタノールを1:1で混合した溶液に浸漬することを推奨します。

レモゾール®およびレモゾール®Aの廃棄処理方法

  1. 凝固剤をご用意しております。
  2. 使用液のまま処理する場合、直接公共の河川へ通じる排水溝への廃棄は BOD, TOC 上昇の原因になるので、活性汚泥処理等のうえ、排水してください。

レモゾール® 凝固剤

病理標本作製時の中間剤・透徹剤であるレモゾール®、レモゾール® A の使用済み液を凝固させる処理剤です。

主成分

ヒマシ硬化脂肪酸

操作手順

  1. レモゾール® またはレモゾール® Aの廃液に対して約5 %のレモゾール® 凝固剤を添加する。
  2. ホットスターラーまたは湯浴中で①液を約60 ℃ に加温し撹拌しながら溶かす。(火気に注意)
  3. 冷却して凝固させる。

注意

  • レモゾール®、レモゾール® A は引火性の高い溶剤です。直火による加熱、火気の近くでの作業は避けてください。
  • 凝固後の扱いについて : 法規上、危険物第二類第一種可燃性固体として取り扱ってください。
  • キシレン(劇物-3 ,危険物)、ホルマリン(劇物-3)の混入した廃液は、上記のような廃棄方法はできません。

具体的措置
  • 凝固後、ある程度の期間 室内に貯蔵しておく場合
    ビニール袋等に入れて漏れないようにし、必ず口を縛り、火気の近くを避け保管してください。
    (夏季中は特に気化しやすく、密閉されていないと火気の近くでは引火の恐れがあります。)
  • 廃棄時(1回の廃棄量により異なります。)
    1回の廃棄量が20 kg未満 : 各自施設の償却で処理されることをお勧めします。届け出等は必要ありません。
    1回の廃棄量が20 kg以上100 kg未満 : 各市町村へ届け出が必要です。

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