光学顕微鏡用固定液

固定とは、死体あるいは生体より採取した組織片の生態または病態を顕微鏡標本として観察する際に、できる限り「生きていた時の状態」のままで保存するための工程です。その目的は下記になります。

  • 可能な限り速やかに組織片の主要構成成分のタンパク質を安定させ、自己融解過程(autolysis)を停止させること。
  • これに続く標本作製過程における薬品、熱等の影響による組織片の変質、変形をできる限り少なくすること。

現在、多くの固定法がありますが、顕微鏡の違いや(光学顕微鏡と電子顕微鏡では基本的に異なる)目的とする構造や物質の違い等により最適な方法を選択する必要があります。

中性緩衝ホルマリン液

ホルマリンは分解してぎ酸を生じ、組織によってはこの酸の影響を受けるものがあります。中性緩衝ホルマリン液は、ホルマリンにりん酸ナトリウムを加えてpH 約7.4に調整したもので、酸による組織への影響の心配はありません。

中性緩衝ホルマリン液は日常固定液として優れているだけでなく、特殊な目的にも使われます。例えば組織化学的方法(酵素、ヘモグロビン等)、通常のホルマリン液が使えない組織(粘性多糖類、グリコーゲン、神経原線維等)、また電子顕微鏡用にも使われます。

品 名 組 成 ホルムアルデヒド含量 pH 浸透力
10% 中性緩衝ホルマリン液 ・ホルマリン原液・・・・・・・・ 100 mL
・りん酸一ナトリウム・二水和物・・4.5 g
・りん酸二ナトリウム・無水・・・・6.5 g
イオン交換水を加えて1 Lとする。
3.8~4.1 w/w% 7.4~7.5 ・20% > 15% > 10%の順によい。

・10%は数日以上
 固定液に置く場合によい。

・20%は1~2日程度の固定によい。

・15%は両者の中間に属する。
15% 中性緩衝ホルマリン液 ・ホルマリン原液・・・・・・・・・150 mL
・りん酸一ナトリウム・二水和物・・ 4.5 g
・りん酸二ナトリウム・無水・・・・ 6.5 g
イオン交換水を加えて1 Lとする。
5.8~6.1 w/w% 7.35~7.45
20% 中性緩衝ホルマリン液 ・ホルマリン原液・・・・・・・・・200 mL
・りん酸一ナトリウム・二水和物・・ 4.5 g
・りん酸二ナトリウム・無水・・・・6.5 g
イオン交換水を加えて1 Lとする。
7.6~8.2 w/w% 7.3~7.5

マイルドホルム®

リリー処方に従って調製された中性緩衝ホルマリン液に、ホルマリンの刺激臭と不快臭を抑えるマイルド剤(ワインエキス)を添加した無臭タイプの固定液です。なお、安全性を考え、ホルマリンと認識できる程度の臭いは残しています。

特長

  • 酵素抗体法による免疫組織染色の組織固定に最適
  • マイルド剤は、自己融解がかなり進んだ組織でも打ち消されることなく安定
  • 室温で 2 年間以上安定
  • バイオプシー材料、試験的組織切除片、手術摘出材料、解剖組織材料を手術室や病理検査室で即時固定処理する場合、嫌なホルマリン臭に悩まされることなく固定処理可能
  • 組織への浸透、固定力は中性緩衝ホルマリン液と同等以上

マイルドホルム®を使用した染色例

  • ヒトリンパ節組織の免疫組織染色
    (データご提供 : 大阪厚生年金病院 病理検査科)
  • ヒト肝組織への浸透・固定度テスト
    ①マイルドホルム® 10N(10 % 中性緩衝ホルマリン液と同等)
    ②マイルドホルム® 10NM
    ③マイルドホルム® 20N(20 % 中性緩衝ホルマリン液と同等)
    ④マイルドホルム® 20NM
    ⑤10 % ホルマリン液
    ⑥20 % 中性緩衝ホルマリン液

  • N : Neutral(中性)を表します。マイルドホルム®は中性緩衝ホルマリン液をベースにしています。
  • M : 組成中にメタノールを含んでいることを表します。メタノールを添加することで組織への浸透・固定力が高まります。
    メタノールは容量の10%量を添加しています。
  • 一般にNMタイプは迅速に短時間で固定したい場合に特に適します。
    また、ホルマリン・メタノール(FM)固定液として結合組織や脂肪組織を多く含む検体の固定にも優れています。

各種固定液

品名 組成 特長
カルノア液 ・純エタノール・・600 mL
・クロロホルム・・300 mL
・氷酢酸・・・・・100 mL
無水アルコールより浸透性に優れており、グリコーゲン、核酸等の固定に適している。3~4 mmの組織片で2~4時間で固定が完了する。固定後は純アルコールに移しクロロホルムと酢酸を取り除いてから包埋する。強い脱水・脱脂作用があり固定時間が長いと組織や細胞に強い収縮と硬化を起こす。
ブアン液 ・飽和ピクリン酸水溶液・・750 mL
・ホルマリン原液・・・・・250 mL
・氷酢酸の割合で混合・・・50 mL
浸透力が強く、小さい組織片では1~2時間で固定が完了する。弱い脱灰作用を有しており、胎児の骨組織においては脱灰せずに薄切が可能である。内分泌組織、グリコーゲン、多糖類等を固定する際に多用されている。固定後は70 %エタノールで溶液の黄色が消えるまでよく洗う。
ザンボニ液 ・飽和ピクリン酸水溶液・・150 mL
・パラホルムアルデヒド・・20 g
りん酸緩衝液で1 Lへメスアップ
主に免疫組織化学用、電子顕微鏡検査用固定液として使用されている。 ポリペプチド系抗原の固定に適している。固定は4 ℃で4~12時間行う。固定後は70 %エタノールで溶液の黄色が消えるまでよく洗う。
4 % パラホルムアルデヒド・りん酸緩衝液 ・パラホルムアルデヒド・・・・・・・20 g
・0.1 mol/L りん酸緩衝液(pH7.4)・・500 mL
主に免疫組織化学用、電子顕微鏡検査用固定液として使用されている。
タンパク系抗原の固定に適している。固定は4 ℃で4~12時間行う。
PLP溶液セット ・Solution A(リジン-りん酸緩衝液)・・・・・・・50 mL
・Solution B(10 % パラホルムアルデヒド溶液)・・50 mL
・Solution C(メタ過よう素酸ナトリウム溶液)・・ 50 mL
免疫組織化学用に特化した中性緩衝の固定液である。糖タンパク系抗原の固定に適している。抗原性が失活されやすい補体やリンパ球の表面マーカーを検出する際に使用する。

染色例

製品一覧

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中性緩衝ホルマリン

マイルドホルム

その他固定液

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