電解液
リチウムイオン電池 (LIB) の電解液は、正極負極間のリチウムイオン移動を媒介しています。LIBは約4 Vと高い作動電圧をもつため、電解液にはその電圧でも分解しない広い電位窓をもつこと、また高いイオン伝導度を示すことなどの条件が求められます。水系電解液は1.2 Vほどで電気分解されてしまうため、LIBでは有機溶媒が電解液として使用されています。代表的な有機溶媒としては炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの環状カーボネートがあげられます。また環状カーボネートは粘度が高くイオン伝導度の点で不利なため、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの鎖状カーボネートと混合して使用することが一般的です。
しかし、これらの有機溶媒は燃えやすく安全性に懸念があるため、近年では難燃性のイオン液体や固体電解質を用いたLIBの開発が行われています1-4)。
SEIの形成
LIBでは炭素系材料が負極材料として一般的に使用されています。充電時、負極の電位は0.1~0.2 V vs Li+/Liになり、非常に強い還元力を示します。この電位では、電解液として使用されている有機溶媒も分解されます。しかし、この分解による生成物が負極表面に堆積し、固体電解質界面(solid-electrolyte interphase、SEI)と呼ばれる薄膜を形成します5)。
SEIはリチウムイオン伝導性でありながら電子絶縁性であるため、電解液のそれ以上の分解を防ぎながら充放電を可能にしています。炭素系材料を負極とするリチウムイオン電池にとって非常に重要な役割を果たすSEIですが、SEIが薄すぎると電解液の分解は止まらず、厚すぎると内部抵抗の上昇につながり、またSEIの形成にはリチウムイオンを消費するため、SEIを安定に制御することが求められています。
参考文献
- Sakaebe, H.and Matsumoto, H.:Electrochem. Commun., 5, 594 (2003).
- Lombardo, L., Brutti, S., Navarra, M. A., Panero, S. and Reale, P.:J. Power Sources, 227, 8 (2013).
- Seino, Y., Ota, T., Takada, K., Hayashi, A. and Tatsumisago, M.:Energy Environ. Sci., 7, 627 (2014).
- Ramakumar, S., Deviannapoorani, C., Dhivya, L., Lakshmi S.S. and Murugan, R.:Prog. Mater. Sci., 88, 325 (2017).
- Peled, E.:J. Electrochem. Soc., 126, 2047 (1979).
製品一覧
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カーボネート系電解液
重水素化カーボネート系電解液
イオン液体電解液WILシリーズ
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