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【テクニカルレポート】試料前処理用固相抽出カラム Presep® RPP-WAX の開発

本記事は、和光純薬時報 Vol.78 No.4(2010年10月号)において、和光純薬工業株式会社 試薬研究所 竹中 智子が執筆したものです。

分析試料の精製・濃縮などの前処理として用いられる固相抽出法(SPE)は、従来の液-液抽出法に比べて簡便かつ、多検体の同時処理が可能などの利点をもち、医薬・食品・環境分析など幅広い分野で採用されています。Presep®(プレセップ®)シリーズは、ディスポーザブルタイプのシリンジ型ボディに SPE 用担体を充てんしたカラムであり、目的成分に対する高い捕集率と回収率が得られるように設計されています。

この度、この Presep® シリーズに新製品として Presep® RPP-WAX を開発しましたので、その特長・製品仕様、カラム性能についてご紹介します。

(1)Presep® RPP-WAX の特長・製品仕様

図1.Presep RPP-WAX
図1.Presep® RPP-WAX

本品は親水性基と疎水性基を併せもつ粒子径 60 µm のジビニルベンゼン-メタクリレート系ベースポリマーに弱陰イオン交換基(第三級アンモニウム基)を導入した担体 60 mg を 3 mL シリンジに充てんした SPE カラム(図 1)です。逆相モードとイオン交換モードの機能を持ち、おもに強酸性化合物を選択的に回収し、しかも、ベースポリマーが親水性であることから水系試料での高い捕集効果が期待できます。

(2)カラム溶出条件の検討

カラム溶出条件は、2-ナフタレンスルホン酸、サリチル酸及びケトプロフェンを生理食塩水で調製した標準試料の添加回収率から評価しました。その結果、カラムのコンディショニング条件や溶出の際の有機溶媒の種類(アセトニトリル/メタノール)と混合比率やアンモニア濃度により、2-ナフタレンスルホン酸、サリチル酸及びケトプロフェンの回収率が変動することが判りました。その結果を図 3、4 に示しましたが、溶出時のアンモニア濃度は 1%、溶媒種はメタノールが至適であると判断しました。この時の至適メソッドを図 2 に示しました。

図2.前処理メソッドとHPLC条件
図2.前処理メソッドとHPLC条件
  • 図3.有機溶媒の影響
    図3.有機溶媒の影響
    アンモニア濃度を2%に固定し、アセトニトリル100%からメタノール100%まで混合比率を変化させた時の回収率の変化を測定した。
  • 図4.アンモニア濃度の影響
    図4.アンモニア濃度の影響
    メタノール100%の時のアンモニア濃度の影響を測定した。

(3)カラム性能の比較

図 2 に示した前処理メソッドに従って Presep® RPP-WAX と A 社製品(60mg/3mL:親水性逆相-弱陰イオン交換基混合ポリマー)、B 社製品(100mg/1mL:弱イオン交換基結合シリカ)、C 社製品(60mg/3mL:弱イオン交換基結合ポリマー)の性能をベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、サリチル酸及びケトプロフェンの回収率の比較で検討しました。

その結果を表 1 に示しましたが、Presep® RPP-WAX は溶出液としてメタノールのみの使用で高い回収率が得られるなどの利点があり、既に他社製品でメソッドを組まれている場合でも、溶出条件を僅かに変更することで良好な回収率が得られると考えます。

表1. 添加回収率
成分名 Presep® RPP-WAX A 社製品 B 社製品 C 社製品
ベンゼンスルホン酸 93 83 20
トルエンスルホン酸 93 90 24
2-ナフタレンスルホン酸 100 94 34 22
サリチル酸 93 94 24 33
ケトプロフェン 100 88 21 36

(-:未測定)

Presep® RPP-WAX は近日発売を予定しております。先に発売しましたRPP-SAX(強陰イオン交換基)と使い分けることで固相抽出法の応用が広がれば幸いです。

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