シークエンス: 次世代シーケンス

GENEWIZ™ (アゼンタ株式会社) の超高解像度空間的遺伝子発現解析 Stereo-seq

AZENTA

GENEWIZ™ (アゼンタ株式会社) が提供する空間的遺伝子発現解析(Spatial Transcriptomics)は、遺伝子発現プロファイリングと免疫組織化学の空間分解能を統合することにより、組織を新たな視点から観察することができます。この技術は、細胞間の相互作用や組織の不均一性、病原性、治療への応答を調べるのに有効です。直径0.22 μmのDNA NanoBall (DNB)を0.5 μmの間隔で配置、10 x 10 μm(約1細胞サイズ)を400個のDNBでカバー、1 cm四方のチップ上には合計4億個ものDNBが配置されています。凍結切片、FFPEの両方に対応、生物種を問わず使用可能です。GENEWIZは日本初の認証サービスプロバイダで、全工程を日本国内ラボにて実施します。

空間解析とは

空間遺伝子発現解析(Spatial Transcriptomics)は、組織内の細胞の位置情報を保ったまま遺伝子発現を解析します。従来の発現解析ではRNA抽出や細胞分散で組織を破壊するため、細胞の位置情報が失われていましたが、空間発現解析技術の向上によって、細胞の位置情報と遺伝子発現を同時に解析できます。

メリット

  1. 組織内の細胞の配置を把握できる
  2. 細胞間の相互作用を理解できる
H&E染色画像
H&E染色画像
遺伝子発現プロファイル
遺伝子発現プロファイル 遺伝子発現プロファイル""
クラスタリング解析
クラスタリング解析

Stereo-seqの強み

現在主に使用されている空間解析プラットフォームとして、6つのプラットフォームをあげて、7つの項目で比較をしました。解像度、対応可能なサンプルタイプ、適用できる生物種など、多くの点でStereo-seqは他のプラットフォームに対して優位性を持っています。これが、GENEWIZがStereo-seqを受託で提供している大きな理由です。

解析プラット
フォーム
STOmics X社 Y社 Z社
Stereo-seq 高解像度サービスA サービスB サービスC サービスD サービスE
解析原理 アレイ、NGS利用 アレイ、NGS利用 In situ sequencing マイクロダイセクション、NGS利用 In situ hybridization In situ hybridization
解析面積 1 x 1 cm;
(最大6 cm2)
0.65 x 0.65 cm 1 x 2.2 cm 0.2 ~ 3 cm2 1 ~6.8 cm2 1.25~3 cm2
解像度 0.5 µm 2 µm 0.2 µm ≧0.05 µm 10 µm 0.1 µm
発現遺伝子検出
の網羅性
x x x x x
細胞境界の設定 x
対応可能な
サンプルタイプ
新鮮凍結
FFPE
新鮮凍結
FFPE
新鮮凍結
FFPE
新鮮凍結
FFPE
新鮮凍結
FFPE
新鮮凍結
FFPE
生物種適用 あらゆる 生物種 ヒト・ マウス ヒト・ マウス ヒト・ マウス ヒト・ マウス ヒト・ マウス

凍結細胞とFFPE固定細胞の比較

Stereo-seqでは、提出サンプルは新鮮凍結組織とFFPE組織の2種から選択いただけます。
検体のタイプや検出対象のRNAなど、ご研究目的に併せてご検討ください。

新鮮凍結v1.3 FFPEv1.3
解像度 高(500 nm) 高(500 nm)
標準切片厚 10μm 5μm
対象切片上でのH&E染色 対応 対応(Cell Bin非対応)
RNAキャプチャ方式 Poly-T配列 ランダムプローブ
検出対象遺伝子 Poly-A mRNA; 3´端 Non-coding RNAを含む
全転写物;全転写領域
シーケンシング深度 ~15億リード ~30億リード
感度(検出遺伝子数) 200-400 (Bin 20)
4,000-10,000 (Bin 200)
100-200(Bin 20)
4,000-7,000 (Bin 200)
条件検討(Chip-P) 必須 不要

サービスの流れ

GENEWIZではオンライン相談から解析まで一貫して国内ラボで実施します。

納品物

  • SAW (Stereo-seq Analysis Workflow)パイプラインによる解析結果一式
  • FASTQ生データ
  • 解析レポート

GENEWIZ検証結果

サプライヤによる検証結果①

データ解析、一次解析ではメーカー提供のSAWというパイプラインでマッピング、発現量カウント、次元圧縮とクラスタリングを実施します。ヒトとマウスの統合したリファンレンスを作成することで、マウスゼノグラフトモデルにも対応可能です。
出力ファイルには、統計値等を含む解析レポート、発現部位を可視化するためのファイル、マトリクスデータを含みます。

必要なハードウェアとOS:

  • 8-core Intel or AMD processor (>24 cores recommended)
  • 128GB RAM (>256GB recommended)
  • 1TB free disk space or higher
  • 64-bit CentOS/RedHat 7.8 or Ubuntu 20.04

サプライヤによる検証結果②

マウス7日齢の脳凍結切片を対象に実施した空間解析の事例をご紹介します。

  • マウスP7 右脳 冠状面
  • 切片厚 10 μm、組織サイズ約3.5 x 4.9 mm
  • シークエンス 1.5G PEリード (DNBSEQ-G400, 1 flow cell)
  • 検出遺伝子数 (中央値) 448 (Bin20‐10 μm2 おおよそ1細胞相当)
    9,666 (Bin200‐100 μm2)
組織イメージ上での
プロジェクション
UMAP
プロジェクション

遺伝子発現一覧 (組織特異性の高い順)

Tuba1a遺伝子の発現パターン (左)
一部領域の拡大図 (下)
色付きのドット一つが1細胞相当/白点は細胞核
Tuba1a:滑脳症の原因遺伝子の一つ

サプライヤによる検証結果③

空間解析結果をStereoMapというソフトウェアで可視化した結果をお示しします。部位特異性の高い遺伝子を一覧、それぞれの発現パターンを組織のイメージと重ね合わせて可視化することが可能です。
例えば、滑脳症の原因遺伝子とされているαチューブリンの遺伝子は主に皮質部分で発現、家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP) への関連が示唆されているトランスサイレチン遺伝子は、海馬付近で特異的に発現していることが観察できます。

H&E染色画像
全遺伝子の発現
遺伝子発現のリスト (一部)
部位特異性の高い順に記載
Tuba1a遺伝子 (滑脳症関連遺伝子)
Ttr遺伝子 (トランスサイレチン) (FAP関連遺伝子)

StereoMap:
メーカーから無償で提供。Windows/MacのGUIソフトウェア。クラウドサービスでも利用可能。

サプライヤによる検証結果④

さらに、Cloud/Stereopyによる二次解析を実施した結果が以下になります。
組織切片上での、クラスタリング、クラスター間での遺伝子発現、クラスター間で共通しているマーカー、クラスターに特長的なマーカーのヒートマップ表示が可能です。
Bin 50の結果も併せてお示しします。より解像度の高い、Bin 10や20など、Binサイズを変えて実施可能です。
特に免疫細胞など、細胞サイズが小さいものをより適切に検出するためには異なるBinサイズで解析することも重要となります。
また、クラスタリングの結果をStereoMapにインポートし、H&Eの組織イメージと重ね合わせて確認することが可能です。

  • Bin 50での例
  • クラスタリング
  • クラスター間での遺伝子発現比較 (1 対 残りのクラスター)
各クラスター VS 残りのクラスターでの発現変動
クラスター間での共通マーカー
各クラスター VS 残りのクラスターでの
発現変動

サプライヤによる検証結果⑤

上述の二次解析結果のクラスターについて細胞タイプのアノテーションを行い、細胞タイプごとにまとめたものがこちらになります。

  • 細胞タイプのアノテーション (ヒト・マウス対象)
  • クラスター間での遺伝子発現比較 (1 対 残りのクラスター)

サプライヤによる検証結果⑥

任意の領域間での発現比較については、StereoMap上で任意の領域を選択したうえでJsonファイルとしてコーディネイトを抽出、SAWパイプラインで各領域の発現マトリクスデータを生成したものを解析することで、領域間での各遺伝子の発現量を解析可能です。

サプライヤによる検証結果⑦

マウス14日齢の脳FFPE切片を対象に実施した空間解析の事例をご紹介します。

  • マウスP14 全脳 冠状面
  • 切片厚 5 μm
  • 組織サイズ約6.8 x 8.8 mm
  • シークエンス 30億 PEリード
    DNBSEQ-G400, 2 flow cells
  • 検出遺伝子数 (各解像度での中央値)
    4,081 (Bin200 - 100 x 100 μm単位)
    97 (Bin20 - 10 x 10 μm単位)
クラスタリングとUMAP (Bin 200)
H&E染色像
全遺伝子発現のヒートマップ
領域特異的発現を示す3遺伝子の発現 + H&E染色画像

主な関連文献

Stereo-seqはさまざまな生物種・研究分野で利用され、査読付き論文でその成果が公開されています。

筆頭筆者 ジャーナル名 Volume/Pages/Year 論文タイトル 研究領域 生物種 組織タイプ
Liang, W. Cell Research Vol. 33, pp. 585–603, 2023 An invasive zone in human liver cancer identified by Stereo-seq promotes hepatocyte–tumor cell crosstalk, local immunosuppression and tumor progression Oncology/ Immunology Human Liver cancer tissue, paratumor tissue, lymph nodes
Gong, Y. Nature Communications Vol. 16, Article 482, 2025 Stereo-seq of the prefrontal cortex in aging and Alzheimer's disease Neurology/ Neuroscience Human Prefrontal cortex (BA10 area)
Chen, A. Cell Vol. 185, pp. 1777-1792, 2022 Spatiotemporal transcriptomic atlas of mouse organogenesis using DNA nanoball-patterned arrays Developmental Biology Mouse Embryonic tissues (multiple organs during development)
Xia, K. Developmental Cell Vol. 57, pp. 1299-1310, 2022 The single-cell stereo-seq reveals region-specific cell subtypes and transcriptome profiling in Arabidopsis leaves Plant Biology Arabidopsis thaliana Leaf tissue
Liu, C. Developmental Cell Vol. 57, pp. 1284-1298, 2022 Spatiotemporal mapping of gene expression landscapes and developmental trajectories during zebrafish embryogenesis Developmental Biology Zebrafish Embryonic tissues

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