Multispan社は、設立の2004年から20年以上にわたり、細胞工学、アッセイ開発、ハイスループットスクリーニング (HTS) などを得意とする、アメリカ カリフォルニア州拠点のバイオテクノロジー企業です。
同社はGPCRを標的とする低分子医薬品やバイオ医薬品の開発において、世界中の製薬企業、バイオ企業、アカデミア研究者との共同研究や、サービスを提供してきた実績があります。豊富な安定発現細胞株やプロトコル、高品質かつ短納期な受託解析を強みとし、プロジェクトに適したサービスをご提案いたします。

特長
MULTISCREEN™安定発現細胞株
Multispan社が展開する細胞株シリーズ「MULTISCREEN™安定発現細胞株」は、同社の細胞工学における知見とアッセイ開発のノウハウを組み合わせ、細胞ベースのHTSアッセイに合わせて設計、開発されています。また、クローニング、スクリーニング、特性の検証がされているため、HTSや化合物プロファイリングなどにすぐに使用できます。
MULTISCREEN™安定発現細胞株の利点
- Multispan社のすべてのアッセイに対応可能
- 600種類以上のGPCR安定発現細胞株
- GPCRがターゲットのアッセイやセカンドメッセンジャーの解析にも対応
- すべての内在性細胞シグナル伝達経路の維持
- 2ヶ月間安定した機能を維持し、アッセイにおいて一貫したパフォーマンスを発揮
- 在庫品は即日メーカー発送、カスタム品は3ヶ月でメーカー発送
大スケールなスクリーニング
384および1586ウェルマイクロプレートを利用した大スケールのスクリーニングを得意としています。
Multispan社によるスクリーニング (ELISA、レポーターアッセイ、結合アッセイ、セカンドメッセンジャーアッセイ、フローサイトメトリーアッセイなど) の大部分は384ウェルマイクロプレートフォーマットで実施されており、アッセイ実施期間の短縮に寄与しています。
大スケール化合物ライブラリに対応
数千~数百万スケールの化合物ライブラリのスクリーニングに対応しています。
お客様がお持ちのライブラリをスクリーニングにご使用いただける他、世界最大級のスクリーニング化合物在庫数を誇る、Enamine社製の化合物ライブラリをお使いいただくことも可能です。
最適化されたアッセイプロトコル
現在、市場に流通する医薬品のおよそ30 %は、GPCRをターゲットにしたものです。そのため、GPCRとその下流シグナルの伝達に関する理解を深めることは、化合物の選択性や特異性、副作用の予測精度向上につながり、新薬開発に大きく貢献します。Multispan社ではその支援のために、多様なアッセイを開発・検証しており、最適化されたアッセイは2000種類を超えています。
その一例として、以下のようなパネルアッセイや、βアレスチンやカルシウムイオンなどのセカンドメッセンジャーの解析、フローサイトメトリーなどのアッセイがあります。
パネルアッセイ例
- ヒト-オルソログGPCR パネルスクリーニング
- 動物モデルのin vivoに影響を及ぼす可能性があるGPCRシグナル伝達の評価を可能にします。
これにより、前臨床研究の候補となる化合物が持つリスクを事前に把握することができます。
- 235-ヒトGPCR パネルアッセイ
- 235種類のヒト受容体の機能を測定するアッセイです。リード化合物や分子が特定のターゲットに特異的か、あるいは非特異的に多くのターゲットに交差反応しているか確認できます。
- 50-ヒトGPCR+ Safety / liability
Functional パネルアッセイ - アデノシンファミリーやセロトニンファミリーなど、中枢神経系や心臓、肺、消化管の安全性やリスクに関与する、50種類のGPCRアッセイパネルを用いて、ヒット化合物やリード化合物などのプロファイリングを行います。これにより、化合物を評価すると同時に化合物がオフターゲットに結合することで起こりうる潜在的なリスクを評価することができます。
化合物
- ● アゴニスト
- ● アンタゴニスト
- ● ポジティブアロステリックモジュレーター (PAM)※
- ● ネガティブアロステリックモジュレーター (NAM)※

解析対象例
| Ca++ | cAMP | β-arrestin |
| Internalization | Radioligand | Fluo-ligand |
| IP-one | pERK | pGRK2 |
| pAMP | Reporter | GTPγS |
| G-Chimera | Proliferation | Migration |
上記のような化合物と解析対象例を組み合わせてアッセイを実施できます。
- ※ポジティブアロステリックモジュレーター (PAM)
受容体サブタイプへ選択的に結合し、受容体が細胞に送るシグナル強度を高める作用を持つ化合物 - ※ネガティブアロステリックモジュレーター (NAM)
ポジティブアロステリックモジュレーターとは逆に、受容体サブタイプへ選択的に結合し、受容体が細胞に送るシグナル強度を弱める作用を持つ化合物
アッセイ実施期間目安
| アッセイ | アッセイ実施期間 |
|---|---|
| 10万化合物ライブラリのHTSとヒット確認 | 1ヶ月 |
| SARリード最適化1次アッセイ | 1日 |
| SARリード最適化2次アッセイ | 1-5日 |
| 32-GPCR Safety / liability Functional パネルアッセイ | 5日 |
| 50-GPCR+ Safety/liabilityパネルアッセイ | 2週間 |
| 235-GPCR パネルスクリーニング | 4週間 |
※これらのアッセイはサービスの一例です。
サービス
アッセイ開発サービス
創薬研究におけるアッセイは、生化学的アッセイ、細胞ベースアッセイ、免疫アッセイの3つのカテゴリーに大別されます。
その中でも、細胞ベースアッセイは生細胞における化合物の生物学的活性、有効性、安全性を評価するために不可欠なツールです。生化学的アッセイと比較し、細胞ベースアッセイは生体内に近い環境を再現しているため、以下のような解析や評価を行うことができます。
- 受容体の活性化、内在化、脱感作の評価
- カルシウムやcAMP、βアレスチンなどの、シグナルカスケードの測定
- 細胞増殖、アポトーシス、細胞毒性の評価
- 生体機能におけるオフターゲット効果、化合物の毒性の評価
MultispanではGPCRやキナーゼ、イオンチャネル、核内ホルモン受容体の解析など、お客様のニーズに合わせた細胞ベースアッセイのカスタム・開発を行います。
細胞アッセイ開発の流れ
- 細胞モデル
選択 - 測定方法
選択 - 測定する
指標の
選定 - 作用機序
選択 - 細胞エンジニアリング
&
アッセイ
開発 - アッセイの
最適化 - 検証
-
- ステップ1
- 細胞モデルの選択
アッセイ開発プロセスは、最初にターゲットの生物学的特性と、そこから想定される作用機序を最も反映する細胞モデルの特定することから始まります。
アッセイ開発に用いられる細胞例:
・初代細胞
・安定発現細胞株
他に、肝細胞、ヒトiPS細胞由来のミクログリア細胞、初代線維芽細胞、PBMCなど、多様な細胞モデルを使用したHTS対応アッセイも開発しています。 -
- ステップ2
- 測定方法の選択
細胞モデルの選定後、最適な測定方法を選択します。
お客様の研究目標に合わせ、測定方法を柔軟に設計・調整することが可能です。
例:・ELISA/細胞ベースELISA
・レポーターアッセイ
・結合アッセイ
・セカンドメッセンジャーアッセイ
・フローサイトメトリー
・TR-FRETおよび蛍光アッセイ
・吸光度または発光アッセイ
・放射性同位元素を用いたアッセイ -
- ステップ3
- 測定する指標の選択
ターゲット、作用機序、化合物が細胞の働きに与える影響に基づいて、測定する指標の選択を行います。
例:・セリン/スレオニンキナーゼ
・受容体型チロシンキナーゼ
・核ホルモン受容体
・イオンチャネル
・トランスポーター
・GPCR -
- ステップ4
- 作用機序の選択
Multispanでは、細胞ベースアッセイ開発において、各ターゲットの特性および作用機序を入念に考慮しています。化合物がどのように作用するかに応じて、アッセイをデザインいたします。
HTS専用に開発したアッセイには、さまざまなモダリティを組み込んでおり、スクリーニングの条件に合わせてアッセイをカスタマイズします。
スクリーニング条件の例:
・アゴニスト
・アンタゴニスト
・ポジティブアロステリックモジュレーター (PAM)
・ネガティブアロステリックモジュレーター (NAM)
化合物の作用機序に即したアッセイをデザインすることで、シグナルの偏りや選択性がアッセイに関係する場合でも、化合物を正確に比較、スクリーニングするために必要な情報を取り入れられます。 -
- ステップ5
- 細胞エンジニアリング
&アッセイ開発
-
- ステップ6
- アッセイの最適化
-
- ステップ7
- 検証
アッセイ開発期間の目安
1ヶ月 (MULTISCREEN™細胞株を使用する場合) ~ 3ヶ月 (細胞株を開発する場合)
アッセイ例:Custom MULTISCREEN™ pGRK2 細胞アッセイ


β1-アドレナリン受容体 (β1-AR) について、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2 (GRK2※) 活性を測定した細胞アッセイ例です (左 : アゴニスト結合, 右 : アンタゴニスト結合)。MULTISCREENTM pGRKアッセイでは、β1-ARの他、GPR40やグルカゴン様ペプチド-1も同様に活性を測定することが可能です。
※ GRK2はGPCRをリン酸化するセリン・トレオニンキナーゼであり、以下のような作用機構を基本に持ちます。
①アゴニスト結合したGPCRがGRKを活性化
②活性化されたGRKが受容体をリン酸化
③リン酸化された受容体にアレスチンが結合
④受容体の脱感受性が発生
GPCR抗体プロファイリング
MULTISCREEN™安定発現細胞株を用いて、抗体の特性評価をいたします。プロファイリングには500種類以上の GPCR安定発現細胞株をご利用いただけるとともに、GPCR発現安定細胞株の作成、GPCR結合アッセイ、および機能アッセイの開発、HTSに関する専門知識をご提供いたします。
これにより、以下の検証が可能になります。
- ● GPCR抗体の、GPCRターゲットに対する結合アッセイおよび細胞ベースアッセイにおける機能性
- ● 抗体の結合アッセイおよび細胞ベースアッセイにおけるGPCRオフターゲットに対する交差反応性
- ● ヒトGPCRとオルソログGPCRの比較
細胞株開発
お客様のプロジェクトのニーズに合わせて、安定発現細胞株を作成することができます。
カスタム生成されたMULTISCREEN™安定発現細胞株は、特性評価・クローニングがされており、機能アッセイでスクリーニングもされています。そのため、HTSや化合物プロファイリングですぐに使用できます。
カスタムMULTISCREEN™安定発現細胞株の利点
- ● HTSのニーズやアッセイの設計に合わせて細胞株を作成
- ● GPCR、キナーゼ、トランスポーター、イオンチャネルなど、幅広いターゲットをカバー
- ● ヒトとオルソログターゲット間で安定した発現を保証
- ● お客様の意見を尊重しつつ、測定結果に基づきクローニングを実施
- ● カスタム開発されたMULTISCREEN™安定発現細胞株は、配列、発現、汚染、安定性などを検証済み
- ● 研究期間短縮のため、迅速な納品を目指したカスタム細胞株開発プロセスを実施
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